87.最終決戦がスタートする
ピックの元へ、モノが倒されたという意のメッセージが通知され、それを見たピックは舌打ちをする。
「何てこった……我が最後の1人じゃないか」
ピックは少し焦る。
自分一人で2人を倒さなくてはならないからだ。
「モノのプレイングは相当なハズなのに、それを破ったとなると……本気でかからないとすぐに終わっちまうな。モノ……絶対にお前を助けるからな、我がソウルにかけて!」
ピックは走り、捜索する。
しかし、エリアははじまりの街全てなので、とても広い。
『残り人数が減りましたので、フィールドを縮小します』
と、アナウンスが各プレイヤーの脳内に鳴り響くと、冒険者ギルド周辺に配置される。
「へっ! という事はすぐに決着がつけられるな……! 最高にロックだぜ!」
手に汗握る熱いバトルが始まる予感がした。
そして、各プレイヤーが冒険者ギルド周辺へと配置される。
ミーナとピックに関しては配置された瞬間にご対面状態である。
「はぁ!!」
すぐに演奏を始め、ミーナにダメージが入ったのを確認すると、すぐに止める。
そして、スキルを発動させる。
「リミテッドソウル!!」
ダメージを与えた相手に制限を設けるスキル【リミテッドソウル】
選択したのは、“アイテムの使用”の制限だ。これでミーナはアイテム使用不可となった。
「あ、アイテムが使えません……!?」
「悪いな、こっちも本気なんだ」
ピックは【ハイパースラッシュ】を発動させる。
「はぁ!!!!」
【ハイパースラッシュ】とスキルキャンセルを交互に繰り返し、高ダメージを連続でミーナに叩き付ける。ミーナは粒子となり消滅する。
☆
「いきなりワープとかビビるな」
アルカにメッセージが通知される。ミーナが倒された件についてだ。
「ミーナが負けた……!? って事は、最後は1対1か! 面白い! 責任重大だけどな」
そう考えていると、走って来るプレイヤーが一人。
間違いない。相手チームのボスである、ピックだ。
「出し惜しみは無しだぜぃ!」
ピックはスキル、【リミテッドソウル】を発動させ為に演奏する。
「うおっ! ダメージが入る……けど少量だな。これなら……!!」
アルカはピックをぶん殴ろうと、接近しようとするが……
「か、体が動かない……!?」
アルカに“移動の制限”を設けた。
これで動くことはできない。
「ハイパースラッシュ!!」
またしても【ハイパースラッシュ】の連続攻撃で仕留めるつもりのようだ。
「あのスキルは確か……」
キメラから汎用強スキルに関しては聞いていた。
その中にハイパースラッシュの名前もあった。
シンプルながらに強い、剣士の汎用強スキルである。
「【第二の瞳】!!」
アルカはスキルを発動させる。
自らのHPを半分削るので、あまり使用しないスキルなのだが、こちらも出し惜しみはなしといった所で使用した。
【第二の瞳】により、【ハイパースラッシュ】の効果が無効化される。
ピックの剣から輝きが失われる。
「スキル無効化だとぉ!?」
これで連鎖は途切れた。
【第一の瞳】で相手を装備し、【装備破壊】で即死させる事が可能だ。
「終わりだ!」
【第一の瞳】を発動させる。腹部から触手が伸び、ピックを捕らえる。
「コノミ!! ありがとうな!!」
コノミからアルカの対策は聞いていたので、このスキルの弱点も把握済みである。ピックは空いている手で触手を切断する。
結果、脱出に成功する。
「危機一髪だったぜ」
ピックはアルカから大きく距離を取る。そして、設ける制限を変更。“移動の制限”を解除し、“スキル使用の制限”を設けた。
(スキルが発動できなくなった……が、動けるようになったな。肉弾戦に持ち込み、一気に勝負を決めるか)
アルカは、ピックに接近し、ぶん殴ろうとした。
が、ピックの剣が光るのを見ると、すぐに距離を取る。
【ハイパースラッシュ】をお見舞いしようとしたようだ。
「へっ! 上手くはやられてくれないか」
ピックはスタイリッシュにメニュー画面を開くと、剣をもう一本装備する。コノミとお揃いの金色の剣だ。
「ダブルハイパースラッシュ!!」
ギター型の剣が光り、それがアルカに振り下ろされる。ヒットはしなかったが、今度は金色の剣が光り、アルカの翼をかすめた。
(少しかすっただけでこの威力か!)
