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42.陰陽師vsカードゲーマー

 四天王の一人目を無事倒したアルカ。

 次の戦いの為、上の階層へと足を進める。

 上へは階段で行けるようになっており、道中にモンスターも居ない。その為、只々、無駄に長い階段を登る事となる。

 しばらく進むと2階へと到着した。どうやらここで四天王の二人目と戦う事となるようだ。

 1階は、いかにも魔王の城の内部といった見た目のフロアだったのだが、2階は、森のエリアをそのままコピーしたかのようなエリアが広がっていた。

 一見すると、魔王城の内部に収まらないような広さであったが、ゲームなので問題無い。


「あれは……?」


 切り株を椅子のようにして座っている黒髪ロングの女性が居た。

 空を眺めている瞳は穏やかで、とても魔王幹部とは思えなかった。


「ようこそ、……私が二人目の魔王幹部【サヤカ】です。ここに来たという事は、【ヒョヒョマル】を倒したのですね。おめでとうございます」

「おめでとうって……」


 自身の仲間が倒されておめでとうと言えるのはかなり冷酷なキャラなのかもしれないとアルカは密かに思ったのであった。


「誰が行く?」


 アルカは、仲間へと振り向き、尋ねた。

 すると、極がアルカへ向けて、一歩前へと踏み出した。


「“あれ”は、刀でござるな? 拙者が行くでござるよ」


 極は、サヤカの腰の刀を見た。

 同じ武器を使うもの同士、戦おうと思ったのかもしれない。

 仲間達も反対意見は無いようで、そのまま極が戦う事へと決まった。


「貴方が私の相手ですね。うん、刀か……へぇ、私も刀を使うんですよ」


 サヤカはニコリと笑うと、腰から刀を抜く。

 極も刀を抜くと、二人の刀はぶつかり合う。


「穏やかそうに見えて随分と動きが速いでござるな!!」

「ありがとうございます」


 二人は、ぶつかり、離れるを数回繰り返す。

 刃と刃のぶつかり合う音が何回も聴こえる。

 動きは互角と言ってもいいくらいであったが、武器についてはサヤカの方が強かった。

 そもそも極の使用する武器は、【侍の刀・改】であり、初期武器より1ランク上の強さくらいしか無い。極のレベルであれば、もっと強い武器を使うものだが、プレイヤースキルを磨く事に重点を置いていたので、武器の強化を積極的に行って来なかったのである。


(そろそろ行くでござるか……)


 極は、デッキケースへと手を伸ばす。札を使用するつもりだ。


「させませんよ」

「なっ!」


 極のする事がまるで分かっていたかのように札を取ろうとする極の手を狙う。

 【札】は、ユニーク職業【陰陽師】により、スキルを使用するのに必要となったアイテムである。この札を使用しなくては、スキルを発動出来ない。代わりにMPは消費しないがデッキケースから取り出して使用しなくてはならない。

 ユニーク職業を初見で理解していたサヤカは一体何者なのだろうか?


