94.一件落着?
誤字脱字報告、大変感謝致します。
キメラはパスタにサインを求める。
アイテム【サイン用色紙】を取り出し、それをパスタに渡す。
「かっこよかったです! あ、私キメラって言います! サインください!」
「私まだこのゲーム始めたばかりの初心者だけどいいの?」
「はい! パスタさん絶対にプロ級になりますよ! あっ! 今でも十分強いですけど!」
パスタはサイン用色紙に丁寧に自らのユーザーネームを書き、色紙をキメラに返す。
「アルカさん! 羨ましいですか!?」
「いや、キメラちゃんも有名人な訳だし、そこは逆にサインを渡す立場なんじゃ……」
「はっ! そうかもしれません」
大会型のイベントで優勝したのだ。十分有名人である。
「初めまして。俺アルカって言います。宜しくお願い致します」
アルカはペコリとお辞儀をした。
「そこまでかしこまらなくても良いのよ?」
パスタのアバターの外見は少女であった。それなのについつい敬語になってしまうのは育ちの良さがアバターにも表れているせいであろうか?
「じゃあタメ口で行かせてもらうぜ」
「それがいいわ。宜しくね」
綺麗な銀髪ロングの髪型に黒色のカチューシャを装着している。
穏やかな性格ながらも力強い目は、勝負強さを映しているかのようだ。
装備に関してはTシャツとスカート。普通の初心者プレイヤーのようなレベル相応の装備であった。
右腰には月の柄が描かれた小太刀が携わっている。
テイムモンスターを突破してきた相手にはこれで対応するのだろう。
もっとも、先程はこれを使うまでも無かったようだが。
「それにしても……モンガル目当てで始めたの?」
「ええ、モンガルは大好きよ。サンドシャークが無料で貰えるのは太っ腹だと思ったわ」
「サンドシャークが好きなのか、やっぱり人気ガールズだな」
極もモンガルが大好きだ。そして極とのモンガル対決ではいつも負けている。
「悔しいなぁ」
「え?」
「あ、俺もモンガルやってるんだけどさ、ネットの友達で凄い強い人がいて勝ったことがないんだよ。それを思い出しちゃってさ」
「あら、このゲームではそんなに強そうなのに?」
「うん、まぁ……」
GWOでは極より強い自信がある。
そして、キメラが犬であれば尻尾を振っていそうな表情で言う。
「これから私達暇何ですけど、一緒に一冒険どうです?」
「お誘いありがとう。けど私これからちょっと用事があるの。ごめんなさいね」
「ショボーン……」
キメラはまさにショボーン、という表現が似合う表情でがっかりした。
「まぁ、色々用事はあるだろ。とりあえず、また会えるといいな」
「そうね。そのモンガル好きな友人とも会ってみたいわ。あっ、そうだわ! 二人ともフレンド登録しない?」
「いいね」
二人はパスタとフレンド登録を行った。
「じゃあね、お二人さん」
「わ゛だじ!! パスタさんの事忘れませんから!!!!」
アルカは軽くお辞儀を、キメラは叫びながらログアウトするパスタを見送った。
「一緒に冒険したかったなぁ……」
「そんなにパスタさんと冒険したかったのか」
「だってあんなに強いんですよ! ゲーマーとして一緒にプレイしたいですよ!」
こうして、ミナモトとの決着が一応つき。平和な休みの時間がやって来た……と思えたのだが……。
「アルカさんって久しぶりにログインしたという事は、まだ第6層には行ってないですよね」
「突然だな。というか6層何てできたのか」
「はい。モンガルコラボと共に追加されました。モンガルに興味ないプレイヤーは絶賛そっちを攻略中です。まぁ、私は忙しくてあまり時間が取れなくてまだ行けてませんが、それでも攻略情報とかネタバレとか見てませんからねっ!」
なぜかドヤ顔でアルカに笑顔を向ける。
それもその筈。キメラはこれまで攻略情報やネタバレを見まくっていた。なので今回は我慢している事をアピールしているようであった。
「という事で、一緒にボス倒して第6層に行きませんか?」
「そういえば次の層に行くには階層ボスを倒さなくちゃいけないんだったな」
キメラは前回よりレベルは上がっているみたいだが、自分はレベル上げをしていないので大丈夫だろうか? アルカは少し不安であった。
「キメラちゃんがいいんだったら喜んで行くぜ」
「おっ! ノリノリですね! という事でボスの情報を調べま~す♪」
「えっ?」
先程のドヤりは何だったのだろうか。
キメラは、GWO内のブラウザでボスの情報を検索する。
「う~ん。中々楽しませてくれそうですねぇ……!」
キメラの情報収集で今回のボスに対して、以下の事が分かった。
・ボスは硬い皮膚を持つダイオウイカ型モンスター【アルキウス】
・2プレイヤー以上での協力プレイでボスがパワーアップ
・ヴァーチャル☆ちゅぅぶで配信しながら討伐する事により、ボスがパワーアップ
・2つのパワーアップを重ね合わせると、イカがタコの姿に進化をする。結果、超絶パワーアップ
ちなみに【アルキウス】の名前のネタは、ダイオウイカの学名である【アルキテウティス・デュクス】から取ったのだと考えられる。
それなのにタコに進化する上にモンスターの名前も変わらないようで、意味不明であった。そもそもタコよりイカの方が触手が多くて手強そうに感じる。
「超絶パワーアップさせて倒しましょう! 超絶パワーアップさせて倒しますとレアアイテムもドロップしやすいみたいですし」
「って事は俺達配信するのか!?」
「チャンネル開設しなくても大丈夫みたいです! やってみましょう! 大丈夫です! 私がついています!」
アルカ、初めての配信に挑む。




