62.運営と言う名のファンからの差し入れを受けた対戦相手
【VRの日】、それは世界でVR技術が実用化された日である。
その休日に、ゲーム内時間を加速させ、1回戦を終わらせる予定だ。
時間で言うと、2日分である。
その前日にアルカのチーム【Curiosity】の対戦相手、【エレメンタル☆シスターズ】は、リーダーであるフレイムの【マイホーム】内にて、作成会議を開いていた。
「皆、1回戦の相手だが、この前も言った通り、【Curiosity】……あのドラゴンが率いるチームとの戦いとなった」
フレイムが真剣な表情で、肘を机に置く。
ちなみに、会議は円卓で行われている。
「厳しい戦いになるな」
ちょっと困り顔で言うアース。
その表情は半分冗談であった。何より、彼女達は最早アルカの知っているエレ☆シスでは無いのだ。贈り物があるからだ。
「ドラゴンさんには悪いけど……私達勝つ……」
ウインドは静かに拳を握りしめる。
「君達には悪いけど、私だけで5キルしちゃっても良い?」
追加メンバーである、ウォーターがクリアブルーのスナイパーライフルを持ちながら言った。物静かな感じだが、かなり自信があるようで、口角を上げていた。
「4キルだけなら良いですけど~? アルカさんは私の獲物ですから……邪魔するなら容赦はしませんよ?」
「ははっ、怖いね。だったら今ここで決着付けようか?」
ミサキとウォーターが睨み合う。
「まぁまぁ、チームメイト何だし、仲よくしようぜ? な?」
アースが半笑いをしながら止めに入る。
「ま、邪魔さえしなければ私はどうでもいいけど」
ウォーターは心を落ち着かせると、ミサキを睨むのをやめた。
「私も同じく」
ミサキは溜息を着くと、目線をウォーターからそらした。
「では、皆。この前の話だが、【ボス】は、アースで良いな? 防御系のスキルが得意で耐久性も申し分ない」
設定した【ボス】が倒されてしまうと、残りのチームメンバーがどれだけ元気だろうとも敗北となってしまう。
その為、エレ☆シスの中で一番防御力系の能力が高く、スキルも防御系のスキルを多く覚えているアースを、フレイムが推薦していた。他のメンバーも異議は無いようであった。
「ああ! 俺のユニークスキル、【パーフェクト・ゾーン】で皆を守ってやるぜ!」
そう、今の彼女達は超強力スキルを手にしている。それもユニークスキル。他に使用可能なプレイヤーは、少なくとも現時点では居ない。
「ああ、頼んだぞ」
フレイムはアースに目を瞑りながら言った。
彼女達がなぜユニークスキルを手にしたのか?
その答えはGWOの運営の上層部にエレ☆シスの大ファンがおり、彼女達向けにユニークスキルが作成され、与えられたのだ。
「フレイムも頼んだぜ? 何てったってユニークスキルを2つも貰ってるんだからな!」
フレイムは他のメンバーとは違い、ユニークスキルを2つ貰っている。
リーダーだから……というだけの理由では無い。
ミサキが「そこまで優遇されてなくてもアルカさんくらい倒せますよ(笑)」と謎の自信を見せ付け、ミサキに与えられる筈のユニークスキルを代わりに授かった為である。
ミサキが断った理由がそれだけかは不明ではあるが、それはミサキのみぞ知る。
ちなみに与えられたスキルは以下の通りである。
【ゴッド・オーラ】
フレイムが与えられたユニークスキル。
1分間、紅きオーラを身に纏う。
その間、攻撃力を100倍にする。
【すり抜け】
ミサキが与えられる筈だったスキル。
フレイムが代わりに与えられた。
1分間、あらゆる攻撃、スキルをすり抜ける。
【パーフェクト・ゾーン】
アースが与えられたスキル。
半径20mにパーティメンバー以外の侵入を許さないバリアを展開する。
このバリアは、攻撃によって破る事は出来ない。スキル使用者が動く事により、解除されてしまう。
【増殖】
ウインドが与えられたスキル。
自身のコピーを最大10人まで出現させる。
【インフィニティ・バレット】
ウォーターが与えられたスキル。
常時発動型スキル。
銃弾が無限に使用可能になり、更にはリロードをする必要が無くなる。
「それにしても……凄いな、色々と。事務所の意向だから仕方が無いが……」
フレイムは、メニュー画面を開き、自らのスキルを見つめると再び口を開く。
「ま、かわいそうだけど、仕方が無いな」
「余裕だね、フレイム。もう勝った気でいるのか?」
「いや……勝負は最後まで分からない。油断するつもりは無いさ」
アースの問いにフレイムは答えた。
確かに授かったスキルは強力だが、決して油断ならない相手なのだ。
「もう……ここまで来たら勝つしかない」
ウインドも勝つ気満々であった。
「【増殖】……マジ強すぎ……ヤバイ」
最大10人まで増やせるのだ。弱いはずがない。
「皆さん、そうシリアスしないで安心してください! 私がいますからね!」
ミサキがドヤ顔でウインクを決める。
こう見えても特訓を重ねて来たのだ。自信はある。
レベル上げ、プレイングスキル、更には情報収集を欠かさなかったミサキは、ドヤ顔をする。そして心の中で叫ぶのであった。
(これはもう……勝てる気しかしませんねぇ!!)




