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64.vsエレメンタル☆シスターズ【前編】

「よし、俺達も動くか」


 アルカがチームメンバーに言った。


「そうですね。会長の死は無駄に出来ませんしね」


 死んでは居ないのだが、涙を拭き、拳をグイッっと胸の前で握りしめるキメラであった。


「カノンちゃんから受け取ったスキルの情報通りだと、どれもヤバイスキルだ。だが、勝てない訳でも無い……筈」

「どうやって勝つでござるか? 攻撃面も防御面も完璧でござるよ?」


 極の言う事はもっともであった。

 攻撃はすり抜け、攻撃力は100倍にしてくる。

 こちらが近付こうとしても、パーフェクト・ゾーンを展開されては侵入する事も出来ない。

 増殖に関しては未知のスキルだ。だが、チームメンバーが単純に+10人されると考えると恐ろしい事この上無い。


「確かに攻撃も防御も完璧だ……チームとしてはな。だが、個人として見れば倒せなくは無い……と思う」

「えーと、アルさんが言いたいのは、相手のメンバーを分散させるという事ですね?」


 ミーナがアルカの考えを察し、言った。


「そう、その通り何だが……」


 分散させるのも難しそうだ。

 だからといって全員で特攻すれば、一気に倒されてしまう可能性も非常に高い。


「相手も簡単には分散してはくれないだろうし、どうしたものか」


 そう考えていると、一発の弾丸がアルカの翼にヒットする。


「くっ……!! 居場所がバレたか!!」


 弾丸を放ったのは、ウォーターである。

 完全に気配を消していた。


「極、いけるな?」


 アルカが極に目で合図をする。

 すると極は、ドヤ顔で言う。


「ふっふっふ……拙者の修行の成果を見せる時が来たようでござるな……!!」


 自信満々である。果たして、修行の成果はいかほどのものであろうか?


 極が弾丸のある方へ刀を抜刀し、走る。


(さあ……来るでござる!!)


 極に弾丸が飛んで来る。そして、その弾丸は全くの別な地点へと飛ぶ。


「ちょっ! タンマ!!」


 一発がヒットし、それから逃げるようにミーナが涙目で林から飛び出して来た。どうやら、ウォーターの狙いはミーナだったようだ。


「ミーナ殿! 焦っては相手の思うツボでござる!!」


極は叫んだが、もう遅い。

スナイパーライフルからミーナの頭部を狙い、連続で弾丸が発射される。

 そして、それは見事に全弾命中する。


「ご、ごめんなさいいいいいいいいいいいいいいいいい」


 ミーナが粒子となり消滅した。


「ミーナ殿……!!」

「ミーナ!!」

「ミーナちゃん!!」


 これで残るメンバーは、アルカ、極、キメラのみとなった。


「楽勝ね」


 ウォーターが遠くからニヤリと笑った。


「お次は、刀使いの貴方……さぁ、ここまで辿り着いて斬り付ける事が出来るかしら?」


 ウォーターは他のチームメンバーとは一緒に居ない。奇襲担当として、全く別な所から狙撃をしている。


「さあ! 来るでござる!!」


 弾丸が飛んで来る。

 だが、極はそれを……弾かなかった。


「現実的に行けば弾くより避ける方が簡単でござるからな!」


 確かに極は弾丸を弾ける。

 だが、避ける方が弾くよりは簡単だ。

 弾丸を弾く特訓をする事により、動体視力は十分に鍛えられた。それにより、かわす事は朝飯前……とは行かないが、それ程難しい事では無かった。


「やるね……元プロゲーマーを目指していた身としては、絶対に倒さなくちゃね。発動! 【フルバーストモード】!!」 


 スキル:フルバーストモードとは、HPを1残し、所持する武器を身体に身に纏う必殺のスキルである。元プロゲーマーを目指していた者としてはチーム戦でそれを勝手に発動するのはどうなのだろうか?


「蜂の巣にしてあげる!」


 フルバーストモードを発動したその時、極が刀を思いきり投げる。


「やけになったね?」


 ウォーターがクスリと笑う。


 極に、数百発の弾丸が襲う。襲い掛かる刀については、避けるつもりは無く、破壊するつもりだ。

 だが、刀の軌道はずれ、ウォーターを傷付ける事無く後ろに飛んでいった。


「はははは!! これで2キル!! よしっ! やっぱり私強すぎる!」


 集中砲火により、砂煙が舞い、極の姿は見えなくなっていた。

 煙に隠れていたから?

