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76.チーム【To_Soul】結成の秘密【前編】

決勝戦の相手チームは一癖ありそうです。

 これは4月中旬くらいの出来事である。


「よし! 今回の新曲も中々良く出来たな!」


 夜遅く、部屋でエレキギターを用いて演奏している少女が居る。

彼女の名前は、たましい 灯火とうか

 チームTSのリーダーである、ピックのリアルの姿だ。

 彼女は現在高校1年生、趣味は演奏であり、作詞作曲も自分で行っている。


「よし、早速新曲の演奏動画を動画サイトにアップロードするか」


 灯火は演奏動画をよく動画サイトにアップロードしている。

 理由は多くの人に自らの魂の叫びを聴いて欲しいからである。

 だが、それとは他に聴かせたい人物が居る。

 灯火はその人物にビデオ通話アプリで連絡をする。

 スムーズに話が進むように演奏動画のURLを貼っておくのも忘れない。


「出るかな?」


 現在の時刻は、21時。

 通話相手は早寝するタイプなので、寝ている可能性もあった。


「灯火さん、こんばんは!」

「ばんは! 夜遅くすまないな! 新曲が出来たからもう我慢出来なくなってな」

「新曲ですか! 楽しみです♪ あっ、このURLですね。聴いてみます」

「今回のテーマはずばり……ゲームだ!」

「ゲームですか?」

「そうだ、ゲームだ! 好きだろ? 私は良く分からないけど確か何とかオンラインって良くやってるんだろ? お前が喜ぶと思ってな!」


 何とからオンラインと言うのは、【GWO】の事である。

 通話相手の彼女は、GWO内では【イチゴタルト】というプレイヤーである。

 正直言って、強いプレイヤーでは無い。それもその筈、彼女は別に強くなることを目的としていない。

 彼女は、俗に言う超能力者エスパーという奴であり、無意識化に他人の心の声が聴こえてしまう深い悩みを抱えている。

 しかし、VRゲーム内であれば、それも無い。

 数あるVRゲームの中からGWOを選んだ理由としては、全プレイヤーが女の子の姿という事もあり、怖そうな外見のプレイヤーが少なそうという点であった。

 ログインしてやる事は、その辺をブラブラしたり、買い物をしたりである。

 要するにゲームをプレイしたくてログインしている訳ではないのだ。

 それでもトウカが自分の影響でゲームをテーマとした曲を作ってくれた事が嬉しかった。


「ありがとうございます。聴いてみますね」

「悪いな! 後サプライズだ! 我のロックレベルがもっと上がるかもしれない……」

「?」

「じゃん!」


 灯火は画面にヘッドギア入りの箱を嬉しそうに、そして自慢げに両手で持ち、映し出す。


「買ったんですね!」

「懸賞で当たってな! これで離れていてもいつでも会える! ソウルは繋がっていてもやはり学校で会えないとなると寂しいからな」


 イチゴタルトのリアル、天羽あもう 沙耶さや。現在は中学3年生をやっている女子中学生である。

 灯火も高校に上がる前は沙耶と同じ中学に居た。いわゆる後輩と言う奴だ。

 中学の頃は昼休みや放課後等に会う事が出来たが、学校が変わってしまえば、それも難しくなる。

 何とかならないものかと、考えた結果がVRゲームで遊ぶ事であった。

 まさか懸賞で当たってくれるとは思っていなかったのだが。


「あっ!」

「どうしたのだ?」

「早速動画にコメントが来ています。流石ですね」

「もうか!?」


 灯火は動画サイトで有名な存在……では無い。

 コメントが1つの動画につき、10個付けば良い程である。

 そんな灯火の動画に早速コメントがあった。

 灯火は嬉しくなり、ニヤケながらコメントを確認する。


ケンヤ『とてもいいおんがくですあいたいです』


 沙耶が顔をハッとさせる。


「す、すみません。良く確認せずコメントがあるって伝えてしまいました……」


 出会い目的のコメントだとは知らなかった。

 ただ単に自分の事のように嬉しくなり、それを報告した沙耶に悪気は無かった。

 勿論、灯火もそれは分かっている。


「いや、いいんだ。沙耶は悪くない! それにしてもロックなコメントだな!」


 出会い目的でSNS等をやっている者も中にはいるだろう。

 だが、それにしては直球過ぎだ。それを灯火はロックだと感じたらしい。


「何で平仮名なんですかね? 小学生とかですかね?」


 沙耶が首を傾げる。


「分からない……が、削除する! それが我のソウル!!」


 コメント欄が荒れるのは良くない。本当はこんな事したくないのだ。

 灯火が削除しようとすると、同じ人物から更にコメントが来る。


『いまからおじゃましたいですいいかな』


「灯火さん、私ちょっと怖いんですけど……」


 怖がっている沙耶だが、灯火はというと……。


「ハッハッハ! ロック過ぎだ!!」


 灯火はダイレクトメッセージをコメント主に打ち込む。


『貴方はどこのどなたですか? 私の知り合いでしょうか?』


 それに対し、すぐに返信が来た。


ケンヤ『わたしはすいせいからきたすいせいじんです』


 灯火は吹き出してしまう。


「宇宙人みたいだ!」

「そういう設定なんですかね? 思いっきりケンヤって書いてありますけど」


 画面越しの沙耶に伝えると、沙耶は愛想笑いを向けてきた。


 バンバンバンバン


 外から窓を何者かが叩いている。


 バンバンバンバン


 灯火の部屋は2階にある。おまけに足場も少ない。蜘蛛人間でなければ、窓を叩くというのは難しい行為である。


「な、何の音ですか……?」

「お客さんかな?」


 普段テンションが高い灯火も流石に少し怖いのか、テンション低めで言った。


 ピロン。


 ダイレクトメッセージが来た。

 灯火は画面を見ると、こう書かれていた。


ケンヤ『まどをあけてください』


「ひっ」


 こんな短時間で特定してここまで来たというのか?

