45.魔王との決着【第一章完】
「カカカ……鉄屑を身に纏ったか。そんなもので我の相手が務まると思うなよ?」
魔王の巨大な手がアルカを襲うが、アルカはそれを余裕でかわす。
(体が軽い!)
百舌鳥17を装備した事により、羽の装備品からジェット噴射のようなものが出るようになっている。これにより、機動力を格段に上昇させたという訳だ。
その後もアルカを掴んで握りつぶしてやろうと、魔王がアルカを捕まえようとしたが、それは叶わなかった。
魔王はイラつく。
「ハエが!」
舌打ちをしながら、アルカに対し暴言を放つと、今度は黒い炎を口から噴射してきた。
この黒い炎もスキルの一種である。その名も【黒炎】。
ヒットした相手のHPを0にするまで燃え続ける、強力なスキルだ。
「カカカ!! 当たったら最後、お前は死ぬ。さて……? どうする?」
「こうするんだよ!!」
アルカは右腕のパーツを取り外すと【黒炎】に向けてぶん投げた。
すると、それは燃やし尽くされスクラップとなったが、同時に【黒炎】も消滅した。
「鉄屑を犠牲にするとはな!!」
「鉄屑じゃねぇ!! 俺の大切な仲間の作品を馬鹿にするな!!」
アルカが叫ぶと、魔王は再び【黒炎】を放つ。
「オラァ!!」
アルカは装備されているパーツ全てを外すと、【黒炎】へ向けてぶん投げた。
更に追い打ちをかけるように、【爆炎】を放つ。火球は黒い炎に包まれている百舌鳥17だったものにぶち当たり、そのまま魔王の方へと飛んでいき、爆発する。
「グオオオオオオオオ!! 我が……我が【黒炎】を食らってしまうとは……!!」
「それ消えないんだろ? もう勝負は付いてる」
「……カカカ!! 確かにこのままだと我は死ぬだろう、だがな、その前にお前を殺してやるんだよ!!」
「出来るのかな?」
「あ?」
「もう……俺を止める事は出来ない!!」
アルカは、スキル【第一の瞳】を発動させる。
アルカの腹部から触手が伸び、魔王を捕らえる。
本来であれば、プレイヤー以外には、効果の無いスキルだ。
だからアルカは、魔王では無く、捕食されているキメラを対象として発動したのだ。
「釣ったらぁ!!」
魔王の身体から、キメラが取り出される。
そして、キメラはそのままアルカの腹部へと収納される……が、今回は一味違った。
「私も混ぜろおおおおおおおおおおおお!! 百舌鳥17の仇いいいいいいいいいいい!!」
カノンは、キレていた。自慢の百舌鳥17を破壊した魔王をこの手で倒してやろうと思ったのだ。
まぁ、実際に破壊したのは、魔王では無いのだが……。
そして、キメラだけでなく、巻き込まれる形でカノンも装備された。
「二人を吸収しただとぉ!?」
魔王は驚く。アルカはニヤリと笑う。
「これが……これが俺達のやり方だぁ!!」
アルカからドス黒いオーラが溢れ出る。
「何という禍々しオーラ……我を上回る、圧倒的な闇!!」
アルカは叫ぶ。【咆哮】を使用していないにも関わらず、魔王にダメージが入る。
「アルカ殿!!」
極が地上からアルカへと叫ぶ。手には札を持っている。
「これ使え!!」
極は1枚の札をアルカへ向けて、手裏剣のように投げた。アルカはそれを受け取る。受け取った札には【スキル分身の術】と書かれていた。
効果はその名の通り、発動中のスキルをもう一度使用出来るというものである。以前、タッグバトルで使用した札である。
「極!! 使わせてもらうぜ!!」
アルカは札を空中にスキャンした。これで今発動している【第一の瞳】を使用可能である。
本来であれば、【第一の瞳】はプレイヤー相手にしか発動出来ない。
「だが!! プレイヤーを二人装備する事により、【第一の瞳】は、“覚醒”する!! 覚醒により、無機物を装備する事が可能となる!!」
「何だと!?」
「更に、装備対象が破壊されていたものだった場合、それを完全回復させる効果も加えられている!!」
アルカは、【第一の瞳】をスクラップとなった百舌鳥17を対象として発動させる。
百舌鳥17は、分離前のロボット形態へと戻り、アルカの腹部にくっつく形で装備される。
「そんな不格好な姿で我を倒せるものか!! 燃やし尽くしてやる!!」
魔王は、【黒炎】を使用しようとしたのだが……。
「スキルが発動しない……!?」
「残念だったでござるな!! もう、貴様のMPはとっくに0になっているでござる!!」
「何ぃ!!??」
地上に居る極が叫んだ。
なぜ魔王のMPが無くなっているのか?
