73.ウルトラチャット
「な、何で私にダメージが!?」
「ヴェッヘェ!! そ・れ・は・ねぇ……」
再び、写真を拾い上げ、生物部部長のラメは写真を叩き付ける。
またしてもミーナにダメージが入る。
「成る程ねぇ……」
カノンが顎に手を当てる。
能力の検討が付いたようだ。
「皆、そのカメラで撮影されたら終わりだ。どうやら、撮影した写真にダメージが入るとそこに映っているプレイヤーが同じダメージを受けるようだね」
「関心しないっすねえ!! そういうネタバラシ!! どっちにしろ、ミーナちゃんは終わりっすよ」
アルカはその説明を聴き、カメラを破壊しようと走るが、そこにボードゲーム部部長であるグレイが立ち塞がる。
「貴方とは、サシでやり合いたい」
グレイは扇子を畳むと、空間を切り裂く動作をする。
空間には裂け目が出来、グレイとアルカはそこに吸い込まれ、その後裂け目は閉じた。
「また勝手にやってるっすよ、あいつ。ハイカさん!! 俺らだけでとっととこいつらやっちまいますよ!」
「ああ、金の力……思い知れ!!」
カノンは、百舌鳥17でラメを狙う。
「カメラが怖く無いんすか?」
「写真が出来るまでに……君を倒す!!」
「あっ、そうっすか。これじゃきついな~……ヴェッヘェ!!!! な~んてねぇ!!」
ラメは百舌鳥17を撮影し、スキルを発動させる。
発動させたスキルは、【生物部分変化】。
体の部位を特定の生物に変化させる、ユニークスキルである。
「馬ァ!! 僕は馬ァ!!」
下半身を馬に変化させると、百舌鳥17から逃げ回る。
「速いね、君」
百舌鳥17がリボルバー式の拳銃から銃弾を発射させる。
「ビーム!」
カメラからビームが発射され、互いの攻撃が相殺される。
「これはね、武器にもなるんすよ。ユニーク武器って奴っす」
「本当にユニークだね」
「し・か・も……写真が完成しました~!! あっウルチャ2万ありっす!」
カノンが冷や汗をかく。カノンが冷や汗をかく何て珍しい。
「そのロボットを破壊してやるっす!! ヒャビャァ!!」
ラメは写真をビリビリに破く。
すると、百舌鳥17は動きを止め、爆発した。
カノンのHPは元々かなり低いので、この爆発でHPは0となってしまった。
「いぇーい! ピース!!」
ラメは、笑顔で空に向けてピースをした。
☆
「会長の生命反応が消えた……?」
キメラの顔が青ざめる。
「まっ、金の勝利って訳だ。そこのミーナって奴も終わりだよ。写真をラメが持って居る限り、いつでも殺せる」
「だ、だったら倒されるまでに私が貴方を倒します」
ミーナがハイカを力強く指差す。
「ミーナちゃん。こっちは2人、あっちは1人。ラメさんが戻って来るまでに倒しちゃおう!」
「分かった!」
ミーナは、ダイナマイトを両手一杯に召喚し、それをハイカに投げる。
「遅い」
「それはどうでしょう?」
キメラは、【ドームバリア】を使用し、ハイカを幽閉する。
「僕を閉じ込めたって訳だな」
ダイナマイトが次々と爆発する。
その爆発は重なり合い、ドームバリア内部が砂煙に包まれた。
このコンボを受けたハイカは、ひとたまりもないだろう。
「やった!」
だが、砂煙が晴れた時にハイカはそこに立っていた。
「え?」
「その表情……倒したと思ったな? 倒したと確信したんだな?」
「な、なぜ倒れていないんですか! いくら防御力が高くても……」
「君は、現ゲーム部部長だっけ? 俺は攻撃を受ける前にスキル【ウルチャバースト】を発動させていた。一定時間、ウルチャで課金された数値分、各ステータスをアップさせる。今の僕の防御力は10万だよ」
何故ここまでウルチャを飛ばされるのか、それには理由があった。
ウルチャしたリスナーの中から、抽選で3名に、ウルチャした金額の100倍の数値の金を与えると事前にお知らせしておいたからである。
「そ、そんな……」
「終わりだ」
☆
カノンを倒したラメは、下半身を馬にしたまま、ハイカの元へ戻ろうとする。
が、殺気を感じる。
「誰っすか?」
背後にとある侍が迫って来ていた。
アルカのチームメイトである、極である。
カメラで、極の刀を受け止める。
「そのカメラ、耐久値が随分高いでござるな」
「そうっすね。ちなみに特殊攻撃力は勿論の事、物理攻撃力も高いんで……そこん所、宜しくで~っす!!」
「!?」
極が切り付けたのだが、逆に刀の方に亀裂が入り、やがて折れてしまう。
「せ、拙者の冥王刀がっ!?」
「ヴェッヘェ!! 侍が刀折れてるっすね~!! ヴル゛ン゛ッ エ゛ッヘ゛ェ!!」
ラメはテンションが上がり、大きめの声を出して笑った。
「はい、チーズ!」
そのまま、極の姿を捕らえ、シャッターを押す。
極は撮影されてしまった。
「写真が完成するまでもなく、このカメラでぶっ殺すっす!」
カメラからレーザーが発射され、極の心臓部を貫く。
「残念でござったなぁ……!!」
「な、何で効かないんだ!? チートか!?」
今度は、カメラで直接極を殴り付けるが無傷であった。
「え゛む゛っ!?」
「いただき!!」
極は、ラメの顔を殴ると、カメラを無理矢理奪い取る。
「ノムウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!! 僕のカメラ返せ!!」
ラメは、カメラを取り返そうとするが、遅かった。
「楽しかったでござるよ!」
「っておいいいいいいいいいいいいいい!! それが君の満足する勝ち方かいな!?」
「本当は、完全勝利したかったでござる」
極は、カメラを持った右手で、ラメの腹をぶん殴った。
すると、HPが0となった。
両者同時に。
「今回は引き分けでござるな」
「さっき無敵だったのはスキルだったすね?」
「【勇敢なる魂】。10秒間無敵になるでござるが、効果が切れた時、蓄積されたダメージが拙者を襲うでござる」
「ヴェッヘェ!! 最初から引き分け狙いだったすね。 ま、お互い残ったチームメイトに託すしかないっすね」
ラメは、「やれやれ」といった感じで照れ笑いをすると、極と同時に消滅した。




