84.キレる!!
「くっ……中に誰か乗っているのか?」
百舌鳥17が変形した鳥型ロボット、カワセミに連れ去られたモノ。
先程クチバシでの拘束を振り解き、パラシュートで地面に降りたのだ。
「撃ち落としてやるよ」
モノの職業は【ガンナー】である。武器は弓を使用しているが、どこかメカメカしく、ゴツイ銀色の弓を使用している。
「貰った」
モノはロボットなので、矢を狙った所にヒットさせるのは訳ない。
モノの弓矢から矢が放たれる。
カワセミが逃げようとも、まるで矢が意思を持っているかのように、的確に命中する。
「どうした? もう終わりか?」
カワセミから煙が出現。どうやら壊れてしまったようだ。素早さは高いものの、耐久はそうでもないらしい。
カワセミは地面へと不時着する。
「……まだ生きているようだな」
中に乗っているカノンを倒そうと、ゆっくりと警戒しながら落ちたカワセミに近付いていく。
「まった! 降参だよ、降参」
カノンは「やれやれ」といった顔でカワセミから出て来る。
「そうか。随分といさぎが良いな……っておい! 降参するんだろ? 何でこっちに歩いて来るんだよ……おい!」
「はは! ナイス突っ込み。でも残念ながら私のステータスは器用以外が終わっているんだ。何も出来る事はないよ♪」
両手をあげながら、モノに近付く。何か策があるのだろうか?
「そっちこそ矢を放たないのか? 優しいんだね。ちょっとお話しようか」
「な、何でだよ……」
「いいからいいから」
全装備を解除&全アイテムを廃棄する所をモノに見せ、近くの階段に座る。
「いやぁ、君も人がいいね」
「くだらん。で、何を企んでいる?」
モノは隣に座るが、鋭く睨み付ける。
「いや、何も? それより驚いたのはこうやって話し相手になってくれたことだね。決勝戦だというのに……いいの? さっさとその弓で私を倒すなりしないの?」
「3秒あればできる事だ。最後の言葉くらい聞いてやろうと思ってな」
「人恋しいのかい?」
モノは一瞬ビクッとした。
図星であった。この試合に負ければ記憶データが消されてしまうと思っているからである。
「ふふ、君も可愛い所あるねぇ。そんな鋭い目つきしてるのに」
「くだらん。くだらんくだらん! くだらないんだよ! どうでもいいだろ! お前ら何でそんなに強いんだよ!! さっさと負ければいいのに……何で勝とうとしてくるんだよ!!」
「どうしたの? 大丈夫?」
急にキレたモノの顔をニヤニヤしながら覗き込んだ。
「おちょくる気か人間」
「人間って君もでしょ? 中二病かな?」
カノンはすました顔で、座り直した。
「どうだろうな。それよりもさっきの機械はお前が作ったのか?」
「まぁね! いいでしょ? 私はロボットが好きでね。もしかして君も興味が?」
「別に興味ない。ただ、お前が何でそんなに機械が好きなのかは興味がある」
「かっこいいからかな!」
カノンはドヤ顔で答えた。目がキラキラしている。
「そうか。じゃあもし、人間そっくりなロボットが現実に居たらどう思う?」
「良いね。毎日が楽しそうだ。 ……あっそういう事ね」
カノンはモノの目の前に座り、優しく微笑む。
「君、ロボットだね?」
「!!??」
いきなり核心をつくコメントをされたものなので、ついビクッとなってしまう。
だが、実際カノンはモノをロボットだとは思っていない。
急に人間そっくりなロボットが居たらどう思う? とかきいてきたので、「自分はロボット」と思い込んでいる中二病だと思い、そう尋ねたのだ。
「やっぱりかぁ……私、さっき言った通り、ロボット大好き何だよね。だからもし、他の人が何と言おうとも、人間とロボットは共存できると思う。だってロボットは人間が作ったんだから。きっと……きっと仲良くなれる。だから安心して!」
もし、この試合で無事勝利できたら、こいつと仲良くするのもありかもしれない。
そう、モノは考えた。
カノンは、モノの手を取り、そこに自分の手を重ねる。
「私はもうこの試合では何もできない身だ。お願い聞いてくれるかな? とても簡単だよ?」
「……何だ。言ってみろ」
この試合に負ける可能性も十分ある。
だったら最後に気に入った人間の簡単な願いであれば、聞いてあげようではないかと思ったのだが……。
「やっぱり優しいなぁ……。じゃあさ、この試合、降参してくれないかな?」
次の瞬間、カノンの心臓部には矢が刺さっていた。
手に持っていた矢で直接ぶっ刺したのだ。
「ふざけるなよ人間!! ぶっこぉすぞ!!!!」
あまりの怒りに「ぶっ殺すぞ」と言おうとしたが、噛んでしまう。
ちなみに既にHPは0となっており、ぶっ殺すのには成功している。
「さ、作戦失敗!! ……やっぱり鍛冶師は不利だね。うんうん」
カワセミを破壊され、打つ手がないと悟ったカノンは、話術でどうにかして降参させようと企んでいたのだが、見事怒りを買い、それは失敗に終わってしまった。
「人の気持ちを弄んで……いつかひどい目にあうぞ!!」
「あっ! やっぱり人間なんだね」
「どうだろうな!? いいか、後で覚えてろよ? 私はこの試合に絶対勝って! いつかもう一度弓矢で貫いてやる!! 文句も沢山言ってやる!! この野郎!!」
「うんうん。元気で宜しい! じゃ、後は頼んだよ~。チームの皆~」




