44.合体
魔王幹部、通称四天王を討伐したアルカ一行。
4階へ足を進めるのだが、誰も居ない。フィールドはお菓子の家等が存在するメルヘンチックなものであった。
本来であれば、ここでペロリンとの対決が行われていたのだろうが、彼女が3階で討伐されてしまった今、ここにもう用は無い。
「うひょ~! 美味しいでござるよ! これ!」
「それ食べて大丈夫なのか?」
極がお菓子の家にかじりつき、笑みをこぼしていた。
「あ、確かに美味しいですよ!」
キメラも食していた。
毒が入っている等は無いが、同時に回復効果なども見込めなかった。
お菓子を堪能した4人は、最上階へと足を進める。
「ここが最上階……」
屋上で屋根も無い中に、いかにも王族が座るような椅子が設置されており、そこには全身漆黒の鎧のようなボディを持った【魔王】が座って居た。
「あいつら、死んだのか。まぁ良い、所詮は我の駒に過ぎない。仕方が無い、我が相手してやろう……来い!!」
魔王が立ち上がると、アルカの目の前に戦闘メンバーを選択してくださいとのメッセージが現れた。選択するのは、アルカとキメラである。
選択した後、他のメンバーはいつもの檻に閉じ込められる。
「キメラちゃん……行こう!!」
「はい! これが最終決戦です。後、攻略情報によりますと、どうやら第二形態まであるそうです。油断はせず行きましょう」
「分かった!」
キメラは、スキル【マジカルチェンジ】で変身すると、【光の波動】を連射した。
本来であれば、第二形態を持つ相手にいきなりスキルを連続で放ったりはしないのだが、魔法少女形態はMPを使用せずにスキルを使用出来るので、心配要らずである。
「光の力か……我が闇を食らうが良い……【闇の波動】」
漆黒のエネルギーの塊が分裂し、全ての【光の波動】により出現した光のエネルギーの塊とぶつかる。相殺されると思われたが、【闇の波動】の方が強力で、打ち消されてしまった。そして、そのまま【闇の波動】がアルカ達を襲う。
「そんなっ!」
「任せろ!!」
アルカは、スキル【咆哮】を発動させると、全ての【闇の波動】をそれで打ち消した。
「ほぅ……やるではないか」
「さっきから暴れられてなかったからな。派手に行くぜ」
アルカは、スキル【爆炎】を使用する。
炎の球体が魔王へと襲い掛かる。
「どうだ!」
「それをかわせないとでも?」
「何の為のパーティメンバーだ?」
「何……?」
キメラは魔王の背後へと回り込んでいた。
魔王の背中に飛び蹴りを放った後に、【光の波動】を放つ。それに背中を押されるように魔王の体は【爆炎】の方へと吹っ飛ばされる。
炎の球体は魔王に触れ爆発を起こす。それだけでは無い、【光の波動】も食らっている。
「おのれぇ!! 我を本気にさせた事を後悔するが良い!!」
魔王の4分の1程になったHPが全回復した。
「回復スキルか!?」
「違います! 第二形態が来ます!!」
「結構早いな」
「第二形態が本番とも言われているので油断は禁物です!」
魔王は口から漆黒のエネルギーを放出すると、それが己の身体を包み込んだ。
「カカ……カカカカ!! どうだ! 怖気付いたか!!」
魔王の身体は、アルカくらいの大きさになり、全身が漆黒でいかにも邪悪そうなドラゴン……
「って、俺のパクリじゃねぇか!!」
「丸パクリでは無いですが、確かに似てますね。でも翼にある瞳が無かったり目の色が違ったり結構違いますよ! あっ、私はアルカさんの方が格好良いと思いますよ!?」
キメラが必死にフォローを入れる。
「大丈夫だ! 気にしてない!」
「そ、そうですか!! では気を取り直して……スキル発動! 【プリズム】!!」
コウテツに使用したプリズムコンボを放とうとしたキメラであったが、出現した水晶玉は、魔王の拳により、すぐに破壊されてしまう。
そもそも【プリズム】スキル単品だと、水晶玉が受けた攻撃を複数の方向へ分散させるだけなので、微妙である。【ドームバリア】で相手を囲わなくてはこのコンボが成立しない上、ほぼ同時に【光の波動】を発動させなくてはならない為、タイミングがシビアなのである。それなのに出現した水晶玉を秒で破壊されては、論外である。
「カカカカカ!! 【捕食】!!」
魔王の口から触手が出現。
それらは、アルカへ襲い掛かる。
「くっ! ヌルヌルするぜ……」
触手に縛られ、身動きが取れないアルカ。
このままでは、文字通り【捕食】されてしまう。
だが、キメラは事前にその情報を仕入れてきた。
(【捕食】は、相手を吸収し、自らのステータスに捕食対象のステータスを上乗せする強力なスキルです。でも! それを使用している間、魔王は身動きが取れない。おまけにアルカさんの巨体を動かすのが困難でいます。やるなら今しかありません!!)
