96.キメラの新しいユニークスキル
「私の新しい戦闘スタイル、公開しちゃいますよ」
弱体化しただけではない。
その意図を読み取れる表情を、キメラはしている。
「相手の頭は8つ。固まるより散って戦った方が良さそうだ」
アルカはキメラにそう言うと、キメラも同じ考えだったようで互いが別方向に移動する。
固まっていては集中砲火ですぐに倒されてしまう可能性もある。
「さぁ、行きますよ!」
キメラは飛行してでは無く、走って移動していた。
キメラが【マジカルチェンジ】により魔法少女形態へと変身した際はスキルも何も使用せずの飛行が可能であった。
しかし、現在はMPを使用してのスキル【飛翔】を使用しないと飛行ができなくなっていた。
そしてもう1つ大きな変更点がある。それはMP消費無しでスキルの発動が可能となる魔法少女形態であったが、現在はスキル発動に必要なMPの半分を消費する必要が出てきた。よって、以前のように魔法をぶっぱなしまくる戦法は難しくなってきた。
「スキル発動!! “異装変化”!!」
【異装変化】。キメラが新たに取得したユニークスキルである。
キメラはモンスターを倒した際に得られた素材系アイテムを手に握り占める。
握りしめたのは赤茶色のティラノサウルス型モンスター、ボルケーノザウルス“ポチ”からドロップしたものだ。
すると、手の中のそれは消滅し、キメラの下半身はボルケーノザウルスとなっていた。
「き、キメラちゃんの脚がボルケーノザウルスに!!」
アルカは驚いた。まぁ、アルカは全身がモンスターなのだが。
「ていっ!」
ボルケーノザウルスはかなり攻撃力が高いモンスターだ。おまけにネームドボスの素材を使用したので、かなり高攻撃力であり、尻尾による攻撃は効果大であった。
そして、ドスドスと音を立てながら、周囲をかなりのスピードで走る。
素早さもボルケーノザウルスと同等かそれ以上となっているようである。
「“光の波動”!!」
アルカが上空へ大ジャンプをすると、右手から光の球体を放つ。
更にそれがヒットする瞬間に合わせ、体を回転させながらボルケーノザウルスの尻尾を叩き付けた。
「俺も負けてられないな」
ボスモンスターは即死耐性を持っている。
アルカはそれを知っていたので、即死攻撃を無駄撃ちはしない。
アルカは腰に刺さっている細い剣、神斬剣を抜く。
「はぁっ!!」
アルキウスにダメージが通る。
今度は向こうが攻撃を仕掛けてくるようだ。
「アリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
8本の首が一斉に威嚇をし、そこから様々な属性を持つであろう光線を二人に放つ。
「あぶなっ!」
アルカは飛行を駆使し、光線をかわす。
キメラは下半身の当たり判定が大きくなってしまっている為、【異装変化】を解除する。代わりに【飛翔】を発動させ、器用に攻撃をかわす。
周囲の壁に光線が当たると、壁に小さなクレーターのような穴が発生した。かなりの威力を持つようだ。
「アルカさん、私がボスの気を引くので、背後にまわって本体に攻撃してください」
「分かった」
キメラはアルキウスから見て、中央部に立ち、相手の攻撃を待つ。
「第二ラウンドです。“ネクストチェンジ”!!」
キメラはスキル【ネクストチェンジ】を発動させる。
白銀のアーマーを身に纏った更に上の形態へと昇華させるスキルである。
前回のイベントでは、このスキルを使用し、決勝戦で1人倒した。
キメラは【ネクストチェンジ】発動後に周囲に召喚された虹色星を虹色の剣に変えると、合計10本のそれはアルキウスへと襲い掛かった。
「この剣で刺した相手が動けなくなる効果も修正され、消えるかと思いましたが、どうやら10秒間の制限追加だけの修正で済んだようですね!」
この剣、スキルではないので、使用し放題である。
おまけに一本でも刺さると身動きが取れなくなり、HPが徐々に削られていくとんでもない攻撃だったが、拘束時間が刺してから10秒間に修正されたようだ。それでも強力なのは変わりないが。
何より、キメラはこの攻撃自体が、修正によりできなくなるのを覚悟していたので、嬉しい誤算であった。
(よし、背後にまわれたぞ)
背後へと来たアルカには幸い気付いていない。
キメラの攻撃でHPも残り少なくなっている。
一気に決めよう。そう考えた。
アルカは神斬剣をアルキウスの本体の頭部へと突き刺す。
すると悲鳴をあげ、一瞬動きが止まる。
「“トルネード”!!」
スキル【トルネード】を連続で10発放つと、その小さな竜巻は重なり合い、大きな竜巻へと変化を遂げた。更にそこにスキル【爆炎】を打ち込んだ。炎の竜巻の完成である。
「ノンノンンンンンンンンンンンンンンンンンン!!」
アルキウスの身体は燃え上がり、焼きタコにされてしまう。
キメラの剣でHPがかなり削れていたのでこれがトドメの攻撃となった。
ちなみに一定以上の攻撃力又は特殊攻撃力の炎属性の攻撃で超絶強化アルキウス、通称タコキウスを倒すと、特殊モーションと共にたこ焼きになる仕様が存在する。アルカ達が初めて発見した仕様ではあったが、味は普通のたこ焼きなので、わざわざ危険な行為をしてまで拘る必要は無さそうだ。