 否、そこに極は居なかった。

 グサリ。


「んなっ!?」

「油断……したでござるな?」


 極が背後からウォーターの背中を貫いていた。


「そ、そんな……あの集中砲火から逃れられる何て……」


「ふぅ……ちょっとした裏技でござるよ」


 ウォーターのHPは0となり、粒子となり消滅した。


 ちなみに、極が何をしたかというと、スキルを用いただけである。

 超スピードで避けたとか透明になったとかでは無い。

 発動したスキルは、【武器回収】。本来はフィールドで武器を無くした時とかに使用するスキルである。発動すればその名の通り、手元に武器が戻って来る。

 だが、この技には欠点があった。回収する武器との距離が一定以上離れていた場合、武器のある場所へプレイヤーが移動してしまうのだ。そのせいで無くした武器を回収しようと探索中に一気に前エリアに戻されたプレイヤーも多い。

 極はそれを利用し、ウォーターの背後へと回ったのだ。


「ま、武器を相手に破壊されては元も子もない上にトリックがバレるとそんなに強くない戦法なので、多用は禁物でござるがな~。さて、これで相手チームも焦ってくれるといいでござるな」


『極選手がウォーター選手を撃破しました』


 この戦いに参加している全チームの脳内にアナウンスが鳴り響いた。


「やったのか、マジか」

「極ちゃん、凄い!」


 アルカとキメラは林に隠れ、コソコソと話していた。

 そして、一方……。


「ウォーターがやられたか」


 敵であるフレイムがクールに呟いた。


「やられちゃいましたねぇ……ですが、まだこちらには4人もいるんですよぉ!? これは勝ち確定ですよぉ!」


「最後まで油断はするな」


「真面目ですねぇ」


 ドヤ顔するミサキに対し、そう言った。

 勝負は最後まで油断してはいけないのだ。


「どっちにしてもここから動く必要が無くなりそうですねぇ……ウインド?」

「うん。【増殖】で10人に分身させてる」


 10人に増殖したウインドがアルカ達を探す。

 本体は他のメンバーと一緒に【パーフェクト・ゾーン】を展開させたエリアに待機だ。

 果たして、アルカ達はどうするのだろうか?


「おい、何か来たぞ!」

「ウインドちゃんがえーと……10人!? どれが本物何ですか!?」

「キメラちゃん、落ち着いて。あれはおそらく【増殖】によって出現したウインドちゃんの分身。どれも本物じゃない」


 どれも本物では無いが、能力値は本体をコピーしている。

 NPCという事以外は、全て同じである。


「ウインドちゃんは杖を持っているな。職業は魔法使いって所か」

「一緒に倒しましょう!」


 キメラは魔法少女形態へと変身し、アルカと共に林から出る。


「やるぞ!」

「はい!」


 二人は交戦する。

 ダメージは与えられているが、1プレイヤーと同じHPを持って居るので、中々倒れない。


「でも、倒せない事は無いな。どうやら性能はウインドちゃんのコピーだけど、AIはその辺のモンスターと変わらない」

「そうみたいですね。プリズムコンボで一気に倒しますか?」

「いや、それは勿体無い」


 アルカは、スキル【第一の瞳】を発動する。

 アルカの腹部から触手が飛び出る。これに捕まればアルカに装備されてしまう。

 能力は上乗せ、ダメージは肩代わり。そして装備したプレイヤーのスキルを使えてしまうという凶悪スキルだ。初見殺しではあるが、冷静になれば簡単にかわせるのであまり使用していなかったが、AIの実力が大した事ないという事が分かると使用する。

 モンスターには効かないが、今回の場合はプレイヤーの丸々コピーなので、プレイヤー判定されたようである。


「よっしゃあああ!! スキル発動【増殖】!!」


 アルカはウインドのスキル【増殖】を発動させる。

 凶悪な見た目をしたドラゴンが10体出現する。

 本体アルカは、装備されたウインドを一時解放すると、10体の自分に命令をする。


「俺達! 【第一の瞳】で全員捕らえろ! 捉えたら、敵から可能な限り逃げろ!」

「戦わせないんですか!?」


 キメラが驚く。なぜ分身以外と戦わせないのかと?


「こいつらのAIは大した事ない。エレ☆シスと戦わせても、すぐ倒されるだけだ。それに【増殖】で10体を出現させている間はそれ以上増やす事が出来ない。つまり、倒すのでは無く、装備してしまえばウインドちゃんは新たに【増殖】を発動出来ない!!」

「な、なるほど……これで1つ目の強力スキルは封じられた訳ですね!」


 キメラが目を輝かせながら言った。


「まぁ、まだまだ強力スキルを攻略する必要はあるけどな」


 【すり抜け】、【ゴッド・オーラ】、【パーフェクト・ゾーン】を攻略しなくては、勝利する事は出来ない。

 特に【パーフェクト・ゾーン】は強敵だ。相手に近付く事すら出来ないのだ。

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