72.スキル共鳴
そして次の日、いよいよ第3回戦が始まる。
これに勝利すれば、無事に決勝戦へと進む事が出来る。
アルカはチームメイトを連れ、控え室を後にした。
「これに勝てば決勝に行ける! 皆! 頑張ろう!」
「うぅ……先輩方が相手だなんて緊張します……」
キメラが緊張しているようだ。
だが、自らの手で顔をぺちぺちすると、すぐに気持ちを切り替えた。
フィールドに出ると、フィールドは1回戦と同じような森のフィールドであった。
第2回戦は、チート級のアイテムが設置されていたので、3回戦目は純粋な実力勝負をさせたいようだ。
5分程経つと、運営から試合開始のアナウンスが流れた。
「皆、作戦通りに行くぞ! 出し惜しみは無しだ!」
アルカが叫ぶ。
チームメイトはコクリと頷く。
「では、行くでござるよ!」
今までの試合を見てきた感じだと、相手チームは自チームの真逆に設置されている事が分かっている。
今回の相手はチート級スキルも無ければ、チート級武器も無い。
だったら一気に強力な広範囲攻撃で倒す。そう考えた。
「アルカ君、やっぱり居たよ。全員では無いけど敵チームが固まってるね! まさかいきなり来るとは思っていなかったようだよ!」
「よし、皆! 【トルネード】だ!!」
【トルネード】は、第1層のボスである、エアーゴブリンを倒せば確定でドロップするスキルである。
効果は、小型の竜巻を飛ばすだけであるが……。
「3.2,1!!」
アルカが合図をすると、皆がトルネードを使用する。
相手チームは当然かわそうとするが、途中で各々が放ったトルネードが重なり合った。
「ふむ。面白い戦術ですね。何が起こるのでしょうか?」
「ボードゲーム部! 関心してる場合か! おい、やばそうだ、皆散れええええええええええええ!!」
逃げようとするが、竜巻が重なり、そしてそれが巨大になる方が早かった。
そう、皆が放ったトルネードが1つになり、巨大な竜巻へと姿を変えたのであった。
更に、竜巻の中にアルカは、スキル【超音波】を使用。これで竜巻に巻き込まれたプレイヤーは混乱状態になってしまう。
スキル同士の共鳴。これは、チートでは無く、偶然検証によって得られた立派な戦術である。
共鳴後のスキル名は設定されていない。
しかし、アルカ達は声を揃えてこう叫ぶ。
「「「「「オメガトルネード!!改!!」」」」」
隠しボスである、エクシードゴブリンが使用していた強力スキルである。
実際はもっと強力な能力なのだが、アルカ達ではここまでの再現が限界であった。
ちなみに改は、改良ではなく、改悪の改である。
「うわっ! このゲームこんな事も出来るのですね!」
ボードゲーム部部長は、目をキラキラさせている。
なぜか、平気そうだ。
ダメージは低い。だが、混乱状態でそうさがあべこべになってしまうのだがなぜ平気なのだろうか。
「うあああああああああああああああ!! クソがああああああああ!!」
文芸部部長は、余裕がなくなっているようで、洗濯機に入れられた洗濯物のようにぐるんぐるんとしていた。
結果、竜巻がやむと、文芸部部長は空高くから地面に叩き付けられ、大ダメージを食らい消滅してしまう。
「文芸部部長を倒しました!」
キメラが笑顔で喜ぶ。
文芸部部長が【ボス】で無いのが惜しいくらいである。
「ふむ、お見事です。後で私にもその戦術を教えてください」
竜巻の中から現れたのは、3人居た。
丁寧な言葉使いで眠そうな目の彼女は、ボードゲーム部部長であり、プレイヤーネームは【グレイ】。
ショートヘアーをしており、前半分が銀髪、後ろ半分が金髪であり、金色のヘアバンドを装着している。装備は、和装であるが、所々にプロテクターが付けられている。
「何で平気何だ?」
アルカが首を傾げる。
「そうですね。操作が一定時間あべこべになるのであれば、それに対応した動作をすれば良いのかと思いましてね」
「理屈じゃそうだけど……」
どうやら只者では無いようだ。
では、残りの二人は?
「38万の課金装備で混乱状態にはならないように対策をしておいたよ」
「僕も【ハイカ】さんに、その装備を奢ってもらいました!」
スマホゲーム部部長【ハイカ】と生物部部長の【ラメ】は、装備の効果で難を逃れたようである。
「鍛錬不足ですよね。すみません。私のチームメイト達が……」
「いえいえ」
グレイがデカデカと神と書かれた扇子で自らを扇ぎながら、少し困った表情で言った。
貴方が化物なだけだ。とは言わなかった。
(ボスは、この中には居ないか。という事はどこかに隠れているのか? 要注意だな)
そうである。アニメ部部長だけ居ないのである。
そして、突然ラメが声をあげる。
「ややっ!? ウルチャありっす!」
「?」
「ウルトラチャットっすよ! 簡単に言うと、僕達に課金出来るシステムっすね! ちなみに今ので僕に向けて5万課金されました! ヴェッヘェ!!」
ラメは、照れ笑いをすると、頭をかいた。
「更に……激写~!!」
「ひっ……」
物凄い速度でローアングルでミーナに近付くと、持っているカメラで写真を撮る。
「ヴェッヘェ!! 絶景ですなぁ!! あっ、ここでは皆女の子だからセーフっすよ」
「や、やめてください。そ、そういうの困ります」
ミーナが顔を赤らめ、目をそらす。戦闘中とは思えない。
そして、カメラから写真が1枚プリントされる。
「あ~やっぱり大事な部分は黒塗りか~……まっ、いいか」
残念がながら下着は撮影できなかったようだが、どこか満足げであった。
「ひひっ! えいっ!」
ラメがメンコのように写真を地面に叩き付けた。
「え?」
「驚いてるっすね~! その表情大好物っす!!」
なぜか、ミーナに少量のダメージが入っていた。




