8:ユニークスキルを持つ気弱そうな少女
「何だったんだ?」
アルカの目の前には地面にめり込んでいるNPCが居た。スライム以下の強さのNPCなので、アルカには当然敵わない。
ちなみに基本街での戦闘は行えない。だが、このようなイベントの場合は特例だ。
アルカは気を取り直し、ギルドの中へ入る。
中はまるで酒場……昔ながらの冒険者ギルドである。
アルカは初VRゲームなので気付かないが、この冒険者ギルドのグラフィックは作成者により著作権フリーとなっており、様々なVRゲームで使われている。
「さて、依頼を受けるか」
アルカは掲示板へ行き、依頼を選ぶ。初心者向けの薬草採取やスライムの討伐など様々な依頼がある。
スライムの討伐はスライムを10匹討伐する事で、300G手に入る上に何回でも受けられるので、初心者はまずこれを受け、Gと経験値を稼ぐのが良いと言われている。
「とりあえずスライム倒して金稼ぎでもするか~」
アルカはスライムを10匹討伐する依頼を受けた。
スライムは、はじまりの街近くの森で多く出現するので、10匹などアルカにとっては容易い事だ。
「【咆哮】!」
【咆哮】スキルでスライムを蹴散らしていくアルカ。今はこのスキルと【第一の瞳】しか使用出来ないので仕方が無い。MPを使用しない物理攻撃も出来たが、流石にそれだけでは飽きてしまう。
「ていっ!」
「ん?」
スライムを蹴散らしている背後でとある少女の声が聴こえた。どうやら彼女もスライムを討伐しているようだ。
「よっ! 君も初心者?」
「へ?」
茶髪で右半分がショート、もう片方がセミロングの13歳くらいの少女に話しかけた。
アルカが初心者だと思った理由は動きがぎこちないからである。
「ドドドド、ドラゴン!?」
「まぁな。俺の名前はアルカ。理由は不明だけどこんな姿のアバターになっちまったんだ」
少女は一歩後ろへ下がる。
「え、えーと……上手く言えませんが凄いですね」
「照れるな~。でもビックリした割には普通に会話出来てるな」
「あ、はい。最初はビックリしましたが私ゲームが好きなものでモンスターも見慣れてるんです。このゲームもお小遣いを貯めて買ったんです」
「ゲーム好きか……」
お小遣い発言からしてアバターの外見と年齢が近い可能性が高い。
アルカも学生の頃はゲーム三昧だったので少し懐かしく感じていた。
「他のVRゲームはやってないの?」
「ちょっと理由がありまして……」
左右の人差し指をツンツンとし、目をそらす。
訳ありのようだ。アルカは多くは尋ねないでおいた。
「まっ! 頑張れよ。それにしても珍しいな、その格好」
このゲームには珍しく、セーラー服の装備をしていた。
「はい。初期装備何です。それに私ちょっと珍しいスキルを持っていまして……」
「珍しいスキル?」
「こちらです」
少女はメニューからスキル一覧を開き、アルカに見せる。
「【マジカルチェンジ】……?」
「はい! ネットで事前にこのゲームを調査していた私ですが、このスキルは見た事がありません。おそらくユニークスキルかと……!」
自信無さげな少女であったが、自身のスキルを紹介する際は、少し得意げであった。
ちなみにユニークスキルは、このゲームに1つしか無いスキル、または希少なスキルを指す。
「効果は?」
「えーと一言で表しますと、魔法少女に変身します」
「そんなスキルまであるのか……」
魔法少女ものは学生が主人公の作品が多い。それもあり初期装備がセーラー服なのだろう。
「見たいですか?」
「え?」
見たいか見たく無いかであれば見たい。だが、先程まで変身して戦って無かった所を見ると、MPを節約しているのだろうと考えられる。
「MPとか大丈夫なの?」
「MP回復するアイテムも少し持っているので大丈夫です」
「じゃあ見せて貰おうかな~」
ここまで来て遠慮するのも逆に失礼だと感じたアルカは【マジカルチェンジ】を見せてもらう事にした。
少女はアルカから離れると、深呼吸をする。
「じゃあ、見ててください。私の変身!」
普段から自信無さげな雰囲気が漂う彼女であったが、この時のドヤ顔は非常に輝いていた。