49.入団テスト
強気な笑顔を見せる彼女の腰にはダイナマイトが巻き付けられていた。
おそらくそれを武器として使用するのだろう。
ミーナはダイナマイトを1つ取り、極に向けて投げつけた。
投げた瞬間には、着火されていた。どうやら、使用者の意思で着火されるようだ。
極は、楽々と回避する。
「そんなもの当たらないでござるよ?」
ドヤ顔で刀を肩の上に乗せる極。
【錬金術師】を補助系の職業と知っての態度であったが、悪気は無いのだ。
だが、ミーナは相変わらずの強気の笑顔を見せた。
「ふっふっふ! 今のボムは挨拶代わりですよ」
ミーナは、ダイナマイトをボムと呼ぶと、別なそれを取り出し投げた。
極は、先程と同じだと思ったが、違った。
「なぬっ!?」
かわした後、ボムが極を追尾したのだ。
「これぞ! 自動追尾機能を搭載したボムです!」
極は刀をふるい、導火線に狙いを定めると、それを切断した。
「危なかったでござる……」
「ご丁寧に導火線を切断するとは……アルさんの仲間だけあって強いですね!」
極は、札を取り出す。
(【勇敢なる魂】は危険でござる。あのダイナマイトの威力が分からないでござるからな。反動ダメージでやられる可能性も大でござる……ならば! この前手に入れたこれを使うでござる!)
極は、【ブレイドバリア】を発動させる。
「何ですかそのカードみたいなの!?」
ミーナは驚いたが、極は「陰陽師の力でござるよ」とだけ答えると、【ブレイドバリア】の札を使用する。そして、そのままミーナに向けて突っ込む。
「接近戦に持ち込む気ですね? そうはいきませんよ!」
極に向けて、連続でボムを投げ付ける。
しかしそれらは、極の刀により、全て切断されてしまう。
これこそが、【ブレイドバリア】の効果である。
1分間、体が勝手に動き、遠距離攻撃を弾く、切断する、強力なスキルである。
「凄いプレイングスキルですね!!」
「スキルの力でござるよ!!」
極は、ミーナの腹部に右手で腹パンを決める。
「がはっ!」
ミーナは目を見開き、吹っ飛ばされはしないが、やっとの思いで踏ん張る。
「加えてもう一発!」
左手の刀を手放し、同じ個所を殴る。
「がはっっっ!!??」
極の素手攻撃力はあまり高くは無かったが、意表を突くという点では、かなり効果があった。
このゲームの最大の痛みは、小指をタンスの角にぶつけたくらいだが、それを腹部に連続で受けたことにより、倒れてしまう。
「そろそろ決めるでござる!」
極は、刀を拾うと、ミーナを突き刺そうとする。
それに対しミーナは、転がり回避を行うと、すぐに立ち上がった。
「【錬金術師】の本領発揮ですよ! 上級回復薬使用!」
ミーナは、上級回復薬を使用する。
今のダメージなら、中級回復薬くらいでも良かったのだが、アピールの為にそれを使用した。
「彼女、上級回復薬を調合出来るとなりますと、中々ですね」
キメラがいつの間にかアルカの隣に居た。
「キメラちゃん、来てたのか。今入団テストと称して、ミーナと極が戦ってる」
「入団テストですか……合格基準とかあるんですか?」
「いや、俺には分からない」
気が付くと始まっていた入団テスト、合格基準など決めていなかった。
「全体力を回復でござるか……ならばこっちは別な物を回復させてもらうでござる!」
極は、札を取り出す。
「魔王第3形態を倒した後に、手に入れた“最強の札”!!」
極は、ニヤリと笑うとそれを発動させる。
「【デッキリカバリー】!! このスキルは中々に凶悪でござる!! 本来であれば24時間のクールタイムが必要な札でござるが、このスキルを使用する事により、全ての札を再度使用可能にするでござる!!!!」
MPの代わりに【札】を使用してスキルを発動する、ユニーク職業【陰陽師】。
しかし、一度使用した札は、24時間経たなければ再度使用出来なくなるという弱点があった。
【デッキリカバリー】は、その弱点を克服出来る、夢のスキルであった。
「じゃ、弱点が……【陰陽師】の弱点が弱点になってません……」
キメラは、【デッキリカバリー】の効果に対し、冷や汗を流した。
そして、ミーナはミーナでその間に別な事を行っていた。
「錬金陣! 起動!」
ミーナは上空に右手をかかげると、天に魔法陣が現れた。
「何をする気だ……?」
アルカは、疑問に思い、思わず首を傾げた。
「師匠から受け継いだこの錬金術! 今こそ使いこなします!! スキル発動!【連続錬金術】! このスキルは1つ分の素材で、自らの現在のHPとMPの数値の差の分の個数、調合を同時に行う事が出来ます! 私の現在のHPとMPの差は、737!! これで737個のアイテムを同時に調合可能!!」
「は?」
キメラが思わず口を開いた。
1つの素材で、737のアイテムを生み出す。そんな【錬金術師】聞いた事が無かったからである。そもそも師匠とは誰なのだろうか? 相当化物なのは間違いないだろうが……。
「く、狂ってる……」
キメラは顔を青ざめさせた。
「す、凄いでござるな……」
正直、このスキルは一見狂っているが、実は生成から5分後にアイテムは消滅する上、錬金陣と呼ばれる魔法陣を生成しなくてはならない。おまけにその魔法陣を破壊されれば、失敗に終わるスキルであった。
極は、それらの知識は持ち合わせては居なかったが、ミーナ本体にも攻撃をしようとせずに、スキルの発動をあえて見ていた。
「現れて! 【トラッキングボム】x737!! そしてそのまま極さんを攻撃!!」
トラッキングボムとは、追尾するダイナマイトの正式名称である。
「物凄い数でござるな……!! 【勇敢なる魂】発動!!」
これだけの数、【ブレイドバリア】で防ぎきる事は出来ない。
10秒間無敵になり、その後無敵時間に受けたダメージを受ける【勇敢なる魂】を発動させた。
恐ろしいほどの数のトラッキングボムが極を襲うがダメージを受けずに、ミーナに突っ込む。
爆発の中、突っ走るのは、まるで特撮の撮影のようであった。
「はあああああああああああああ!!」
極は、油断したミーナを連続で斬り付けた。
「極さんが、ダメージを受けていない!?」
「スキルの効果でござるよ!! 勝ったと思ったでござるな? 油断は禁物でござる」
両手で刀を持ち、十字にミーナを斬り付けた後、物凄い速度で回転しながら斬り付けた。
ミーナのHPがゴリゴリと削られていき、残り【1】。
(勝った……!!)
極は、ニヤリと笑い、勝ちを確信した。
確かにミーナのHPはゲージは0にしたのだが、同時に10秒間の無敵時間が切れ、同時に極のHPも0になるのであった。