半分になっていたHPが更に半分になる。
「これもコノミから教わった……!」
コノミは指導者としても優秀なようで、二刀流の戦い方もレクチャーしていたようだ。
(そして……次に我が放つのは二刀流専用のスキルだ!)
「マーキュリーストライク!!」
二刀流専用レアスキル【マーキュリーストライク】。
剣を二つ重ね、それに体の何倍もある水色のオーラが纏わりつく。
「はああああああああああ!!」
「くっ!!」
かわす事には成功したが、当たった冒険者ギルドが半壊している。とんでもないダメージである。
そして、【リミテッドソウル】の時間が切れる。アルカは再度スキルの使用が可能となった。
「……!! よしっ! スキルが使える!! 【第四の瞳-ダークネスブレイクバースト】!!」
アルカは接近し、即死能力を持ったスキルを発動させる。
漆黒の球体がピックに放たれる。
そして、それがヒットしピックのHPは0となる。
「よしっ!」
アルカが拳をギュッと握りしめ、勝利を喜ぼうとすると、粒子となったピックの体が再生し、HPが全回復した。
「何っ!?」
「危なかったぜぃ!」
ピックはスキル【再生】を発動させていた。といってもオートで発動するスキルである。その効果は、自らのHPが0となった時、再び体力全開で復活するというものである。しかし、一度使用すると168時間は発動不可となる。このスキルを取得する条件はかなり厳しく、ピックも偶然手に入れただけだ。
(ありがとうな、沙耶。お前に間違って殺されまくった日々を我は忘れない)
スキルを取得したのが、沙耶……つまりはイチゴタルトに倒された時である。
なので、イチゴタルトに他のパーティメンバーを倒してもらっていた時期もあったのだが、何回倒そうともピック以外、【再生】は取得できなかった。
それもその筈、このスキルは“間違ってパーティメンバーに一定回数&一定数値以上のダメージを与えられる事”であった。
偶然にも間違って攻撃されまくり、間違って倒されまくったのがピックなのであった。
結果、ピックは取得方法が分からなかったので、ユニーク表記を付け忘れたユニークスキルという考えに落ち着いた。
「まさか復活して来る何てな」
アルカは、ピックが復活するまでの間、上級回復薬を使用していた。
回復系アイテムは、使用している間動けなくなるので、丁度良かった。
「復活何て事をしてくるとは……他にも何のスキルを隠し持っているか分からないな」
アルカは、翼を大きく広げ、空へと向かう。
「上空から攻撃してやる!」
アルカは【爆炎】を使用しようとしたが。
「ハイパースラッシュ……投擲バージョン!!」
【ハイパースラッシュ】を発動させた金色の剣をアルカに向けてぶん投げる。
剣は回転せずに、まるで弓矢で放ったかのように、真っ直ぐと飛んでいく。
「モノのレクチャーも中々だったぜぃ!」
そしてそれはアルカに突き刺さる。
「ぐあっ!」
アルカはそのまま地面へと叩き付けられる。
「くそっ……って、ん?」
アルカのスキル一覧にいつの間にか新スキルが増えていた。
戦闘前には無かったので、いつ取得したか分からないが、何か条件を満たしたようだ。
「終わりだ、最高にロックな戦いを……サンキュー!!」
「まだだ!!」
アルカは新スキルを発動させる。




