98.アルカのネット親友の正体【前編】
(私、双葉 七我流! 14歳!
どこにでもいる普通の中学2年生!
ある日突然、ひょんな事から謎のヘルメットを入手した事により、私は未来のインターネットにアクセスできるようになっちゃったんだ。
未来の世界と言っても、こっちの世界とはちょっと違う世界の未来みたい。
パラレルワールド? って奴なのかな?
そう、全ては2007年のあの日から始まったんだ……)
☆
2007年6月。
ナガレが中学校に入ってから早くも三カ月が経とうとしていた。
中学に入ったナガレは親からパソコンを譲ってもらい、すっかりとハマっている様子だ。
特に気に入っている事は動画を閲覧する事であり、毎日のように【スマイル動画】という動画サイトに足を運んでいる。スマイル動画中毒者である。
スマイル動画とは、主に中高生に大人気の動画サイトだ。
動画の再生中にコメントを打ちこむ事により、画面上にコメントを流すことができるのが特徴的である。
かなり昔の特撮番組、日本アニメの海外吹き替え版、強引な空耳等、とにかくコンテンツがカオスなのも特徴的だ。
「あぁ、今日も疲れた~! さてとっ! 今日も帰って動画見ながらゲームしますか!」
ナガレはニコニコ笑顔で下手なスキップをしながら1人下校をした。
そう、ナガレは帰宅部であった。
だが、彼女が明るくて元気な性格という事もあり、友達も多い……。
友達が多く、それなのに趣味も充実している。そんな少女だ……。
「何あれ?」
川にドンブラコドンブラコとダンボールが流れているのが見えた。
封はしてあるようで、中に何が入っているのかナガレは気になり、近くに行く。
幸い、岸の方へ流れて来たのですぐに取れた。
「『拾ってくれてありがとうございます。これは貴方のものです。ご自由にお使いください』……?」
ダンボールの表面に油性マジックでデカデカと書かれていた。
お言葉に甘えて、ナガレは家に持ち帰る事にした。
自室に入り、封を開けるとそこにはメカメカしいヘルメットが入っていた。
「何これ……? ヘルメット? ゴツイッ! しかも何かコードが付いてるし……コンセントに繋げばいいのかな?」
ナガレはヘルメット……否、VRヘッドギアのコンセントを繋ぎ、頭に被った。
「被り心地はあんまり良くないなぁ」
ヘルメットをベタベタ触っていると、ナガレは電源ボタンを押してしまう。
そして、現実世界での彼女の意識は途切れる。
「えっ!? え? ここどこ……? へぁっ!?」
真っ白な空間。
慌てて走り回る。腕をブンブンと振り回すと、偶然にもメニュー画面が開いた。
「何これっ! 近未来的!!」
メニュー画面には、【インターネット】、【アプリ】、【オプション】、【ヘルプ】、【ログアウト】が表示されていた。
「何だこれ……! タッチすればいいのかな? タッチする機械はノーリミットとお父さんの車のカーナビくらいしかないから新鮮かも!」
『お呼びですか?』
ナガレの脳内に言葉が響いた。
「だ、誰!?」
『貴方をナビゲートさせて頂くプログラム。通称“ナビ”でございます。お呼びのようでしたので出てきました』
確かにありがたいけど呼んだつもりはなかった。
「あっ! そうか! 私はさっき偶然この言葉を唱えていたんだ! “カーナビ”。そう、ナビ!」
『設定により変更もできますがいかがですか?』
「このままでいいや! 宜しくね、ナビさん」
ナガレはいつの間にか用意されていたソファーに座り、質問する。
「ここどこなの?」
『はい。ここは“マイスペース”です。ここから現実世界と同じようにインターネットに接続したりアプリを起動したりできます。ログアウトボタンをタッチしていただければ、現実世界にお戻りになられることも可能です』
「へぇ、ログアウトとか何かゲームっぽいね」
『ゲームがお好きですか? ゲームもプレイできます。ダウンロード購入でしたら課金が必要となりますが』
「それって未成年は親の許可がいるんでしょ? これ拾ったからさ、あんまりお父さんとかに言いたくないんだよね。ソフトの実物購入ってどこでできるの?」
『検索します……。申し訳ございません。位置情報の取得に失敗しました』
「えぇ!! 分からないの!?」
『申し訳ございません。しかし、今ならアンケートに答えた人の中から抽選で無料でソフトがダウンロードできるコードが配布されるとのことです。お答えしますか?』
「あ、うん。でもそういうのって当たらないよね」
ナガレはアンケートに答えた。
選択式のアンケートだったのですぐ終わった。
そして、ナガレは結論を出した。
「これ夢だ」
元から夢じゃないのかと思っていたが、このアンケートで更にその疑惑は高まった。
「今って2007年でしょ? 何で日付の所が2020年になってるの?」
何で? という表情で机を鉛筆でツンツンと突いた。
『現在は2020年6月でございます』
「ふ~ん」
ナガレはジト目&口をへの字にし、画面を見た。
そして、やれやれといった表情をすると、折角だから夢を楽しむことにしたようで、インターネットをタッチした。
「“スマイル動画”が存在しない……だと!?」
インターネットはかなり制限されており、アクセスできるページも限られていた。
そして、限られた中で、ナガレは以下の情報を得た。
・この世界の2020年にはスマイル動画が存在しない
・VR技術が発達しており、それを利用したゲームも存在する
・歴史が微妙に違い、別な世界の未来の可能性が高い
「確か、パラレルワールドって奴? 漫画で見たような気がする」




