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エピローグ【side:西暦】

(あ、あれ?)


 極は、アルカから放たれた【強制ログアウトスラッシュ】を受けた。

 そして今、極……いや、双葉フタバ七我流ナガレはどうなったのかというと……。


「ここは……私の家だ」


 自分の部屋のベッドに仰向けで寝ていた。

 いつもの制服姿だ。


「良かった……ログアウトに成功できたんだ」


 ナガレは自身の手をニギニギとし、確かにログアウトできた事を確認する。

 だが……。


「何だろう、この違和感は……」


 確かに自分の部屋だ。

 それなのに、なぜか違和感がある。

 なぜだろうか?


「とりあえず、クロアちゃんの所に行こう。クロアちゃんもログアウトしてる筈だし」


 不安になったナガレは、槍崎ヤリザキ黒亜クロアの家へと向かう。

 幸い家は近いので、徒歩で行ける。


 そしてやはり感じる。

 何だろうか、この違和感は。

 ナガレは不安になり、走った。


 ナガレは、クロアの家の前にまで来る。

 そして、インターホンを押そうとすると、見知らぬ女性に話しかけられる。


「あら? 私の家に何か用かしら?」


 ギターケースを携えている、綺麗な人であった。

 身長も高く、モデルのようだ。


「えっと……? クロアちゃんのお姉さんですか?」


 確か、クロアは姉がいなかった筈だ。

 だが、彼女にどことなく似ていた。

 成長したらこのような感じになりそうだ。

 少し美人過ぎるが。


「え?」


 ナガレの顔を見た途端、その女性は目を丸くする。

 まるで、信じられないものを見るかのように。


「ナガレ……?」

「あ、はい。そうですけど……」


 別に嫌ではないのだが、いきなり呼び捨てにされてビックリした。

 ナガレとこの女性は初対面だ、無理もない事だろう。


「ナガレ……! あんた!!」

「えっ!?」


 女性がナガレを抱きしめる。


「生きていたのね! 良かった……!」


 その女性は泣きながら、そう言った。


「どういう事ですか?」

「私の事が分からない……? 私よ、槍崎黒亜よ」

「へ?」


 クロアはナガレと同じ中学2年生だ。

 だが、どう見てもナガレの目の前の女性は中学2年生ではない。


「あ、あははは……えーと、クロアちゃんのお姉さん、面白いですね?」


 涙を流している女性であったが、どうしても信用できない。


「冗談じゃないわ。ごめんね、いきなりこんな事言って。とりあえず、上がって」

「あ、はい」


 言われるまま、槍崎家に上がり込んだ。

 そして、クロアの部屋に招かれた。


(あれ? クロアちゃんの部屋イメチェンした?)


 言われるがまま、ナガレは座った。

 その後、女性はオレンジジュースを2つ持ってくる。


「どこから話せばいいのかしら……」


 女性はナガレの隣に座る。


「どこからというのは……」

「そのままの意味よ。本当は私からも聞きたい事は山ほどあるんだけどねぇ。流石にいきなりの質問責めは、ナガレのメンタルに悪影響を及ぼすわ。とりあえず、カレンダーを見て頂戴ちょうだい

「カレンダー?」


 卓上カレンダーを机の上に置かれる。

 そして、そこには信じられない数字が書かれていた。


「2023!? 西暦2023年!?」


 そう、確かに2023年と書かれているのだ。

 最後にガールズワールドオンラインにログインした時は、2009年だった筈だ。


(もしかして……)


