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38.ゴブリンの群れに喧嘩を売るドラゴン

 平原の草は灰色に染まっている。これも魔王の支配力によるものだろうと考えられる。

 だが、その暗さとは対照的に、楽しんでプレイしているプレイヤーが多いのであった。


「それにしても暗い場所だな」


 魔王の支配下にある層に対して、率直な感想を述べた。

 今回のメインの目的は、レベル上げである。という事でアルカは、灰色に染まったスライムを討伐し、レベルを上げる事にした。

 名は【グレースライム】。水色のスライムが魔王の影響により、強化されたという設定だ。


「こいつ、物理攻撃が効かないのか」


 グレースライムには、物理攻撃が通用しない。よって【爆炎】、【咆哮】を使用するしか無いのであった。


「MP回復するアイテムもっと持って来れば良かったな……」


 MPに関しては、割と並のステータスのアルカは、自身のストレージにあるMP回復アイテム【マジックポーション】を確認し、そう呟いた。


「行け! フレイムドラゴン!!」


 周囲を見ていると、職業【テイマー】のプレイヤーが多いと気が付く。

 テイムモンスターに戦闘を任せれば、自身のMPを消費しなくて済むからである。


「テイマーか、やっぱり人気が高いんだな」


 【テイマー】は、人気職業の1つである。理由は様々であるが、強いモンスターをテイム出来れば、ゲームが下手でも割と戦えるという点から、手を出しやすいというのも理由の1つである。


「おっ、強そうなモンスターを発見……ってプレイヤーか」

「紛らわしくて悪いな」


 美少女コンテスト優勝で有名になったと言っても、全てのプレイヤーがそれを知る訳では無い。


「とりあえず、進んでみるか。このままだとMPが無くなってしまう」


 今の状態でレベル上げをするのは、正直な所キツイ。

 MPが無くなってしまえば、グレースライムへの対抗手段を失ってしまうからである。


 アルカがしばらく進むと、黒いゴブリンである、ブラックゴブリンが大勢居た。100匹くらいである。

 彼らは、魔王城へプレイヤーが侵入しないようにと、見張りの役割も兼ねている。


「数が多いな……問題はブラックゴブリンのステータスだけど……」


 アルカは、ここで出ていき暴れるかどうか迷っている。

 ブラックゴブリンが弱いモンスターであるならば、良いだろう。しかし、そこそこのステータスを持っていた場合は逆に倒されてしまうだろう。

 おまけにこの数だ。戦闘で倒すのが正攻法でない可能性もある。


「あっ、飛べばいいじゃん」


 アルカは、翼を広げ、魔王城へと飛ぼうと試みたがそれは失敗に終わってしまった。

 見えない壁により、ジャンプ出来る距離以上は飛行出来ない。故にここを突破する以外あり得ない。


「成程……なら、一発試してみるか」


 アルカは、スキル【爆炎】を使用する。

 炎の球体がゴブリンの群れへと飛んでいき、爆発する。


「ギィィィ」


 攻撃を受けた中でも生き残っているゴブリンとそうでないゴブリンが居た。

 どうやら、個体差があるようだ。


「あっ、やばっ」


 アルカが攻撃した事により、居場所がバレてしまった。

 ゴブリンの一体がアルカを指差すと群れ全体がアルカの方へと走ってくる。

 VRゲームでゴブリンの大群に追いかけられるのは中々に恐怖である。


「だが、エクシードゴブリンの不気味さに比べれば何て事無い!」


 アルカは、エクシードゴブリンを思い浮かべるとブラックゴブリンが可愛く思えてきた。

 だが、やはり数の暴力とも言える迫力には敵わず、逃げるアルカなのであった。


「ん?」


 ある程度離れた所で、ブラックゴブリンの群れがこちらへ来れない事に気が付く。

 まるで見えない壁に阻まれているようだ。

 おそらく、ある程度エリアが離れるとそれ以上は追って来れないように設定されているようだ。

 アルカは、ニヤリとし安全圏から【爆炎】を使用するが、ブラックゴブリン達にダメージは入らない。

 安全圏からの攻撃は無効となるようだ。


「駄目か……ま、それはそうか。とりあえず平日は長い事ログイン出来ないし、第二層辺りでボチボチレベル上げをするか……」


 そう呟き、第二層へと向かい、弱モンスター相手にレベル上げをするのであった。





☆キメラ&カノンサイド


 平日の昼休み、他に誰も居ない屋上で昼食を取る二人が居た。


「それにしても良かったね、キメラ君。協力者が見つかって」

「そうですね……って学校内でキャラクターネームで呼ばないでくださいよ」

「ははっ! 相変わらず君は面白い人だ」


 何が面白いのか分からないが、ポケットから透明の水晶を取り出すと、それ越しでキメラ……否、雲英きら 来夢らいむを見る。


(相変わらず会長の考えてる事を読み取るのは難しいな……)

「まっ、それは置いといて、中々面白いメンバーが集まったね。アルカ君に極君、どちらも非常にユニークな存在だ。そうは思わないかね?」


 水晶をポケットにしまうと、雲英の昼食であるツナサンドを勝手に取り、それを食べながら問う。


「そうですね。特にアルカさんは、唯一無二のアバターって感じですね」

「ふふっ、本当に人に恵まれてるよ、君は。最も君という存在が人として魅力的だからそういった人達が周りに集まるんだろうね」


 ツナサンドを食べ終えたので、同じく雲英の卵サンドを頂く。


「そ、そうですか/// ちょっと照れちゃいます」

「ま、それは置いといて」

「え?」

「優勝出来るかな? 【パーティ対抗トーナメント】」

「優勝するしかないですよ!」

「流石だ。私もそのつもりだよ。だが、どうやら面白い知らせを耳に挟んでね」


 会長がニヤリとし、横目で雲英を見る。


「ゲーム部を潰す為に、何やらトーナメントに出場するみたいだよ、”あの人達”」

「そうですか……何が面白いのか分かりませんが、そうなると大変ですね。勝つ為には、手段を選ばなそうですから」

「安心するが良い、ルールは守るだろう。だが、君の言う通りルールの範囲内では、徹底して勝ちに来る事だろう」

「そ、そうですか……」

「ま、心配してても仕方ない。幸い、私達には時間がある。そこでレベルアップなり何なりするしか無いだろう? 勝ち続けるしか道は無いのだよ。くっくっく!」

(会長楽しそうだな……)


 会長は鞄から弁当を取り出す。


「取り合えずリアルは大事だ。昼休みが終わる前に昼食を食べ終えるとしようか……って!!??」


 会長が雲英の昼食を見て驚く。


「雲英君のサンドイッチが何者かに食されている……私の弁当をあげよう」

「あ、ありがとうございます(何だこの人)」


 こうして、またしてもライバルが増えるのであった。

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