37.追放体験イベントでハズレスキルを入手する
食事を終えた後、一時解散とし、カノンと共に【小型ロボット作成キット】を購入しに向かう。
アルカは、それが売っているとされる、第二層の店へと案内される。
「これだよ。これ」
「結構高いな……」
思っていた以上の金額であった。
アルカは、価格にビビったが、お気に入りのクリスタルブレードを修復してもらえるという事で、【小型ロボット作成キット】を購入する事にした。
「ありがとう。これで私は思う存分、開発に専念できるという訳だ」
カノンは、笑顔になる。
巨大ではないとはいえ、自由にロボットを作成する事が出来るようになり、嬉しいのだろう。
「ちなみにどんなロボットを作るんだ?」
「人型ロボットを作る予定だよ。飛行機能を携え、機動力に重点置いたロボットにする予定だ」
「成程」
今まで、アルカの戦闘を見て、そのような機体を開発する事に決めたらしい。
「私は、【マイホーム】へ行って早速開発に取り掛かるとするよ、あっ、その前にアルカ君の武器を直さなくてはだね」
「頼んだぜ」
「ああ、壊れる前以上の性能にしてあげよう」
「程ほどにね……」
カノンは、ニヤニヤとする。
どうやら、クリスタルブレードを、修復と共に改良しようとしているようだ。
カノンは、メニュー画面を開き、そこから【マイホーム】を選択するとその場から消失する。
「さて、俺はどうするかな」
アルカは悩んだ末、第三層の下見を兼ねて、そこでレベル上げを行う事にした。
メニュー画面から、層移動を選択し、第三層へとワープする。
GWOは、一度行った層であれば、メニュー画面からその層の拠点の街へとワープ出来るのである。
「ん?」
第三層にて、多くのプレイヤーが並んでいる施設を発見する。
一体何の施設なのだろうか?
「これって何の行列ですか?」
「今、ゲリラで【ハズレスキル屋】がオープンしているわ」
「【ハズレスキル屋】……?」
「ええ、貴方のアバターもレアだけど、【ハズレスキル屋】がオープンするのって本当にレアなの。しかも、毎回何処に現れるかも分からないわ」
だが、【ハズレスキル屋】というからには、文字通りハズレスキルを扱っているはずだ。それなのに、なぜここまで人気なのだろうか?
「あっ! ハズレスキルって言っても本当のハズレスキルじゃないわよ! 一見すると弱いけど、工夫をすると強いスキル、又は使い続けると進化して強スキルに進化するスキルを授かれるわ。ランダムだけどね」
「そういう系ですか。ありがとうございます。俺も挑戦してみます」
アルカは、行列に並んだ。
ゲーム内なので、行列の進みは早かった。それでも20分は待ったが……。
「よし、俺の番か! 良いスキルをゲットするぞ」
アルカがそう意気込んだ瞬間、別なエリアへと飛ばされた。
(? ここ何処だ?)
王宮の中のような場所に居た。
「アルカ、次だ」
「へ?」
王の冠を被ったおじいさんに名前を呼ばれる。
「頼むぞ。お前なら心配要らないと思うが……絶対に強スキルを授かるのだぞ」
「ハズレスキルじゃないのか?」
いきなりの事でアルカは困惑していた。
「どうした? 我が一族は代々、強スキルを授かっておる、もっと自信を持て!」
「は、はぁ」
どうやらこういうイベントのようだ。
アルカも何となく理解した。
アルカは、前に出て水晶玉に触れる。これに触れる事でスキルを授かれるようだ。
結果、目の前のウインドウには、【装備破壊】と表示された。
【装備破壊】:
自身に装備されている装備品を破壊する。
「なっ、何と!?」
王冠のおじいさん……おそらく王様は目を見開く。
「こっ、この一族の恥さらしが!! スキル取得のチャンスは一度しか無いのだぞ……それなのにこんなスキルを引きおって! お前などここから出て行け!」
「出ていくも何も……」
「出て行かないのか? それならここで始末してやるわい! やれ! 兵士共!」
兵士がわらわらと出てきた。
「経験値ゲットだ」
アルカは、スキル【爆炎】を発動させる。
「ぐああああああああ!!」
「何だこれは?」
周囲に【爆炎】を乱射するアルカ。
それにより、数々のNPCと思われる兵士が粒子となり消滅していく。
「お、おのれぇ……」
「【爆炎】!!」
王様をアルカは攻撃した。
結果、一発で消滅させる。
「ふぅ……」
気が付くと、アルカは元のエリア、即ちハズレスキル屋の目の前に戻っていた。
「何だったんだ……今のイベントは……」
あのイベントはアルカ以外でなくとも、ハズレスキル屋でスキルを授かる際に強制的に起こるイベントである。割と人気のようだ。
「まぁいいか、俺にとっては相性の良いスキルをゲット出来たし」
装備を破壊出来るという事は、【第一の瞳】で装備→破壊というコンボが行えるという事だ。連発は出来ないだろうが、相手を捕まえれば確実に倒せるという点から、彼にとっては、当たりスキルだろう。
「さて、これだけの人数がなんちゃってハズレスキルを入手するんだ。ライバルが増えるのは避けられないな」
アルカはそう言うと、拠点の街を出発し、平原に出る。