 ナガレは先程からの違和感の正体に気が付く。


「もしかして……今は2023年?」


 ナガレは女性の方を向く。


「そうよ。信じられないかもしれないけど、今は2023年。そして私は、28歳の槍崎黒亜よ」

「は、はは……え? 本当?」

「本当よ。そしてあんたは、この10数年間、行方不明扱いだったわ」

「行方不明!? ど、どうして?」

「私が聞きたいわよ」


 クロアは自身がログアウトした後、どうなったかを語り始めた。


「あの後、私は普通にログアウトしたわ。あの時は【ワールド】内の時間が加速されていたって事もあって、ログインしてからほとんど時間が経過していなかったわ」


 その後、クロアはナガレの家に走ったという。


「あんたも確か、自室からログインしてたわよね?」

「う、うん」

「それなのに、居なかったのよ」

「居なかった!?」


 確かにベッドに寝ていた筈だ。


「その後は警察に捜索願も出したわ。けど、どこを探しても見つからなかった。私もナガレの親や親戚、先生達までもが協力して探したけど、見つからなかったわ」

「ごめん……」

「あんたのせいじゃないから気にする事無いわよ! って言ってあげたいけど、ナガレの親の事も考えると、そうは言えないわねぇ」

「うぅ……ごめん」


 おそらく、かなり心配をかけただろう。

 ここまで長年行方不明だと、死んでいると思われているかもしれない。

 本当に、申し訳ないと、ナガレは思うのであった。


「あっ、そうだ! 【ワールド】はどうなったの!?」


 アルカ達の世界は本当に神達の【世界確立法】に守られ、異世界扱いとなったのだろうか?

 そこに関しても心配だった。


「あの後、エンジョウさんと連絡を取ったんだけどね。【ワールド】全てのデータが跡形もなく消えていたらしいわ。カイゾウさんは消して無いってさ」

「じゃ、じゃあ!」

「きっと、今も元気でやってると思うわ。正直、私としてはナガレの方が心配だったけど」

「本当にごめん……。私の方からも、あの後どうしたか言うね」


 ナガレはあの後の事を語った。

 アルカと戦った事、時間が過ぎてしまい、アルカのスキルで強制的にログアウトさせられた事……全て話した。


「要するに、世界のバグね?」

「世界のバグ?」

「要するに、女神様達によって別世界扱いになった世界に強制的に戻された。それにより、時空が乱れた……って何だかSFみたいね。でも、そうじゃないかって私は思う。そうじゃないと説明がつかないじゃない? だってナガレの身体、あの時から全然成長してないじゃない。多分、向こうの世界で日付が変わってから今の間、ナガレはこの世界にいなかったのよ。それがアルカのスキルによって強引に出現させられた」

「な、なるほど。というか、クロアちゃんってそういう事に興味あったっけ?」

「それ関係は、色々と考えていたのよ。ナガレのせいね」


 行方不明となったナガレを探す為に、色々と勉強してくれたというのだろうか。

 だとしたら、本来のクロアの人生を壊してしまったという事になる。


「ナガレちゃん、ごめんね? 私のせいで、やりたい事もできないで……」

「え? 何でそうなるの? 私はやりたい事やったわよ? 例えばそう、今はギターにハマっているわ! 売れないミュージシャンよ!」

「ギター?」

「ええ。実はナガレが行方不明になった後、アニメを見てギターを始めたわ」


 クロアらしい。


「クロアちゃんってアニメとかの影響受けやすいよね」

「あの頃は子供だったからよ。今は違うわ!」

「本当に見違えたよ! 凄い美人なんだもん!」

「でしょう?」

「それにしても、凄いなぁ。2009年からずっと同じ事を続けてるだ何て……」


 夢中になれる事を見つけてくれて本当に良かった。

 もし違ったのならば、罪悪感のレベルが段違いだ。


「何言ってんの?」

「え?」

「中学の頃のギターは半年で辞めたわよ!」

「え?」


 クロアはなぜかドヤ顔だ。


「けどね、やっぱりミュージシャンになりたいなって、辞めた後思ったの……」

「クロアちゃん……」


 クロアがしんみりとした表情で言った。

 やはり、情熱は捨てきれなかったようだ。


「高校に入ってから、再開したんだね?」

「違うわ!」


 再びドヤ顔のクロア。


「3か月前に再開したわ!!」

「さ、3か月前……?」


 あまりにも年数が空き過ぎている。


「クロアちゃん……」


 おそらくまた、何かに影響でも受けたのだろう。

 クロアは昔からそういう所があった。


 でも、ナガレはそれが嬉しかった。

 ナガレは思わず涙をこぼす。


「クロアちゃん、変わってないね」

「あんたほどじゃないわ。まったく」


 話を戻す。

 ナガレは、まだまだ聞きたい事があるのだ。


「異世界に行く方法とかって、まだ確立されてない? 後、VRゲームの技術とか、AIの技術とかってどうなったの?」

「1つずつ答えるわね。異世界に行く方法だけど、残念ながらまだ確立されてないわ」

「そう、なんだ……」

「残念だけど、仕方ないわ。それで、VRゲームの技術だけど……それは普及しているわ。とは言っても、医療関係とかで、ご家庭にって訳にはいかないけど。そもそも、あんだけリアルな仮想世界なんてあったら、リア友もいらない、恋人も作らない人が大量に増えて社会問題になるわ」

