9:情報が無いモンスターが出現。あらゆる攻撃を無効化する強力モンスター。
少女がスキル、【マジカルチェンジ】を発動させると、少女が眩い光で包まれる。
そして次の瞬間には顔立ちは同じものの、衣服、髪色が異なる少女が立っていた。
「どうですか!」
「おお! 本当に変身した! 凄い進化だ!」
茶髪だった髪色は薄いピンク色となり、服装はセーラー服を模したフリフリの魔法少女らしい服へと変化している。色も水色を基調としたカラフルなものになっていた。
「ありがとうございます! まぁ、今は変身しないと攻撃系スキルが使用出来ないのですけどね」
アルカに拍手をされ、少女は照れながら喜んだ。
そして、少女は思い付いたように言う。
「ここで会ったのも何かの縁ですし、フレンド登録しませんか? 私まだフレンド居なくて……」
「大歓迎だぜ。仲間は多い方が良いからな」
こうしてお互いフレンドを登録すると、互いの情報をお互い見る。
少女のプレイヤーネームの覧には、キメラと書かれていた。
「キメラちゃんか。宜しく!」
「そういえば名乗ってませんでしたね。宜しくお願いします。それにしても……アルカさんまだレベル1何ですか?」
「そうだけど」
アルカのレベルは未だに1である。
確かに強そうな姉妹設定のヴァーチャル配信者に勝利したが、プレイヤー相手では経験値が得られないのだ。
「その姿だとレベル1に見えませんね」
「まぁ、ドラゴンだからな。それにしてもキメラちゃんはレベル9かぁ」
「ひたすらここでレベル上げしています。第1層ボスの適性レベルは10ですけど、私は保険をかけて15くらいになったらボスに挑もうと思っています」
「へぇ……俺もここでレベル上げしようかな」
「一緒にやりますか?」
「それもいいな!」
笑いながら二人が話していると、雲が黒く染まり、辺りが薄暗くなる。
「雨でも降りそうだな……」
「そうですね」
「雨が降ったらどうなるんだ? 水系のスキルの威力が上がるとかか?」
「それもありますね。ただ……」
「ただ?」
「今の所、天候が変化するエリアっていうのは実装されてないんですよね」
雨のエリア、雪のエリアは存在する。
だが、晴れから雨などといった天候の変化はGWOにおいて、現時点では実装されていない。
「これは何かが起こりそうですね」
「何が起こるんだ!?」
次の瞬間、二人の目の前にあるモンスターが現れた。
それは6mくらいのデカいスライムであった。
「何だこいつ!?」
「わ、私のデータにもありません! もしや……!」
キメラは手を顎に当て、真剣な表情で考える。
「私がスライム倒しまくってたからそのせい……?」
「何にせよ、良かったな! 情報無しのボスと戦える何てワクワクするぜ!」
「私も自分をゲーマー……だと思いたいので、勝てるように善処します」
巨大なスライムの頭上には、超スライムと書かれていた。HPバーも表示されている。
超スライムは口から液体を発射した。それはキメラを狙ったものだったが彼女はかわし、木に命中する。すると木は命中した部分が溶けて無くなっていた。
「あれを食らったら危ないですね」
「そのようだな。まずは俺が攻撃してみる」
アルカは超スライムを殴り付ける。だが、超スライムにダメージは無かった。
アルカはすぐに超スライムから離れる。
「物理攻撃が効かないのか!? そういえば作品によってはスライムは強キャラだったな。ならこいつはどうだ! 【咆哮】!」
アルカはスキル、【咆哮】を使用したが、ダメージは無かった。
これは決してアルカが弱い訳では無い。超スライムは音系の攻撃を無効化するスキルを持っていた。
「効いてないだと!? チートモンスターか!?」
「【咆哮】は音系のスキルです。おそらく音系の攻撃を無効化しているんだと思います」
「何だよそれ! 俺にとって最悪の相手って事かよ!」
キメラは空中に浮き、片手を超スライムに向けて構える。
「今度は私がやってみます! 攻撃系スキル! 【光の波動】!」
光の球体が発射され、それは超スライムに命中する。それにより、HPをほんの少し削る事が出来た。
「……!! 効きました! こういう時こそ一気に行きます!」
キメラは両手に光をチャージし、【光の波動】を連射する。
「す、すげえ!」
あまりの連射に辺りに砂煙が舞う。
キメラは勝ちを確信し、アルカにVサインを送る。
「勝ちましたよ!」
その後、砂煙が晴れる。そこに超スライムは居なかった。
これほどのモンスターが倒されたのならば、レベルが上がってもおかしくない。
だが、そのようなアナウンスもドロップアイテムも何も無かった。
「変ですね……」
「後ろだ!!」
「へ?」
超スライムは浮遊しているキメラの後ろに居た。
良く見ると小さな羽根が生えている。
超スライムは口から青い光線を放った。
「あっ!?」
超スライムの光線を受け、キメラは地面に転がる。
ギリギリ持ちこたえてはいたが、変身は解除されてしまっている。
「油断してしまいました……」
「くそっ! 回復薬は持ってきてるか?」
回復薬。その名の通りHPを回復するアイテムである。
「持ってきてません……スライム相手でしたら要らないと思いまして……」
「どうしたら良いんだ?」
キメラは立ち上がり言う。
「【咆哮】以外に何か攻撃系のスキルはありませんか? アルカさんの能力値でしたら私より強力な威力でスキルを発動出来るはずです」
アルカは首を横に振る。
「無い。俺にあるのは【咆哮】と【第一の瞳】だけだ」
「【第一の瞳】……聞いた事がありませんね。そのスキルってどんなスキルですか?」
「ああ、このスキルはな……」