74.ボードゲーム
「このフィールドは!?」
空間の裂け目に吸い込まれてしまったアルカ。
空間の中は地面が白く、その他が全て黒で塗りつぶされたフィールドであった。
「ここなら邪魔が入りませんね」
この空間に誘い込んだ張本人、グレイが少し離れた所に立っていた。
「このフィールドは隠しフィールドか?」
「いえ、私のスキルによりお連れしました」
【神】とデカデカと書かれた扇子で自らを仰ぐ。
表情はとても、にこやかである。
「1対1か! 面白ぇ!」
アルカは、戦闘態勢を取る。
が、動けない。
「ちょっとしたネタスキルをで貴方の力量を計ります」
「ネタスキル!? 相手の動きを制限するスキルがネタスキルとは思えないな」
「いえ、私も自由に動けませんので」
「え?」
グレイが発動したスキルは、強制的に相手とボードゲームを行うスキルであった。
他のプレイヤーが周囲に居ない事が発動条件であり、更には1日に1度のみしか発動出来ない扱いづらいスキルであった。
勝利した際には、相手のHPを今のHPから見て4分の1にする効果がある。
「さぁ、勝負しましょう。何が良いですか? チェス、将棋、囲碁、それから……」
様々なボードゲームで対決出来るようだ。
だが、アルカはあまりボードゲーム経験が無かった。
故に、遊べるものも限られている。
「オセロで勝負だ!」
「オセロですか。良いでしょう、受けて立ちます」
「白黒付けようか」
互いが座り、勝負が始まった。
「はあああああああああああああ!!」
「ここです」
アルカは全力で勝負をする。
しかし、流石ボードゲーム部部長と言った所であろうか、かなりの実力を見せ付ける。
そして時間が経ち、勝敗が決した。
「くっ……俺のHPが!!」
アルカの負けである。
だが、あくまで負けたのはボードゲームでの対決だ。
GWOでの勝負は、まだ終わらない。
「成る程、貴方の弱点が分かりましたよ」
☆
「ん?」
「そ、そんな……」
ハイカの脳内にラメが倒されたとのアナウンスが流れた。
それと同時に、極が倒されたアナウンスがキメラとミーナの脳内に流れた。
「ラメが負けるとはね。その反応じゃ、相打ちだったみたいだけど。そっちは残り3人か。それに対しこっちは4人。おまけにお前達はここで死ぬんだもんな」
ハイカが右手を上にかかげる。
「攻撃力を高めて一気にあいつらを殺す。皆! ウルチャを俺に!!」
どうやら、ウルチャで攻撃力を上げる作戦らしい。
「8万か、まぁいい。殺すには十分だ」
ハイカは、4万を攻撃力、4万を素早さに振った。
「ミーナちゃん、ちょっと耳貸して」
「それで良いの……?」
「それしか方法は無い。それに【マジカルチェンジ】には隠れた……いや、隠れては無いけど忘れられたような仕様があるから! それを利用するしか無い! だからミーナちゃん、頑張って!」
「えぇ……だって……キツいよ。1人でだよ?」
「大丈夫、アルカさんを信じるしかないよ。きっと助けに来てくれると思う」
キメラは1人、ハイカに向かって走り出す。
「私が相手です!!」
「自滅か?」
「そんな所ですね!!」
キメラは、【ドームバリア】で自らとハイカを覆う。
「【光の波動】!」
至近距離でスキル攻撃を食らわせる。
「くっ……悪あがきだね。これでお終いだ!」
ハイカは、キメラを殴るが、片手でそれを受け止める。
だが、これはゲームだ。いくら受け止めようともダメージは入る。
「一撃とは行きませんでしたね!」
「何……!?」
魔法少女状態は解けてしまっているが、HPは1残っている。
「奇跡が起きたとでも言うのか?」
「残念ながら違います」
そう、【マジカルチェンジ】の効果の1つに以下のような仕様がある。
それは、魔法少女形態で倒されるほどのダメージを受けた場合、変身を解除しHPを1残す。といったものである。
1、2回戦目では、連続した攻撃や、スキル貫通攻撃で分かりにくかったのだが。
「じゃあもう一発食らわせるまでだ」
(極ちゃん! ちょっとだけ、技を借りるよ!)
キメラは、ハイカの腹部をぶん殴った。
「ごほっ!?」
(よし! 一瞬怯んだ! 更にもう一発!)
今度は、股間に思いきり膝蹴りを入れた。
VRゲームはとてもリアルに出来ている。
景色なども現実と変わらないリアルさだ。
故に、錯覚してしまう事もある。
「ひっ……!?」
ハイカの顔が青ざめる。
まるで、大切な何かが壊れてしまったかのような表情である。
だが、すぐにそうではないと、冷静さを取り戻す。
「俺の防御力を舐めるなよ? 3ダメージくらいしか入ってないぞ?」
時間が経ち、ドームバリアが解除される。
(ミーナちゃん。上手く逃げ切れたみたいだね。私の役目はここまでかな?)
その時、空間に亀裂が入る。
そして、ガラスが割れるような音がすると、そこから1体の龍が突き破るように出て来る。
「やりますね」
グレイも一緒ではあるが……。
「キメラちゃんは随分ボロボロだな。とりあえず、グレイちゃんはかなり強い。簡単な方から始末するぜ!」
「簡単な方……? この俺、ハイカを舐めすぎだね。 ごめん、今のウルチャで10万入ったから、それで特殊防御上げた。俺もう無敵だ」
グレイは目をくわっとさせた。
「今すぐ逃げるか投了しなさい!」
「何でだよ?」
「アルカさんのスキルの中にはプレイヤーを装備するスキルがあります。装備されればそのプレイヤーのステータスが上乗せされてしまいます。故にステータスの上げ過ぎは危険です」
「掴まらなけりゃ良いんだろ? ……ってえ!?」
キメラが後ろから、ハイカの事をがっしり掴んでいた。
「アルカさん! 今です!!」
「ハイカさん! 装備されたら私達のチームはお終いです。逃げるか投了してください」
「こ、この状況で逃げ切れるか!!」




