79.隠されていた優勝賞品
いよいよ決勝戦だ。
決勝戦前という事もあり、リラックス&最終調整という意を込め、ゲーム内時間で1時間の休憩が与えられる。
アルカ達のチーム【Curiosity】の面々は、アルカのマイホームの教室エリアへと集合していた。
「皆さん! 本当にありがとうございます!」
キメラが嬉しそうに頭を下げる。
「おいおい、まだ優勝はしてないぞ?」
そうだ。まだ優勝はしていない。
「あっ、そうでした。浮かれてしまいました」
「すまないね、キメラ君は最後の最後で爪が甘くてね。私からも謝罪しておくよ」
いじわるそうな顔でキメラを見た後にカノンは頭を下げた。
(前から思ってたけど、この二人、本当に仲が良いな)
この二人はリアルで先輩後輩の関係だ。
それもあり、ここまで仲が良いのだ。
「皆の者、優勝したらどうするでござるか?」
「どうって?」
「いやぁ、これで優勝しちゃったらこのゲームで拙者達最強って事でござろう?」
「えへん!」を無い胸を張る極に対し、キメラがドヤ顔で、言う。
「極ちゃん、オンラインゲームに終わりは無いんだよ? それに優勝したからって最強って訳じゃない! まだまだ強敵は一杯居ますよ! それに、新しいイベントもきっと沢山ありますし、素敵な出会いも沢山ありますよ、きっと!」
目をキラキラさせている。
だが、キメラの言う事は間違っていないだろう。
例えこの大会で優勝したとしても、条件が違ったりした場合、負ける可能性は十分にある。
これから先もアップデート、イベント追加などと、プレイヤーを楽しませてくれる事だろう。
「そうでござるかぁ……だったら安心でござるな」
「安心?」
「そうでござる! これから先も拙者達の冒険は続くという事でござろう?」
「確かに、そうだな」
アルカが頷く。
そうである。サービスが終了するまで彼女達の冒険に終わりはないのだ。
ピコン。
話をしていると、メニュー画面に伏せられていた優勝賞品の情報が解禁された。
そう、このチームの人達は誰も話題にあげていなかったが、この大会、優勝賞品があるのだ。
1つはゲーム内でのみ使える大金。2つ目はユニークスキル。これらは優勝したチームメンバー1人1人に配布される。
だが、伏せられていた優勝賞品はそうではない。
最後の景品は1つしかない代物なのであった。
その景品とは。
「幻のゲーム機……【無限大VX】!!」
キメラが再び目を輝かせる。
他のメンバーは首をかしげる。
「無限大VXって何だ?」
「し、知らないんですか!? 存在するかも怪しかった幻のゲーム機ですよ!! いいなぁ!! 触りたい!!」
無限大VX。キメラの言う通り幻のゲーム機である。
一部のゲーマーには都市伝説のような扱いを受けていたゲーム機である。
まさに幻のゲーム機。
その性能は噂通りであればかなりの高スペックである。
何と、この世に存在するゲームソフトを全て読み込ませる事が出来、プレイ出来るのだ。
正確には、ゲームソフトを無限大VX内のボックスに入れると、少しの時間で内部のデータが解析され、それをプレイする為のシステムが構築されるのだ。
「皆、優勝したら欲しい人居る?」
「私欲しいです!!」
キメラだけがジャンプしながら手を挙げた。
他のメンバーは手を挙げない。
「あ、あれっ? 皆さんどうしたんですか?」
てっきり奪い合いになるかとばかり思っていたキメラはキョトンとしてしまった。
「いやぁ、欲しいか欲しく無いかであれば欲しいでござるがそこまでの熱意は……」
と、極。
「私他のゲーム普段やらないし、キメラちゃんにあげてもいいかなって」
と、ミーナ。
「そうだな。手作り弁当一週間で手を打とう」
と、カノン。
アルカは、「フッ」と笑うと。
「よし、それじゃあ皆……勝とうぜ!」
皆が「おー!!」と言う。キメラだけワンテンポ遅れた。
次回、いよいよ決勝戦です。