「はあああああああああああああ!!」
キメラは、叫ぶと空中に浮遊し、巨大な光の球体が、頭上にかかげた右手に生成される。
「本当は、パーティー対抗トーナメントでお披露目したかったんですが……仕方ありません!! 【高級光球】!!」
本来であれば、MPを消費しないでスキルを発動出来るのだが、このスキルは別だ。MPを普通に消費する。しかも大量に。おまけに溜め時間が長い。
キメラが魔王に向けて右手を降ろすと、それは発射される。
動きは遅いが、今の動けない魔王になら当たる可能性が高い。
「カーッ!! カカカ!! そうでなくては面白くない!!」
魔王は、アルカの拘束を解き、触手を収納する。
(スキルの中断!? これじゃ【高級光球】が当たらない……っ)
「貰った」
「しまった!?」
キメラの背後に回ると、【捕食】を発動させる。
キメラの身体に触手がまとわりつく。
「アルカさあああああああああああああん!!」
「キメラちゃん!!」
キメラは叫びながら魔王に【捕食】されてしまった。
「カカカカ……カーカッカッカッカ!! これが光の力!! 闇の力だけで無く……光の力をも得た我こそ無敵なり!!」
「くそっ! きったねぇぞ!!」
ここで本来ならば有り得ない現象が起こる。
「キョアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「気でも狂ったのか?」
魔王が急に奇声を発する。
すると、魔王の身体が発光する。
「我……第三形態へ……移行する」
「何だって!?」
今までも魔王に挑んだプレイヤーは多く居たであろう。
しかし、第二形態を倒せばそれで終了だったのである。
それがあろうことか、第三形態への変身を始めようとしている。
「まずい!! 変身させてたまるか!! ここで潰す!! 【爆炎】!!」
アルカは、【爆炎】を放つ。第三形態移行中にHPを0にしてしまおうという作戦である。
しかし、ダメージは無い。
「くそっ 無敵か!?」
「カカカ!! 【捕食】した小娘の装備品の効果が効いてるぞい」
「あの指輪か……」
チェンジ保険リングは、変身中と変身後5秒後を無敵状態にする装備品である。
故に【爆炎】によるダメージは無かったのである。
「キョショャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアニョアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
魔王が叫ぶと、光と闇のオーラが魔王を包み込んだ。
そして、誕生した、混沌なる魔王が。
「……」
目つきが先程より鋭くなり、体半分が黄色、半分が漆黒のドラゴンが居た。
おまけに大きさも8m程の巨体となっている。
「完璧だ……完璧だ……キョアアアアアアアアアア!!」
(く、空気が重い……!!)
「どうした? 我が怖いか?」
「いや、ワクワクしてる……最高にな!!」
アルカは魔王の顔面へと近付くと、右拳でぶん殴る。
「確かに強力だが……今の我には通用せんぞ?」
魔王はハエを追い払うかのようにアルカを追い払った。
アルカは吹っ飛ばされる。
「!!」
吹っ飛ばされた先には仲間が檻から出た状態で居た。
「何で極達檻から出ているんだ?」
おそらく、レイドバトル扱いとなったのであろう。
「分からないね……でもどちらにしろ、百舌鳥17が故障している今、私のステータスでは足手まといになってしまいそうだ、すまない……が力を貸す事は出来る。百舌鳥17!! 起動!! そして分離!!」
故障はしているようだが、最低限は動けるらしく、分離をはじめた。
「向こうが合体したならこっちも合体だ!! アルカ君!! 飛べ!!」
「ん? 分かった!!」
アルカは飛行をすると、分離した百舌鳥17がアルカの腕、脚、胴体、腰、翼、頭に装備された。それにより、まるで機械の龍のような外見となった。
アルカは力がみなぎるのを感じていた。
「負ける気がしねぇ!!」
アルカは、自らの上昇した力を感じると、ニヤリとした。