 灯火の目がうっすらと涙でにじんだ。


「開けてくださーい!」


 女の子の声であった。

 灯火は「え?」とでも言いたげな顔を窓に向ける。


「え、開けるんですか?」

「ああ! 本当に我のファンだったとは……ロックな奴だよ。全く」


 沙耶は心配したが、灯火は相手が女の子だと分かると窓を開けた。

 こういうロックな子は嫌いじゃないのだ。


「えへへー来ちゃったー!」

「ソオオオオオオオオオオオオオオオオオオオル!! 何て事だ!!」


 あまりの事態に灯火が叫ぶ。画面越しの沙耶は顔を赤くする。


「何で全裸何ですか!?」


 何と、この少女、服を着ていないのだ。


「地球に降って来た時に燃えちゃった!」

「おいおい、それなら何で体は無事何だ?」

「耐えられるから!」

「そいつはロックだ」


 灯火は冗談だと思い、とりあえず服を持ってきた。


「いいぞ、好きなの選んで」


 灯火が昔着ていた服だ。

 自称宇宙人の少女は小学4年生くらいの外見だったので、最近着ている服ではブカブカとなってしまうからであった。


「ありがとう!」

「いいってことよ、それにしても……」


 灯火は少女をまじまじと観察する。

 水色のロングヘアの髪の毛に、パッチリとした目。

 灯火は1つの結論を出した。


「可愛いな」

「褒められた!」

「ああ。でも今日はもう遅いから家に帰った方がいいぞ。今度の休日にでも生演奏聴かせてやるからよ!」

「地球に家無い!」


 灯火は困った子だと思い、母親に相談する事にした。


「ママ、何か突然窓からこの子が入って来たんだけど、一緒に警察行くの手伝ってくれない?」

「女の子?」


 母親はキョトンとする。まるで見えていないかのようだ。


「居るでしょ? ここに!! ほら!!」


 指を指してアピールするが、「?」といった感じである。

 仕方が無いので、部屋に戻る。


「何で見えないんだ?」

「私が選んだ人間以外は見えないようになってるから!」

「じゃあ何で沙耶には見えてるんだ?」


 灯火はもしかして……と思い、スマホのカメラで少女を撮影し、再び1階に降り、母親に見せると姿を認識できた。面倒だったので、コスプレイヤーの写真を自室に合成したと伝えた。


「カメラ越しだと見えるのか……ってそうだ! ロックなお前! 名乗れ!! 自己紹介だ!!」


 灯火はビシッと右人差し指で少女を指差す。

 少女はニコリと笑うと立ち上がり、自己紹介をする。


「私は水星から来た、リルだよ」

「何で日本語ペラペラ何だ?」

「言葉勉強したから! 水星で!」


 どうやら水星では他の惑星を監視出来る程技術が発達している事が判明した。


「で、何で地球に来たの?」

「地球は、剣と魔法の世界でモンスターって言うのが沢山居るって言うからそれが見たかった!」


 剣と魔法の世界……そんなのゲームの中だけだ。


「フッ」


 水星の調査力というのはたかが知れているな、そう思った灯火であった。


「確かにあるが、それはゲーム……まぁ機械だ! そいつで遊べば見る事が出来るぜぃ!!」

「おお! やる! ゲームやる!!」


 画面の中で沙耶があわあわしている。


「あ、あのぅ、どこから突っ込んでいいか脳が混乱してるんですが……」

「すまない! だが、この状況……かなりロックだ……!!」


 灯火は興奮が抑えられず、歯を見せながらニヤリとした。


「決めたぜぃ! 3人で……えーと、何とかオンラインの頂点を目指すぞ!!」

「へ?」

「超能力者沙耶、宇宙人リル……そして!! 最高にロックなソウルを持つ我がいれば!! 頂点に行けるんじゃないのか!?」

「で、でもヘッドギアが無いですよ!?」

「もう1つあるんだよ!! 懸賞で当たったのがな!!」


 灯火は2つ目のヘッドギアを見せた。

 そう、懸賞に応募しまくっていたかいもあり、2つ当たったのだ。

 正直、誰かに譲るか売るか迷っていた灯火であった。


「運が良いですね!?」

「まぁな!! それと……」


 灯火はリルの持って居るスマホを見る。

 これで動画を見てコメントを打っていたようである。

 地球に降ってきてスマホで動画見て、たまたま近くに灯火の家があった。

 この子も灯火に負けず劣らずの幸運の持ち主である。


「それはどこで買ったんだ?」

「拾った!」


 持ち主も困っている事であろう。

 おまけに勝手にアカウントを使われコメントまでされてしまったのだ。

 かわいそうに。

 灯火は明日、交番に届けようと思ったのであった。

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