表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/325

88.風

 そのスキルは今までとは大きく違っていた。

 現在、○○の瞳……通称アルカは瞳スキルシリーズと呼ぶようにしているユニークスキルがある。現在は第四の瞳まで解放されており、どれも特徴的な効果を持っている。

 だが、今回アルカが取得した第五の瞳は、一味違っていた。


【第五の瞳-プレストフォルム-】。それが第五の瞳の名前であった。

 それを発動すると、アルカを眩い光が包み込んだ。


「自爆か!?」


 ピックは慌てて距離を取る。

 だが、実際はこの時に攻撃しておけば良かった。

 アルカの身体から発せられる光が収まった時には、別な姿をした龍がそこに居たのだ。


「くっ! 変身系のスキルか」


 ピックは予想していなかった。

 なぜならば、フォルムをチェンジする系のスキルが使えるプレイヤーは、GWOで現在7人しか確認されていないからである。


「体が軽い……!!」


 アルカの現在の姿は、元の姿よりも細くなっていた。

 翼の下にはブースターのようなものが取り付けられており、これを使用する事により、かなりの高速移動が可能になると考えられる。

 顔もシュッとしており、瞳は緑色となっている。

 属性も闇属性から風属性へと変化していた。


「ここに来て新スキルとは最高にロックな奴だぜ」


 ピックは剣を構える。

 右手にはギター型の剣、左手には地面に転がっていた金色の剣を握り、再び二刀流の構えを取る。


「ハイパー……スラッシュ!!」


 ピックは再び【ハイパースラッシュ】を放とうとする。

 しかし、アルカの使用した【トルネード】の方がスキルの出がはやかった。

 どうやら、技の出も早くなるらしい。


「ぐあっ!?」


 ピックは竜巻を受け、怯んでしまう。

 だが、小型の竜巻だ。ダメージも対してない。


(本命はこっちだ!!)


 アルカは素早く、ピックに近付くと怯んでいるピックを掴み、空中を高速で移動する。


「離せええええええええええ!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 空中で突然ピックを解放し、【トルネード】を足から放ちながら、空中でピックに蹴りを放つ。特撮ヒーローのキック攻撃のようであった。


 ピックは地面に接近しながら思う。


(まだ……まだ負けられない……!! そうだ! もう一度、リミテッドソウルを……)


 発動しようとしたのだが、まだ再使用は不可能であった。

 強すぎるスキルが故、一度効果が切れると、同じ相手には一定時間使用不可となってしまう。


(諦めて……たまるか!!)


 ピックの脳裏には、走馬灯のようにチームメンバーとの楽しくも刺激的なゲームライフが再生されていた。

 これから先もチームメンバー……それにまだ見ぬプレイヤー達と仲良く、楽しくやっていけるだろう。大会で戦った相手と今後交流していくのも楽しいかもしれない。


(けど……ここで我が負けたらモノは……)


 そうは言うものの、この体制からはどうにもできそうにもない。

 ワープ系のスキルが使えれば話は別であるが……。


 ピックが地面にめり込む。

 アルカはそれを確認すると、バックステップで距離を取る。


「楽しかったよ。ありがとうございました」


 アルカはかなりの熱い戦いを見せてくれたピックに敬意を表し、HPが0になり、消えゆくピックに対してお辞儀をした。


 そして……電光掲示板にデカデカとチーム【Curiosity】が勝利した意が表示される。


『何という凄い接戦……! そしてその接戦の末、勝利を収めたのはチーム【Curiosity】だああああああああああああ!!』


 アナウンスが鳴り響く。

 アルカのフォルムが元のフォルムへと戻り、アルカは勝利を喜ぶ。


「よしっ! よしっ! 優勝した! マジで! 俺達が……優勝だ!!」


 何かで頂点を掴む。そんな経験が無いアルカは素直に喜んだ。


「やったでござるな!」


 倒されたメンバーが周囲に召喚される。


「ああ、皆。ありがとう!!」


 極は嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ね、ミーナはニコリと笑いながら喜ぶ。

 キメラはカノンに対し、泣いて抱きついた。対してカノンは「やれやれ」とでも言いたげな表情で溜息をつく。


「負けちゃった……」


 ピックの周囲にも負けたチームメンバーが召喚された。

 リルがショボーンと落ち込む。


「でも、ここまで来れたのは凄いですよ! 今度何かの大会があったら優勝しましょう! ……ねっ? ピックさん。……ピックさん?」


 イチゴタルトは、ピックに言うが、ピックはそれに対し返事をせずに言う。


「もう一度……もう一度勝負しろ!! 3回勝負だ!! 先に2回勝った方の勝ちだ! さぁ!」

「!? ピックさん?」


 イチゴタルトは驚きの表情でピックを見る。

 リアルであれば心を読めるイチゴタルトであったが、今の彼女はただ単にピックの行動が疑問であった。


(どうしたんでしょう……。いつもの灯火さんでしたら、悔しがりながらもすぐに気持ちを切り替えて『次はもっとロックに行こうぜ!!』とでも言いそうな筈ですが……)


「あの……そんなルールありませんが……」


 運営のお姉さんが困ったトーンでそう言った。


「悔しいのは分かりますが、また次の機会に頑張りませんか? 僕もプレイングスキルをもっと磨いていくので、一緒に修行しましょう!」


 コノミが言う。モノがロボットなのを知っているのは、本人を除けばピックだけだ。無理もない。


「次はない……我達にはあるかもしれないけど……モノにはないんだよ……」

「えっ? それってどういう?」


 ピックとモノを除く、チームメンバーの皆が疑問符を浮かべた。


 その時、電光掲示板の表示が切り替わり、白衣を来たプレイヤーの姿で映し出される。


「「!!」」


 ピックとモノは、そのプレイヤーに見覚えがあった。


 そうである、モノと最初に出会った際に彼女と一緒にいたプレイヤーである。

 【ブレイドアロー社】の人間である。


『いやー! 素晴らしい戦いでしたね、ええ。あ、すみません。私、ブレイドアロー社の人間です。あっ! このゲームに不満があっても石は投げないでくださいね。私はこのゲームの開発には携わっていないものでして……。あっ被害妄想だったらすみません。実は……何と!! このゲームに驚くべきプレイヤーが1人隠れてました!! 何と……人間ではありません! ロボットです!!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