67.控え室にて
そして、1回戦全ての試合が終了した。
本日、VRゲームの日には2回戦目まで行う。よって、後1試合ある。
アルカ達は控え室で次の試合の準備を行っていた。
「【TS】……会うとしたら決勝だな」
アルカはメニュー画面から見られるトーナメント表を見て言った。
「1回戦はすぐに倒されちゃったから、次こそは頑張りますよ!」
ミーナが眉に力を込めながらも、笑いながら発言した。
「期待してるぞ」
「ふふ、任せたまえ。次こそ私の実力を見せてあげようではないか」
「カノンちゃんも期待しているぞ」
「ありがとう。1回戦目はすまなかったからね」
「いや、1回戦での勝利はカノンちゃんの情報があったから勝てた。だから、むしろありがとう。2回戦目も頼むぜ!」
「任されたよ」
カノンは、ニヤリと笑うと椅子に座り直した。
「それはそうと、2回戦の第2試合は特別な武器が設置されるようだね」
「いきなりだよな」
「ま、臨機応変さも求めてきているんだろう、運営さんは」
2試合目にのみ、特別な武器が設置される事が先程運営から知らされた。
そのアイテムの名は【ダークカリバー】。
このゲームのラスボスが使用してくる武器であり、仲間を殺せば殺すだけその威力を増す魔剣だ。生命エネルギーを吸い取って強化しているという設定である。
「いいんですかね? 試合限定とはいえ、ラスボスの装備をその辺に生やして」
キメラが顎に手を当て、首をかしげる。
このゲームはオンラインゲームという事もあり、一応はラスボス設定されているものの、倒せば終わりのゲームでは無い。
だが、それにしたってプレイヤーが持っていいものなのかどうか、彼女は疑問なのだ。
「ま、そんな事どうでも良いじゃないか?」
「良くないですよ!」
カノンが流し目でキメラを見ると、キメラはちょいキレる。
「ふふっ、すまない。私が言いたいのはもっと重要な問題があるという事だよ」
「重要?」
「うん、ずばり……これを使うか、それとも使わないか……って事だね」
カノンの発言に周りが「あっ!」となる。
「そうか、ラスボスが仲間を殺して武器をパワーアップさせているって事は、使うにはチームメンバーを倒さなくちゃいけないのか」
「アルカ君、どうする? 私はどっちでも良いけどね。これを使ったからと言って現実で死ぬ訳じゃないからね」
チームメンバーの仲が悪い訳でも無い。
つまり、これをグサリ……とやっちゃっても恨み合いもないだろうし、別に問題ない訳だ。
「俺は、あまり使いたくないなぁ」
アルカは正直な意見を口にした。
「お、優しいね」
「いや、そういう訳じゃないけど、いざ使って弱かったら最悪じゃん。ここはチームワークで勝利を掴もうぜ!」
「熱いねぇ」
そんなこんなで、皆がアルカの意見に賛同した。
どっちに転ぶか分からないような物を使うよりも、自分たちの実力を信じたいのだ。
「問題は、相手チームだよな。そのダークカリバーがクソ強かったら厄介だぜ?」
「た、確かに!!」
キメラが慌てふためく、それに釣られ、カノン以外のメンバーは慌てそうになる。
「?」
カノンだけ、疑問符を浮かべたような表情をしている。
「何を慌てているんだい? 即死攻撃持ち相手に、君達は勝利してきたじゃないか」
「あ……言われてみれば」
キメラがカノンの発言で落ち着いた。
攻撃力だけでみれば、自身の攻撃力を100倍にしてくる【ゴッド・オーラ】の方がよっぽど脅威であった。
「確かに……あれだけ強力なスキル相手にもやれたんだ。何とかなるかもな」
「油断はしちゃ駄目だけどね」
「じゃあ、こうするか、ダークカリバーを獲得するだけして、使わないと」
「分かったよ。……あっ、そうだ。獲得したら、その武器を私に渡してくれないか?」
「? 使うのか?」
「いや、そういう訳じゃないけどね」
何かを企んでいるようであったが、とりあえず信用する事にした。
『2回戦、第2試合が始まります。各チームはフィールドに入場してください』
アナウンスが控室に響く。
アルカ達は、フィールドへ出ると、そこには見事な雪景色が広がっていた。
そして、大きな山が聳え立っていた。
この試合の為に用意したフィールドにしては、凝っている。
『お互い、フィールドに入られたようなので、ダークカリバーの入手場所を発表します。ズバリ! あの山のてっぺんです! あの山は飛行で登る事が出来ないので気を付けてください』
「向こうから生えてる場所を発表したか……飛行が出来ないとなると登山中に狙われた場合、空中戦は望めないか」
アルカ、キメラ、カノンは飛行が可能である。
だが、それを活かしてダークカリバーを獲得するのは不可能なようだ。
「百舌鳥17は地上戦も得意でね」
「アルカさん、私もです!」
カノンとキメラが言った。
『では、チーム【Curiosity】vs【闇病み☆百合娘―ズ】……バトルスタートです!!』
運営のアナウンスと共に、試合がスタートした。
あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い致します。




