97.たこ焼き美味しい!!
「美味しいな」
ボス戦後、二人はボス部屋の石に座り、ドロップしたたこ焼きを食していた。
「出来立てって感じで美味しいです」
丁寧に調理された状態でドロップされており、味も現実世界の専門店で販売されているものに負けていない。
「皆さん、これ美味しいですよ。是非ネットで情報発信お願いします」
たこ焼きはまだGWOで実装されていない。
よって、GWOでたこ焼きを食べるには、現状この方法しかない。
何て手間がかかるのだろう。
二人はたこ焼きを食べ終えると、軽く挨拶をし、配信を終了した。
「さて、アルカさん。アルカさんは何のアイテムをドロップしましたか?」
「俺は“たこ焼き調理キット”、後は各種素材だな。何回かこのボスを倒せば装備を作れそうだ」
今までは階層ボスは一度倒すと再戦不可であったが、アプデにより、特定の場所で再戦が可能となった。
これにより、階層ボスのドロップアイテムにも変更が施され、装備や武器を作る為の素材アイテムもドロップするようになった。
「私も同じです。この“たこ焼き調理キット”があればわざわざこんな倒し方しなくても、GWOでたこ焼きが食べられそうですね。今ならまだ所持している人も少ないから、期間限定でたこ焼き屋でもやりましょうかね?」
これがあればいつでもたこ焼きが食べられるが、現在の所タコ型モンスターは超絶パワーアップしたアルキウスしかいないので、別なモンスターで代用するのが手軽で良さそうだ。果たしてそれはたこ焼きと呼べるかどうか微妙であるが……。
「そういえば、キメラちゃんのあの新スキル何だ? 体の一部をモンスターに変えてたけど」
「“異装変化”の事ですね? 実はですね……」
キメラはアルカに説明を始めた。
どうやら【異装変化】は、パーティ対抗トーナメントの優勝賞品として手に入れたユニークスキルのようだ。
モンスターがドロップする素材アイテムを消費し、自らの体の一部をそのモンスターに変化させるという、職業【魔法少女】からは連想しにくいスキルとなっていた。
「かっこいいな。でもキメラちゃんって特殊アタッカーな育成してるから攻撃力はさほどじゃないよな? 何であんなに強い攻撃力が出せたんだ?」
「変化した部位による攻撃は、その素材となったモンスターの攻撃力と私の攻撃力を合わせた数値になるんですよ」
「なるほどな」
話を終えると二人は立ち上がり、ボス部屋を出る。
「ここが第6層の拠点の街ですか。会長が好きそうですね」
第6層の拠点となる街は機械の街といった感じである。
現実世界の都市のような場所と言うわけではなく、あくまでファンタジー世界にありそうな機械の街であった。
街の名前は【メカタウン】。その街の名前からもメカメカしさが伝わる。
一部の建物からドス黒い煙がモクモクと浮かび上がっているのも確認できる。
「そうだな」
「でも会長はあまりレベル高くないので、今度レベル上げ手伝ってあげますかね。幸い、夏休みはまだまだありますので!」
(はは、夏休みかぁ……)
アルカは夏休みのある学生を羨ましく思った。
キメラは現実世界での生活も充実していそうな子なので、夏休みには海とかお祭りに行ったりするのだろうか? 友達とアイスでも食べたりするのだろうか?
色々考えたが、それにより自分のリアルに変化があるわけではなさそうだったので、アルカは考えるのをやめた。
(そうだ。久しぶりに極と話して気分でも紛らわすか。あいつニートだろうからきっと今も暇だろ)
アルカはそう考えると、そこでキメラと別れた。
キメラも夏休みの宿題をやらないといけないとか色々あるらしい。
(キメラちゃんは無限大VX売れば一生遊んで暮らせそう)
とか、夢の無いような事を考えているアルカであった。
☆
「クーラーの効いた涼しい部屋で、動画を見ながらガールズを育成する……何という贅沢! これぞ夏休み!!」
白Tシャツ1枚にスカートを装備した、黒髪ポニーテールの女の子がいた。
どう見ても小学5年生くらいだが、実は中学2年生である。
彼女はクーラーの効いた自室でアイスを食べ、動画を開き、そしてモンスターガールズをプレイしている。実に幸せそうな表情を浮かべている。
夏休みの宿題? してないようだ。最後の3日くらいに全てをかけるそうだ。
「ハッッハッハハハ!!」
パソコンで動画を見て大爆笑をしている。
見ている動画サイトは【スマイル動画】。主に中高生に大人気の動画サイトである。
今日は、蜘蛛のコスチュームに身に纏った男が名乗りを上げていたり、日本のアニメの海外吹き替え版だったりと、あまり各々に関連性のないものを視聴しては大爆笑している。
「友達は心配してるけど、まだまだ夏休みはこれから! 大丈夫っと!」
少女は片目をつむりながら、2008年8月と書かれた机に置かれている小型卓上カレンダーをつつき、倒す。
ピピピ。
ベッドの下から音が鳴る。
「あっ、アルカさんからチャットのお誘いだ」
少女は、ベッドの下にあるVRヘッドギアを取り出す。




