51.勇者との再会
「全く、1人でレベル上げする事になるとは……いや、別に良いけどね?」
アルカがレベル上げの為にやって来たのは、第四層にある、金のダンジョンである。このダンジョン内の物は全て金色で、モンスターさえも金色である。ドロップするのは全て、G……お金である。
「オラオラオラオラ」
モンスターを次々とぶん殴り、経験値へと変えていくアルカ。
最初の内は、レベルが低かったので、スキルを使用していたのだが、レベルが上がるにつれてステータスも上昇していった為、雑魚モンスター相手にスキルを使う必要が無くなって来たのだ。
現在のアルカのレベルは、【37】。ミーナが調合したアイテムのおかげもあり、楽々にレベル上げを行えている。
そんなレベル上げの途中、金色のエリアの中に全身金色の金髪少女を目にする。
その少女は、右手に剣を左手にレイピアを装備した、勇者と呼ばれている少女であった。
「あのプレイヤーは、確か……」
アルカは、そのプレイヤーと戦った事があった。
「名前は確か、【コノミ】だったな。確かトップクラスのプレイヤーとか何とか」
アルカが思い出していると、コノミがアルカの気配に気付く。
「あっ、貴方は……」
向こうも覚えていてくれたようだ。
「コノミちゃんだったかな? 美少女コンテストぶりだな」
「そうですね。あの時は、貴方に吸収されてロクに活躍出来ませんでした」
「根に持ってる……?」
「いえ、そういう訳ではありませんが。このゲームには、まだまだ僕が知らないスキルが眠っているんだなと思いましてね。あっ、安心してください。以前の僕とは違い、アルカさん対策もバッチリですから」
コノミは、アルカの【第一の瞳】を食らった経験がある。
初見だったのと、極の不意打ちのせいで、見事吸収されてしまったコノミであったが、どうやら対策はバッチリらしい。
「なるほど! 所で、トッププレイヤーのコノミちゃんが何で第四層に居るんだ?」
コノミはトッププレイヤー、おまけに勇者とも呼ばれている程だ。
レベルも既に上限である【50】に達しており、経験値を得る意味も無い。
「金色が好き何ですよ」
「あー……」
武器から装備まで何から何まで全身金色のコノミを見て、納得したのであった。
「まぁ、それだけじゃないんですけどね。ちょっと、G稼ぎに……。ほら、ここってドロップアイテムが出ない代わりにG沢山稼げるじゃないですか」
「確かに、見るからに金稼ぎに良さそうなダンジョンだな。目がチカチカしてくるのが難点だけど」
「それもまた金色の良い所ですよ。所で……アルカさんはパーティ対抗トーナメントに出るんですか?」
「出るけど……あっ! もしかしてパーティへの誘いか? 悪いけど、こっちはもう5人集まってるんだ。悪いな」
「いえ、こちらもメンバーは既に揃っているんです。トーナメントで当たるのを楽しみにしています、とだけ言いたくてですね」
「そういう事か! 決勝で会おう! って奴だな!」
「そうです! それです! 男同士の約束です!」
本来、このゲームでリアルの性別に関する事を言うのは、マナー違反であったが、気持ちが高ぶり、うっかりリアルの性別を口に出してしまうコノミであった。
「ああ! ……決勝で会える確率は低いから絶対とは言えないけどな……」
「こういうのは雰囲気ですよ! 雰囲気! とにかく負けませんよ!」
コノミは、眉に力を込め、強気な笑顔をアルカに見せた。
そんな時であった、突如巨大な蛇が出現したのだ。
「ギョウウウウウウウウウン」
「あ、あのモンスターは!」
コノミが嬉しそうに金色巨大蛇を指差す。
「知ってるのか?」
「はい! 【ゴールデンスネーク】、僕の好きなモンスターの1体です」
コノミは、剣とレイピアを構える。
「あまり手の内は見せたく無いのですが、これくらいなら良いでしょう! 【ゴールデンスプラッシュスラッシュ】!!」
コノミの金色の武器が更に金色に光る。
まず、右手の剣で十字に斬り、斬った十字の部分に合わせてレイピアを突き刺し、最後に剣とレイピアを重ね、相手の体を貫く。
これが、【ゴールデンスプラッシュスラッシュ】である。
「は、速い!」
物凄いスピードでの攻撃であった。
勇者の異名は伊達では無いようだ。
アルカも負けじとスキルを使用し、攻撃する。
「【破壊道】!!」
まさかの新スキルである。
魔王第3形態を倒した際に、レベルアップし、その時取得したスキルである。
口から紫色の光線を出すスキルで、発動する際の音は割とデカい。
「ギョウウウウウウウウウン!?」
「ふっ……!」
【破壊道】を食らった個所に風穴が空いている。
そして、ゴールデンスネークのHPも0。
ゴールデンスネークは、倒れ、粒子となり消滅する。
「破壊力抜群ですね」
「ありがとう! それにしてもコノミちゃんも凄いスピードと攻撃力だな」
「あれは、僕の力のほんの一部です。アルカさんもそうでしょう?」
「ああ!」
アルカはニヤリと笑った。
「ま、とりあえずお楽しみは本戦まで取っておくとしまして、アルカさんって何のゲームが好き何ですか?」
「どうした突然?」
「いえ、聞いてみただけです。このゲームやってるって事は、ギャルゲーとか百合ゲーとか好きなのかと思いましてね」
「あー、俺ネットの友人に誘われて始めたんだ。ゲームはどっちかというとRPGが好きかな? モンスターを育成する系の奴」
「RPGも面白いですよね。僕はギャルゲーが好き何ですよ。僕のアバター名も好きなギャルゲーのヒロインから取ったくらいですからね。メインヒロインでありながら幼馴染で……」
急に早口で語り始めた。
このままだと、軽く1時間くらい語ってそうな勢いだったので……。
「俺、ギャルゲーはやった事無いから分からないなぁ」
アルカはやんわりと、止めたのであった。
「ピュアですね。ともかく、今回の優勝賞品はゲーマーにとって中々神がかっている物が贈呈されるそうなので、是非優勝したいですね」
未だに優勝賞品が何なのかは、公式からも発表されていない。
だが、どうやらかなりのレア物が優勝チームには贈呈されるそうだ。
「優勝商品か、考えて無かったな」
本当の目的は、キメラのゲーム部の廃部を阻止する事であったが、コノミが全力を出せなくなりそうなので、あえて言わないでおいた。
こうして、互いに握手をかわし、大舞台で戦う事を誓ったのだ。




