39.百舌鳥17
時は経ち、日曜日。
「今日で5月も最後でござるな」
第三層の冒険者ギルドを待ち合わせ場所とした。
極は一足早く来ていたようで、アルカと他愛もない話を繰り広げていた。
「そうだな。明日から6月か……俺暑いのは苦手だな……」
二人が話していると、二人組の少女入り口から入って来た。
キメラとカノンである。
「お待たせしました」
「今日は遅刻してない。流石、私だ」
何故かドヤ顔をするカノンであった。
「おっ、早くも全員集合だな」
集合時間の5分前に全員が集合した。
皆、やる気満々なのであろう。
「ふっふっふ……私の才能に嫉妬する時が来たぞ、皆の者」
「ど、どうしたのカノンちゃん」
右手で顔を覆い、ニヤリとするカノン。
「会長、ロボットが作れたようでご機嫌何です」
「なるほど」
普段は冷静だが、ロボットの事となるとカノンはテンションが上がってしまうのだ。
「じゃあ、皆! 今日は魔王を倒すぞ!」
アルカは、右手を上に突き出し、叫んだ。
他の3人もそれに続く。
「ここだ。ここの突破が1人だと難しいんだ」
ダークゴブリンの群れが居るエリアへと来た。
相変わらず、VRゲームという事を忘れるような迫力である。
「うわぁ……あの群れに襲われたら精神的にもヤバそうですね」
「キメラ君、確か君の情報では、魔王城から遠回りして遺跡最深部のスイッチを押せば、ブラックゴブリン君は消滅するんだったね?」
「はい。まずここを突破するのはお勧め出来ません」
「だろうね。アルカ君……行けるか?」
カノンはアルカに目で合図をする。
「ああ! 4人も居るんだ! ここを突破するぞ!」
「ふ、二人とも正気ですか!?」
キメラがあたふたする。
(そうだ! 極ちゃんなら!)
キメラは後ろに居る極を見たが、何やら顎に手を当ててニヤついている。
「かわいそうでござるが……ブラックゴブリン殿にはここで散ってもらうでござる!!」
「極ちゃんも!?」
「勿論でござる。キメラ殿……確かに不安になる気持ちは分かるでござる。しかし、安心するでござる!」
「安心……?」
「拙者達の力を合わせれば、決して不可能では無いでござる!」
極は腰の刀を引き抜く。
「良く言った! ……では、アルカ君! 指揮を!」
「皆! とりあえずブラックゴブリンに攻撃の隙をあまり与えないようにするんだ。ずっと俺達のターン作戦開始!」
アルカが宣言すると各々が戦闘態勢に移る。
「仕方ないです。変身!」
【マジカルチェンジ】を使用し、魔法少女となるキメラ。
「一気に行くでござるよ」
左手で刀、右手でいくつかの【札】を持つ極。
そして……。
「【百舌鳥17】……起動!!」
2m程と、戦闘用ロボットにしては小型サイズのロボットが出現する。
☆
【百舌鳥17(じゅうなな)】:
細いシルエットで、巨大な鳥のクチバシのような物を携えた頭部が特徴的。
カラーは、黄緑色を基調としている。
飛行機能を携えており、翼を展開し、飛行を行う事が可能。
☆
「とうっ!」
カノンは、百舌鳥17へと乗り込む。
「ヘェーイ!! 行くよ!! そうだ忘れてた……アルカ君! これ、使え!!」
何かをアルカに投げ付ける百舌鳥17。
「こ、これは……クリスタルブレード!! 助かる!!」
アルカは、クリスタルブレードを装備する。
カノンに修理を依頼していたのだ。
左腕が以前と変わらないクリスタルブレードへと変化する。
「皆! 攻め込むぞ!」
4人は、一斉にブラックゴブリンの群れに突っ込む。
「心なしか以前より軽い」
アルカは、クリスタルブレードを振るいながら、そう思った。
カノンが修理する際に改良をしてくれたようだ。
「ギィィィィ」
ブラックゴブリンが次々と撃破されていく。
だが、数はまだまだ多い。
「数が多すぎます……」
「キメラ君!」
キメラの背後にブラックゴブリンが迫ったのを見て、百舌鳥17を操作し、ブラックゴブリンを撃破する。
百舌鳥17の右手には、リボルバー式の拳銃が握られていた。
サイズは、人間サイズでは無く、百舌鳥17に合わせた大きさとなっている。
「ありがとうございます!」
「気にするな! お楽しみはこれからだからね!」
戦闘を繰り広げ、時間が経つと、ブラックゴブリンの数は半分程へと減っていた。
「よし! 倒すのはこれくらいにして……一気に進むぞ! 魔王城へ!!」
あくまで目撃は、ブラックゴブリンの群れを壊滅させる事では無い。このエリアを突破する事である。
極はアルカの背に乗り、キメラは百舌鳥17の背中に乗る。
上空へと飛行する事は不可能だが、低空であれば飛行する事は可能なエリアだ。
アルカと百舌鳥17は、真っ直ぐに低空飛行する。
「よし、追って来ないな」
ブラックゴブリンの群れが追って来ない。
どうやら、彼らのエリアから離れられたようだ。
「た、助かりました」
アルカと百舌鳥17の背中から二人は降りる。
「良くやったぞ百舌鳥17」
キメラは百舌鳥17から降りると大きく背伸びをする。
「それがカノンちゃんのロボットか」
「良いだろう? とは言っても、まだまだ未完成だけどね」
カノンは腰に手を当て、エヘンと得意げに言い放った。