「それは一部の人だけだと思うけどなぁ、よっぽどリアルが充実してない人以外は大丈夫だと思う」

「ま、そういう人は一杯いるわよ。で、AIの方なんだけど、これが大問題になったわ。勿論、私とカイゾウさんとエンジョウさんの間だけの話だけどね」


 あの後、クロアはカイゾウ、エンジョウと定期的に会っていたようだ。

 エンジョウにはガールズワールドオンライン内で話したが、カイゾウにも今回の一連の騒動の種明かしをすると……。


『何だとおおおおおおおおおおおおお!? だったらもう1回作るまで!! 私は全世界の神になるぞい!!』


 とか言って、再び【ワールド】を作ろうとしていたらしい。

 だが、エンジョウはそれを止めた。

 生殖以外の方法で“人間”を生み出すのは間違っている。

 そう考えていたそうだ。

 そう、エンジョウはAIも人間だという主張を認めたのだ。


 カイゾウにそれを作る能力は無いので、結局は諦めたらしい。

 【ワールド】の創造者も実質的はエンジョウなので、それもそうだろう。


「カイゾウさん、よく諦めたね」

「そういう能力が無いから仕方無いわよ。ちなみに今もブリリアントサイバーの表向きの社長をやっているわ。実質的には副社長のエンジョウさんが運営しているの」


 どうやら、経営する能力も無かったようだ。


「そういえば……カイゾウさんは、カケル君と同じDNAって言ってたよね。大丈夫かな?」

「そうね。でもまぁ、あいつは悪さしなかったから、今後も大丈夫だと思うわ」

「ううん。そうじゃなくて、今も元気かなって」


 ナガレから見て、カケルと言う人間は非常に壊れやすい人間と見ていた。

 心配なのだ、友達が壊れてしまわないかと。


「きっと元気よ。異世界扱いになって加速も解除されてるから、同じくらいの時間が進んでると思うわ。だから、お互い生きている間にまた、会えるわよ!」

「そうだね。そしたらまた皆でゲームしたいね」

「そうね……」


 向こうの時間の進み具合はこちらからは確認できない。

 もしかすると、1年たっただけかもしれないし、10数年たったかもしれない。

 とにかく、今確認するすべは無いのだ。


「それにしても、不思議な話だよね。未来人が女神様達を創造してただなんて」

「?……ああ、未来人が女神様達を創造して過去に送ったって話?」

「うん、女神様も自分で言ってたよね」

「その事だけどね、私色々考えてみたのよ。聞いてくれないかしら?」


 クロアは紙とペンを机に置いて説明する。


「過去・現在・未来があって、その未来から過去に女神様達を転送したって話だけど、どうも納得ができないのよね」


「どういう事?」


「いい? 未来から過去に送ったって事は、今この世界のこの現時点で、未来が確定されている必要があるのよ」


「未来が確定?」


「そうね。未来が今の時点でどんな未来か確定していなければ、そもそも未来なんてものは存在しないと思わない?」


「う~ん。どうだろう?」


「まぁ、話を進めるわよ。で……私は発想を逆転してみたのよ。どうすれば、今の時点で未来が存在する事になるかって事をね。例えを使って説明するわね。例えば1つの作品があるとするわ。その作品は主人公が勇者で、魔王を倒したらハッピーエンドで物語が終わるとするわ」


「シンプルだね」


「例えは分かりやすい方がいいのよ。で、その作品の最新話が現在と仮定するわ。この最新話……つまり現在の時点で、作者はその時点でその物語の未来を確定している訳」


「あっ! 勇者が魔王を倒すっていうのはその時点で決まってるって事だね!」


「流石私の親友だわ! そうなのよ! それなのよ! それを当てはめると、つまり、私達の人生は既に初めから終わりが、最初から決められているって事になるのよ!」


「それじゃあ、何をしても運命は変わらないって事? そもそも初めから人生は決められていたって……何か後ろ向きなような……」


「この仮説を当てはめるとそうなるわね。けど、本当にそうなるか、現在の段階では分からないのよ。現在の時点で未来が確定していたとしても、それは変わる可能性があるわ」


「え?」


「またさっきの物語で例えると、100話ある内の50話の時点で、作者の気が変わって、やっぱり“魔王を倒すのは辞めて最終的には和解させよう”ってなる可能性もある訳よ」


