82.リミテッドソウル
コノミはプレイングスキルでトップまで登って来た事もあり、勇者と言う異名を持っている。
そんなコノミとタメをはれるようになるスキルを隠し持っているというのだ。
キメラは身構える。
ピックは剣を納め、ギターに戻すと演奏を始める。
(微量だけどあの音を聴いているとダメージが……。 でも、隙だらけだ。とりあえず、今の内に……!!)
隙が生まれたと感じ、スキルを発動させようとしたのだが、それは失敗に終わる。
「我の演奏どうだった?」
そう、この演奏こそが、スキル発動への入り口だったのだ。
ピックのユニークスキル【リミテッドソウル】。
その効果は、ダメージを与えた相手に“制限”を設けるスキルである。
制限は複数の中からスキル使用者が自由に選べるのだが、今回はキメラの“スキルの発動”を制限した。これにより、スキルが発動できなくなっていたのだ。
「スキルが発動できない……!? だったら!」
先程のように、虹色の剣が複数ピックへ飛んでいく。
ピックは剣を抜き、虹色の剣を弾きながらキメラに突っ込む。
「嘘!?」
「驚いたか? このプレイングはコノミから教わったんだ。一気にいくぜ!」
ピックはキメラへの接近に成功すると、スキル【ハイパースラッシュ】を発動させる。
剣に黄色いオーラが纏い、それがキメラの身体を斬りつけた。
「きゃっ!」
「更に!!」
【ハイパースラッシュ】の光か完全に消える前に、スキルをキャンセルさせ、連続でもう一度それを発動させる。
(スキルキャンセル!?)
キメラが驚くのと、二発目がヒットするのは同時であった。
キメラの身体には十字型の軌跡が残り、そのまま爆破。HPを0へと導いた。
(そ、そんな……私がチームを勝利に導くと決めたのに……)
ゲーム部を守る為……というのもあるのだが、今のキメラはそれ以上にチームを優勝に導けなかったのが悔しかった。
そして何より、最後の決着の時に自分がそこに居られない事が非常に残念であった。
(大好きなゲームで優勝したかったなぁ)
例えキメラがこの先の人生でどれ程成功しようが、おそらく今この時の悔しさは忘れないだろう。
だが、だからこそ、そう思わせてくれた相手プレイヤーに敬意を表そうと考えた。
「対戦……ありがとうございました!!」
最後にそう言い残すと、キメラの身体は粒子となり、消滅した。
「最高にロックだったよ」
消えゆくキメラに対し、ピックはそう言い放った。
☆
「るん♪ るん♪」
「緊張感が無いな」
「? モノは楽しくないの? だって決勝戦だよ!? リル、すっごいワクワクしてる!」
「くだらん。これだからガキは」
宇宙人であるリルとロボットであるモノがブラブラ歩いている。
モノはいつ敵襲があってもいいように辺りをキョロキョロしながら歩いていたが、リルは完全に遊びモードである。
(こっちは命がかかってんだぞ)
モノはこんな態度だが、リルの事自体は嫌いでは無い。
だが、今回の戦いは自らの命がかかっているのだ。
1人だけデスゲーム状態。負けるわけにはいかないのだ。
(おまけに現時点で2人死んでる。それに対し、こっちは1人しか殺せてない。そして、コノミが死んでるのはかなり痛い……って、ん?)
何かがモノに向かって飛んで来る。
鳥か? いや、あれは機械だ。
そう感じたモノだったが遅かった。
鳥型ロボットのクチバシにくわえられ、そのまま連れ去られる。
「モノ!! どこ行っちゃうの!?」
「知らん!! おい、離せえええええええええええええ!!」
モノの叫びは空しく響いた。
「モノ……」
リルは1人寂しくなった。
こんな時、敵が来たらどうしよう。
「おやおや、可愛いでござるな?」
「ぎゃあああ!! 敵だぁ!!」
刀を持った少女、極がリルの目の前に現れた。
「ど、どうしたでござる!?」
「びっくりした!」
「そうでござるか!」
「うん!」
「なるほど!」
「うん!」
二人の幼い容姿の少女同士が可愛らしいやり取りを繰り広げる。
「でも勝負は勝負! ここは勝たせてもらうでござる!!」
極は腰の刀、冥王刀を抜く。
「かっこいい!! 何ていう職業!?」
「【カードゲーマー】でござる」
「何それー!? 剣士じゃないの?」
「違うでござる」
「ユニークなのかな!? リルは【テイマー】だよ」
敵同士とは思えない程の、互いの手の内のバラし合いが繰り広げられた。
リルはドヤ顔をすると、手を目の前に出す。
「出ておいで! リルのもふもふちゃん!!」
目の前に水色の魔法陣が出現し、そこからリルのテイムモンスターが現れる。
そのモンスターは、【デスラビット】。
2m以上の巨体を持ち、目を赤く光らせ、灰色の体毛が全身を包んでいる。
「もふもふだよ!」
「これはなかなかでござるなぁ!」
「えへへぇ!」
デスラビットは早速極に襲い掛かる。巨体の割にはかなりすばしっこい。鋭い足の爪で極を倒そうとしている。
(ふっふっふ! こういう時は、モンスターを無理に倒さずテイマーを狙うでござるよ)
職業【テイマー】の弱点として挙げられるのは、テイマー本人が倒されてしまえばテイムモンスターも消滅してしまう点であった。