その理由は簡単なものであった。
「拙者の妖刀、【冥王刀】の効果。持った者のMPを徐々に吸い取る!!」
そう、極は、魔王が巨大化した時を見計らって、足の指と指の間に刀を差し込んでいたのである。
「こ、この……小娘がぁ!!」
「アルカ殿……!! 決めてやれでござる!!」
アルカはサムズアップを極に向ける。
「ああ!! 見せてやる!! 俺達の力を!! そして新スキルを!!」
アルカは、たった今、新スキルを発現させていた。
その名は……。
「【第四の瞳-ダークネスブレイクバースト】!!!!!!!!!」
アルカの翼にある4つ目の瞳が開眼すると、ドス黒いオーラが勢いを増し、全身を包み込む。その後、アルカが右手の平をグイッと押し出すと、ドス黒いオーラが1つの球体へと圧縮され、発射される。
(あれを食らったらやばい……だが、そこまで早くない余裕でかわせる!!)
巨体を操作し、かわそうとした瞬間、膝を付いてしまう。
「あっ、脚が!!」
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
極が体全身を物凄い勢いで回転させながら、自慢の妖刀で、魔王の脚を切り刻んでいた。
あまりの速さにビュンビュンと風を切る音が聴こえる。
「サンキュー極!! これで確実に……当てられる!! いっけええええええええええええええええええええ!!」
「お、己!! 我は魔王だぞ!! ……我は不死身!! 不死身なり!!」
球体を食らった魔王の身体は徐々に崩壊をはじめ、光の粒子となっていく。
「【第四の瞳-ダークネスブレイクバースト】の効果……。この攻撃を食らった相手の残り体力の数値分、相手にダメージを与える……!!」
「我は不死身……我は永遠なり!! カカカカカカ!!!!!」
数秒後、魔王は叫びながら消滅していった。
「終わったな……」
アルカは空を見つめる。
その後、地面へ降りると、装備を解除し、キメラとカノンと百舌鳥17を解放する。
キメラは真っ先にアルカの元へ、カノンは真っ先に百舌鳥17の元へと向かった。
「アルカさん……やりましたね!!」
「ああ!! 俺達の完全勝利だ!!」
「そうですね……ってこれ第四層へ行く為のフロアボスですよね? すっかり忘れてましたけど、明らかに第五層レベルのボスでしたよ。何ですか!! 第三形態って!! いや、貴重な体験出来たから良かったですけど!! というか私も戦いたかったんですけど!!」
キメラが頬を膨らませる。直接戦闘を行えたアルカが羨ましかったのだ。
だが、数秒後、ニコリと微笑む。
「でも……ありがとうございます!! 倒してくれて!!」
「ああ!!」
二人が話していると、百舌鳥17を収納したカノンがやって来る。
「実に良かった。素晴らしい戦いぶりだったよ。だけどね? ……いや、言わないでおくよ、こうして彼は無事だったことだしさ」
彼とは百舌鳥17の事である。
もしも修復されていなかったら、何を言うつもりだったのかはカノンのみぞ知る。
「や、やったでござるな!!」
極が立ち上がり、アルカの元へと行く。どうやら先程まで目を回していたようである。
あれほどの回転をやってのけたのだ、無理は無い。
「ああ!! 極もありがとな!!」
「えへん! 火事場の馬鹿力って奴でござるよ!」
極が居なかったら、負けていたかもしれない。
いや、この戦い、誰か1人でも欠けていたら勝てなかっただろう。
皆が笑い合っていると、アルカ達が光に包まれる。
「ん? 何だ!?」
「第四層へと強制的に移動させられます!」
第四層は、第三層と同じ構造だが、禍々しさが無くなっている。
魔王を倒した後に強制的に移動させられるのは、魔王を倒して世界が平和になった事を演出したいが為である。
数秒後、第四層に4人は居た。
「おお! 空が青いぞ」
青空には鳥も飛んでおり、平和な雰囲気が漂っている。
「凄い充実感でござるな」
極も同じく空を見上げた。
「さて、無事世界を平和にしたみたいだから、私はロボット作成に専念するよ」
「えっ!? これゲームの話ですよ!? 会長、本来の目的忘れてません!?」
「胡蝶の夢って知ってるかい? 案外どっちが現実か何て分からないものだよ」
「会長……大丈夫ですか?」
カノンは、余程このゲームが気に入ったようである。
「さて……第四層へと来た事だし、またレベル上げしようかな?」
「拙者もそうするでござる!」
話していると、ミサキがやって来た。
「げっ! ミサキちゃん……」
「アルカさん!! 勝ち逃げはいけませんよ!! 勝負です!! 今日こそは私が勝ちます!!」
「きょ、今日は疲れてるから明日ね……」
「駄目です!!!!」
「に……逃げろー!!」
アルカは飛翔をし、ミサキから逃げる。
「降りてきてくださーい!!」
「ミサキちゃん、又にしませんか?」
「キメラさん!! 貴方のせいで負けたの、忘れてませんよ!」
「えぇ!? 私のせいですか!?」
アルカは、腕を組み、見下ろす。
(パーティ対抗トーナメント……初めから優勝狙いだったけど、正直優勝できるか不安な点もあった。けど、何とかなりそう、そんな気がするな)
アルカはそう思うと、今のうちにと思い、ログアウトボタンに手を伸ばしたのであった。
お読みいただきありがとうございます。
45話で、第一章を完結とさせていただきます。
皆様のブクマや評価が無ければ、おそらくここまで書けなかったと思います。
ここまで書かせていただき、本当にありがとうございました。
今後もお付き合い頂ければ、幸いです。




