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90.ヴァーチャル配信者専門サイトオープン!!

 夏休み、それは一般的には学生達が夏に楽しみにしているイベントの1つである。

 現在は8月、学生達は後一か月程夏休みがある事になる。

 27歳社会人の究極アルティメットカケルはというと、相変わらず仕事の毎日を送っている。

 毎日同じような事の繰り返しだが、1つだけ以前と大きく変わった。

 それは何か?

 ガールズワールドオンライン……略してGWOと呼ばれるオンラインゲームをプレイし始め、その中で特別な存在となった事である。

 老若男女、全てのプレイヤーが女の子になれるという、TS願望を叶えてくれる夢のようなゲームである。ただ難点なのはアバターが強制的にランダム生成という点である。

 そんなゲームであるが、この男、何と全身が漆黒の龍のアバターを生成されてしまうのであった。この龍の性別がメスと考えれば確かにそうではあるが、明らかに異質で浮いた存在ではある。

 アバターの能力もかなり強い性能を秘めており、別に女の子になりたかった訳では無く、ネットの友達に誘われただけの【アルカ】(ゲーム内でのカケルの名前)は、龍になった事をむしろ楽しむのであった。

 結果、【パーティ対抗トーナメント】という、その名の通りパーティを組んで頂点を目指す大会形式のイベントでは見事優勝を納めた。

 そして、休日。


「あぁ……こうやってゴロゴロするのもいいなぁ……」


 ここ最近、実はGWOにあまりログインしていない。

 夏の暑さに疲れてしまったのである。こんな時こそVRゲームの出番だと思うのだが、カケルの頭は熱さにやられていた。それに部屋にはクーラーがある。電気代と引き換えに快適な休みを満喫するようだ。

 どっちにしろ、VRゲームをやるにしても体調面やオーバーヒート対策として、クーラーを付ける必要があるので、現実世界でこうしていた方が電気代はかからない。別に節約している訳では無い。

 ちなみに最近のカケルのマイブームは自分が学生時代のアニメを視聴する事であった。学生時代に放映していたアニメを見る事により、今の自分が大人だという事を短時間だが忘れるつもりだ。月額600円でアニメ見放題のサブスク契約しているので、パソコン画面を開く。


「たたたたたたたたタイヘンタイヘンタイヘンタイヘンタイ!! 変態です!! 違った、大変です!!」


 パソコンを開いた途端、キメラという人物から音声メッセージが届く。

 相当焦っているようだ。

 キメラはまだ中学生。何か子供だけでは解決できない事があるのかもしれない。カケルは集合場所……GWO内の自分の【マイホーム】エリアへと移動する。


「何か久しぶりだぜ」


 久しぶりのマイホームであったが、あまり変わりなかった。

 畑の時間経過を止めるアイテムを使用していたので、作物も枯れている様子は無い。


「アルカさん、お久しぶりです……って大変なんですよ!!」


 【マイホーム】は1人1人、プレイヤーが持つ、自分専用のエリアだ。

 自分専用とは言っても、設定したフレンドであれば、自由に入る事が出来る。

 パーティ対抗トーナメントに共に出場したメンバーは自由に出入りしていい事となっており、大会に向けての作戦会議などもここでよく行っていた。

 そして、ここで慌てている女の子は【キメラ】というプレイヤーである。

 アバターの外見はセーラー服を着ており、茶髪で右半分がショート、もう片方がセミロングという少し変わった髪型である。13歳くらいの外見だ。


「何が大変なんだ? またゲーム部廃部の危機か?」

「いや、違います。アルカさん、知っているとは思いますが、7月の下旬頃にオープンしたヴァーチャル配信者専用サイト、“ヴァーチャル☆ちゅぅぶ”というサイトはご存じかと思いますが……」


 キメラが話を続けようとするが、アルカは右手でごめんのポーズを取り、言う。


「ごめん、知らない」

「え゛ぇ゛!? えーとですね。簡単に言いますと、先程言った通り、ヴァーチャル配信者専門のサイトです。そこで活躍している方達をvtuberというのですが、知りませんよね」

「ん~? 聞いたことはあるな。ネットサーフィンしているとそこのサイトの広告がよく出て来るんだ。でも俺的には、二次元は完璧に作られたものじゃないと駄目なんだよな。こう、二次元と言うのは神聖なものだと考えているんだ。あくまで俺的には、ってだけでそれが好きな人がいても全然OKだぜ」