「お主……【陰陽師】を知っているな?」

「どうでしょう?」


 サヤカは再びニコリと笑った。


「私も似たような職業を持っているんですよ。ユニーク職業【カードゲーマー】を」

「四天王なのに職業を持っているのでござるか……しかもユニーク職業」

「初めに言っておきますが、【カードゲーマー】は陰陽師と違ってデッキケースからカードを手で取り出す必要がありません」

「んなっ!! それ拙者も欲しいでござる!! 寄こせぇぇぇ!!」


「大丈夫ですよ。【陰陽師】から進化出来るように設定してありますから」

「そうなの!!??」


 極はオーバーリアクションを取り、相手を油断させると、その隙に札を取り出す。


「スキル発動! 【勇敢なる魂】!! このスキルの効果により、10秒間自分は無敵状態となる!! 許せサヤカ!!」


 極がサヤカに向けて刀を突き刺そうとする。

 サヤカは極を斬り付けるがダメージは無い。


「ずっと拙者のターン!!」

「くっ!」


 連続でサヤカを斬り付ける。

 サヤカは極の攻撃により、のけぞり、反撃できないでいる。


「どうでござるか……あっ」


 10秒が終了した途端、極は吹っ飛ぶ。

 【勇敢なる魂】は、10秒間の間に蓄積されたダメージをスキルが解除された瞬間に受けるのが難点である。


「やばいでござるよ……」

我武者羅がむしゃらに迫って来るその戦い方、嫌いじゃ無いですよ」


 アルカのHPは、最大HPから見て半分も削られてしまっている。

 対してサヤカのHPは、まだ半分以上残っている。


「次は私の番です」


 サヤカの目の前にカードが浮かび上がる。


「スキル発動【回復封じ】。これにより、元より使用不能な回復アイテムに加え、スキルでの回復も行えなくなります」


 サヤカが攻めると、またしても刀同士がぶつかり合う。


「スキル発動【相子あいこ破り】。武器同士がぶつかりあった時、相手をのけぞらせます」

「そんなっ……」


 サヤカのスキルは強力だった。

 追撃を受けた極の残り体力は風前の灯火となってしまう。


「貴方は良くやった方ですよ。本来の四天王相手でしたら倒せていたと思います」

「本来の……?」

「お喋りはここまでにしておきましょう。安心してください。貴方が負けても別なパーティーメンバーが挑戦できますから」


 極はニヤリと笑う。


「油断は禁物でござるよ?」

「油断? そんなものしてませんよ」


 極の斬撃を刀で防ぐ。

 だが、本命は違ったようだ。


「ふんっ!」


 極は、刀を持っていない右手で腹パンを行った。

 そして、すかさず左手の刀を手放し、左手で同じ個所に腹パンを行った。


「ぐはっ!!」


 このゲームでの痛みの最大値は足の小指をタンスでぶつけたくらいである。

 しかし、それでも十分な程である。

 腹を連続で殴られるのは恐らく慣れていないのだろう。

 サヤカは、目を見開き、刀を落としてしまう。


「貰ったでござる!」


 極はサヤカの落とした刀を拾うとそれを持つ。


「私の妖刀【冥王刀ネプチューンブレイド】がっ……」


 サヤカの持つ妖刀は持った者のMPを吸い取る効果を持っている。

 しかし、【カードゲーマー】や【陰陽師】といった、MPが関係無い職業に関しては、デメリットが無い。


「そろそろ終わりでござる!!」


 極は妖刀で斬り付けようとするが、サヤカが再びスキルを発動させる。


「スキル発動【勇敢なる魂】」


 極が先程しようしたものと同じスキルを発動させるサヤカ。

 更に続けて、スキルを発動させる。

 そのスキルとは……。


「【ストレージアウト】……一定時間、相手のアイテムを全て、消滅させます。よって、貴方はもうスキルを発動出来ません。確かにその妖刀は強力ですが、これで状況は一方的にスキルを発動出来る私の方が上です」


 サヤカは更に攻撃魔法系スキル、【ウインドカッター】を発動させる。

 このスキルは、複数の風のカッターを発射する攻撃系スキルである。

 これがヒットすれば、極の体力は0である。

 スキルも使用出来ないこの状況を彼女はどう乗り越えるのであろうか?


(確かに……スキルも使えない状況であれをかわすのはかなり不利……しかし!! 拙者はこの日の為に特訓を重ねて来たのでござるよ!!)

「【ウインドカッター】を避けてる……!?」

「これで終わりでござる!!」


 極は妖刀をブーメランのようにぶん投げると、一撃目がサヤカにヒットする。

 そして、戻ってきた刀がサヤカの背中に突き刺さる。


「ふにゃあああああああああああああああ!!!!」


 上記のように叫びながら極は、全力で走り、そのままサヤカの顔面を思いきりぶん殴った。

 ……そして、それと同時にサヤカの発動した【勇敢なる魂】の時間はきれる。

 吹っ飛びながらサヤカはニコリと笑う。


「………素晴らしい戦いぶりです、楽しかったですよ」


 蓄積ダメージにより、サヤカのHPが0となる……が消滅はしなかった。

 サヤカは起き上がると極の方へと近寄って来る。


「ふ、不死身でござるか!?」

「違います……私は貴方に倒されました。先程も言いましたが、私は本来の四天王ではありません。このゲームの運営の1人です。サプライズとして四天王の代わりを務めさせていただきました。世界観をぶち壊して申し訳ありませんが、どうしても伝えたい事がありますので」

「う、運営!? せ、せ、せ、拙者は見抜いていたでござるよ? それより伝えたい事というのは?」


 極の目が泳いでいる。


「ふふ……実は言うと【陰陽師】をこのゲームに組み込んだのは、私何です」

「何と!!」

「貴方みたいなプレイヤーの手に渡ったのが知れて、私嬉しいです」

「う、うへへ……照れるでござるな」

「これからも……【GWO】を宜しくお願い致しますね。ドロップした宝箱から出た武器、貴方ならきっと使いこなせる筈です。受け取ってください」


 極が頷くと、笑顔を見せたままサヤカは粒子となり消滅した。


「……確かに受け取ったでござるよ」


 極はドロップした宝箱から妖刀【冥王刀ネプチューンブレイド】を取り出すと、装備し、腰に取り付けた。

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