「つまり、その仮説で例えると、創造主の気まぐれで、私達の人生は幸せになったり不幸になったりするって事……?」


「そうなるわね。けどこれはあくまで未来というものが存在していたらって話。実際の所、未来何て決まってない方がいいに決まってるでしょ? それにその例えを使えば、世界の層は無限に存在している事になるわ」


「どういう事?」


「例えば私達の人生を決めている存在がいるとしたら、その私達の人生を決めている存在の人生を決めている存在も存在するだろうしって、無限になるわ」


「つまり、世界を創造している存在ってのは、終わりなく無限に存在するって事?」


「あくまでこの仮説を当てはめた場合はそうなるわね。けど、この仮説には悪い点だけじゃなくて、夢があるのよ。例えば私達の人生を決めた存在が天国ってものを創造した場合、死後も無じゃなく、天国で生きられるのよ。つまり、私達に決定権は無いけど、どんなあり得ないような出来事も起こる可能性があるって事」


「怖い事も……?」


「まぁ、そうなっちゃうわね。けど、私は専門家じゃないし、あくまで未来ってものが存在している場合の1つの仮説に過ぎないから、あんまり考え過ぎない事ね」


 クロアは立ち上がる。


「ナガレはとりえず、親が帰ってきたら、きちんと説明する事、いいわね?」

「信じてくれるかなぁ? 私、成長遅いし、嘘言ってるのかと思われちゃうかも……」


 ナガレは中学2年生にも関わらず、小学生のような見た目をしている。


「いや、流石に分かるわよ。流石に10数年経って、成長してなさすぎってレベルじゃないもの。けど、信じるのも難しいわよね……」


 クロアは腕を組んで悩むと、何かを閃いたようで、手の平に拳をポンと置く。


「分かったわ! じゃあ、私も一緒に行って説明してあげるわ! もう大人だからね! 私にドンと任せなさい!」

「クロアちゃん! ありがとう!! 大人だ!!」

「ふふん! 私は大人なのよ!! じゃあ久しぶりに勝負よ! 何にしようかしら? そうねぇ……あっ、今度平成から元号が変わるみたいだから、何になるか勝負よ!」


 いきなり指をビシッと突き付けられ、ビックリするナガレであったが、すぐに笑顔になる。


(大人な所は大人だけど、クロアちゃんは本当に変わってないなぁ。何だか嬉しい)


 これから先、どうなるかは分からない。

 しかし、きっと未来は決まっていない筈だ。

 だからこそ、アルカ達にもまた会える、そんな気がしている。


「それはそうと、あんたの戸籍上の年齢ってどうなるのかしらね? その身体で28歳は無理があるわよね」

「どうなるんだろう?」

「ま、戸籍上28歳だとしたら、付き合う相手はきっとロリコンしかいないわ」

「えぇ!?」

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

もし、このページから読もうという方も大歓迎です!


色々思考錯誤しながら書いた作品ですが、ここまで書ききれて本当に良かったです。

実は最初は、書籍化(!?)を狙っていた作品だったりします。

やばいですね、当時の私。


第一章とかは、ほのぼのVRゲームものとして書いてましたが、どうも私の脳味噌では力が足りなかったようで、二章から書きたいように書いてました。

ちなみに、第一章のあの内容で書籍化を狙っていました!

……やばいですね。


そんなやばい当作品ですが、お友達とかにお勧めしていただけますと、嬉しいです。

「どんな作品かを一言で言い表せなくて、中々人に勧められない」

と……私なら思いますが、是非色んな方に読んでいただきたいです。


最後に私の黒い思想をぶちまけます。


「ブックマーク枠の消費が気になる、またはアカウントをお持ちでない方は、ブラウザブックマーク等で読んで頂ければありがたいです!

評価に関しましてはいただけると大変嬉しいのですが、しなくても大丈夫です!

お気軽に閲覧ください!」


と、第一話の後書きに書きましたが。


本当は気に入って下さった方には、アカウントでブックマークして欲しいですし(!?)、失礼だとは思うのですが、読んでいただいた方からの評価も凄く欲しいですし(!?)、感想やレビューも凄く欲しいです(!?)

勿論、評価をしないのも評価の内なので、それもOKです。


書籍化狙わなくなってからは、ブクマ100あればいいと思ってましたが、100になったらなったで更なる欲求が生まれてしまいました。

やばいですね。


次回作はハイファンタジーの予定です。

多分やばいですが、見て頂けると嬉しいです。

とは言っても、リアルがやばいので、公開日は未定ですが……。


最後に、皆様大好きです。

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