55.システム外スキル
システム外のスキル……通称システム外スキルと呼ばれる。
意味はその通り、システムに頼らない、プレイヤーの技量のみを用いた“スキル”である。
「どうやるんだ? 教えてくれないか?」
大会に向け、1つでも強力な技は身に着けておきたい。
「どーしよっかなー?」
タミエルが意地悪そうな笑みを浮かべる。
そして、1つの条件を出す。
「夏休みの宿題、手伝って?」
「あっ、私も私も!」
あと少しで7月中旬、パーティ対抗トーナメントが開催されるまでもう少しだ。
そしてそれが終わると、学生達は、夏休みを迎える事となる。
「そんな事で良いのか?」
「うん、良いっしょ?」
実に簡単な条件である。
ただ、高校の問題だと、キツイ。
「あんまり難しいのは俺も無理だぞ?」
「大人だったら簡単だと思うよ? 大人だよね?」
「まぁ……」
アルカも二人の年齢について知りたかったが、あまりリアルの事を聞くのもマナー違反なので、聞かなかった。
「よしっ! 契約成立~」
「成立~」
二人は、嬉しそうに辺りを駆け回り、ハイタッチを決める。
(あの二人のリアル……小学生だったら良いなぁ……)
アルカは、祈っていた。小学生の宿題であれば、教えられる範囲だと考えていたからだ。
「じゃあ、早速教えるね。まず、お前の属性教えて? 無属性なら無理だけど、闇属性っしょ?」
GWOには、属性というものが存在する。
炎、水、風、土、電気、光、闇が現段階の属性の分類である。
「俺、闇属性なのか……?」
ステータス画面から、再び詳細を開くと、アルカが闇属性という事が確認出来る。
「やっぱりかー!」
このゲームのアバターは、初期から属性が付いている場合と、そうでない場合がある。
後天的に属性を付ける場合、【属性チップ】というアイテムが必要となる。そのアイテムは、割とレアアイテムに分類される。
属性が付くことにより、特定のスキルの獲得や使用が出来たり、自身と同じ属性のスキルを使用する際に、威力や効果がアップする。ただし、弱点属性を受けると2倍のダメージを受けるので注意が必要である。逆もしかりであるが。
「じゃ、腕から自分の属性と同じスキル出そうとしてみて?」
「腕から!?」
アルカと属性が一致しているスキルは1つしか無い。
【破壊道】、口から光線を出すスキルだ。
だが、スキル説明には口からとは一言も書いてない。
「私がやって見せるよ。よーく見とけよ?」
タミエルは、【エンジェルビーム】を発動させ、発動する瞬間に別なスキルを発動させようとする。あくまで発動さようとするだけだ。すると、エンジェルビームが途中でキャンセルされ、腕に光のオーラのような物が纏わりついた。
「属性攻撃が発動する瞬間に別なスキルを発動する! よって、5秒間、オーラみたいな感じでそれが残るからそれを腕に纏わりつかせ……敵に突っ込む!! これが私達が考えたオリジナル技だ!」
「確かに格好良いな」
オンリーワンで、更には格好良い。
だが、特段強いかと言われれば微妙であった。
直接相手に接近しなくてはいけない上に、持続時間が5秒。普通に攻撃した方が良いのではないか? というのがアルカの疑問であった。
「かっこいいでしょ? しかも、これで攻撃すると、攻撃力と特殊攻撃両方のダメージを一度に与えられるんだ!」
攻撃力と特殊攻撃力。この2点が特に高いアルカにとっては、確かに相性が良い技なのかもしれない。
「分かった。修行して、俺もこの技を身に付けて見せるぜ!」
姉妹は、「頑張ってね~」とだけ言うと、夏休みの予定を話し始めた。宿題を教えてとは言っていたが、おそらくアルカに答えを教えてもらい、残りを遊んで過ごすのだろう。
その後、アルカは無事に3人のプレイヤーを倒し、第5層へと到達する。
他のパーティメンバーは、第4層にいるようだ。
「ここが最前層か」
最前層なので、到達したプレイヤーは少ないかと思われたが、割と多かった。
そして、肝心の第5層は、雪国のような雪景色が広がる層であった。
周りを見渡すと、初心者装備のような安っぽい装備をしているプレイヤーはおらず、見たことの無いようなネタ装備や、ラスボスか? とでも思えるような装備をしたプレイヤー等、第4層のプレイヤーとは雰囲気が異なっていた。
「ここなら俺も浮かないな」
とはいっても、モンスターアバターのプレイヤーは居なかったので、相変わらずの浮き具合である。