「うわっ、アルカさんって何歳ですか? 社会人とは聞いていましたが、もしかして50代くらいですか?」

「もっと若いよ……」


 最近は時間の経過を非常に恐怖している。年を取るからだ。

 それもあり、そこまでおっさんだと思われた事にショックを受けていた。


「ま、まぁいいです。ですが今回の件はアルカさんにも関係があるんです」

「vtuberの事なら俺に相談されても何も……って俺に関係!?」


 今までの件は基本的に他人の事であった。

 だが、今回はアルカがターゲットの1人となっているようである。


 キメラはメニュー画面を開くと動画サイトを開いた。

 GWOは、各動画サイトと連携しているので、GWO内から動画を視聴する事が可能である。

 画面にはデカデカと【みなもと】と書かれていた。

 一応、実写じゃなければヴァーチャル扱いらしく、削除されないようだ。

 タイトルは、“アルカ、お前の前世を特定する”であった。


「な、何だこれ?」

「この“源”という人物、かなりヤバイ人なんですよ。アルカさんは知らないと思いますが、エレ☆シスの一部メンバーの前世が特定されました」

「えっ!? 前世ってあの子達1回死んでるのか!?」


 アルカは驚きのあまり、顔を青ざめさせた。


「え、えーとですね。前世と言うのはですね。ヴァーチャル配信者がヴァーチャル配信者として活動する前にどんな名前でどんな活動をしていたのかを指す言葉です。要するにヴァーチャル配信者の中身を特定する事ですね」

「?? 俺、ヴァーチャル配信者だったの?」


 アルカは配信した記憶が全くない。

 どういう事であろうか?


「切り抜き動画……えーとですね、GWOの名場面集とかには出てますね。この前の大会の映像は公式でも配信していますから。でも確かに、アルカさん自身は配信していませんねぇ……これは一体……。とにかく再生してみましょう。実は私、怖くて再生できてないんですよ」


 キメラは再生ボタンを押した。


『こんにちは。私は源です。今回のターゲットは貴方です、アルカさん。この前の大会では優勝したようで随分楽しそうでしたね。ですが、そんな浮かれ気分も今日でおしまいです。優勝できて嬉しいですか? 嬉しいでしょうね。予選突破できない方の気持ちを考えた事ありますか?』


 声は加工してある犯罪者のような声であったが、声にイラつきが混ざっていた。

 もしや、GWOのプレイヤーなのかもしれない。


『今はそんな事どうでもいいです。もし、前世を知られたくなかったら、この動画にコメントしてください、アルカさん。では……』


 ここで動画は終わっていた。

 アルカは、自分のメニューから同じ動画を開いてコメントする。


「“何か気に障ったのでしたらすみません。そもそも私はヴァーチャル配信者ではありません”っと」

「真面目ですね」

「面倒毎は嫌だからな。あ、後コメントで俺プレイングを見て惚れました。リアルで会いませんか? て書き込んでいる女の子がいるな。俺のゲームプレイを見てどこが良かったのか分からないけどこれも断りの返信をしておこう。“俺よりいい男は沢山いますので、どうかお断りさせてください”っと」

「ま、真面目過ぎる……」


 そして、コメントをした後、せっかくだから久しぶりに冒険しようか? という話になり、マイホーム内にて話を弾ませていた所、もう一本新たな動画が投稿されていた。


「反応はやっ! アルカさん! アルカさんに源さんからメッセージ動画が!」

「何だって!?」


 動画のタイトルはこうだ。

 “お前の個人情報を得た”だ。

 動画を再生する。


『反応ありがとうございます。実は先程の動画、特定の地域をブロックするように設定してありました。そう、関東地区以外は動画を閲覧できないようになっています。そして投稿して間もないため、コピー動画も投稿されていません。よって、貴方は関東地区にいます。そして、女の子に協力してもらい、貴方に惚れた事を示すコメントを打ってもらいました。ですが、貴方はこう返信しました。“俺よりいい男は沢山いますので、どうかお断りさせてください”と……。つまり、男性だと言う事だ分かります。関東地区住まいの男性……このヒント、有難く頂戴しておきます。では……』


 二人はポカーンとしていた。

 一体何がしたいのだろうか? この人物は、と。


「漫画か何かに影響されているんですかね?」

「そうかもな。とりあえず、今後はスルーしていこうと思う。何か俺に恨みを持っているみたいな感じだったしな。俺のフレンドのキメラちゃんも気を付けてね? 仲間を狙う可能性もある。っていってもキメラはヴァーチャル配信者じゃないか」

「はい。ただ……」

「ただ……?」

「ミーナちゃんが最近vtuberになったみたいです。真面目で元気という事で、結構なチャンネル登録者数みたいですよ。ほら、このミーナチャンネルってのがそうです!」

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