エピローグ【side:漆歴】
漆歴2022年4月。
あの騒動が起きてから、約1か月半経とうとしていた。
「いらっしゃいませー」
現在、アルカのリアルであるカケルは何をしているかと言うと、コンビニで働いているようだ。
給料はそこまで多く無かったが、貯金額が多いのもあり、1人で生活するには申し分無かった。
カケル的には、金がかかるから、これからもリアルの友達や恋人はいいかな? とか、考えていた。
苦しい生活は強いられたくないのだ。
おまけに、ゲームの世界に行けば、食べ物も食べ放題だ。
正確にはゲーム内通貨である、ゴールドが無くてはならないのだが、それを稼ぐのも、【アルカ】というアバターの力を借りれば余裕であった。
そして、帰宅をすると、いつものようにガールズワールドオンラインへとログインする。
最早カケルの日課となっていた。
今日は人数が減り、寂しくなったクランホームへと足を運ぶ。
「誰も来てないか……まぁ、4月だしな」
極やクローはもういない。
その他のメンバーも4月の為いない。
4月は新学期とかで学生は忙しいのだろう。
「もしかすると、もうログインして来ない可能性だって0じゃないな」
半分冗談で、アルカは言った。
半分は冗談ではない。
他に楽しい事ができれば、そっちに移るだろう。
「外に行くか」
久しぶりに、フィールドを歩いてみようと思った。
アルカの場合、レベルもカンストしているので、レベルを上げる必要も無いのだ。
それに、強さはもう十分だ。
「まぁ、いくらゲームで強くなろうとも、リアルでは全然強くならないんだけどな」
ゲームでのアルカは最強であった。
あれから、何人ものプレイヤーを相手にして来たが、誰もアルカに勝つことはできなかった。
あまりにも目立ち過ぎてしまい、プロゲーマーの集団がアルカを倒す為に、プロゲーマーとアルカのみ参加可能な大会を開いたのだが、結果はアルカの優勝で終わった。
最終的には、「あんなの無理だ。チートじゃん」となり、ほとんどのプレイヤーはアルカに挑もうともしなくなった。
ちなみに運営はアルカのアバターに調整を入れようとしたのだが、なぜかできなかったらしい。
なぜだろうか?
仕方が無いので、強さをインフレさせて、相対的にアルカを弱体化させる方向も考えているらしい。
「けど、まぁ、そうなっても……別にいいか」
そしたらまた、レベルを上げて、仲間達とパーティを組んで戦えばいいのだ。
アルカは別に不安な気持ちにはならなかった。
むしろ、この思い出のアバターが削除されずに済むのが嬉しかった。
「ここも懐かしいな」
特に目的地も決めていなかった。
アルカは適当に歩いていると、最初に自身が放り出された森へと来ていた。
そして、適当に座ると、今までの事が脳裏に駆け巡る。
このゲームを始め、そして今に至るまでを……。
「本当に、色々あったな」
実は夢だったのではないか?
それ程までに、皆と学生のように遊んだ日々が楽しかったのである。
これからもそんな日々が続いて欲しいものだ。
「アルカさぁん! 何してるんですかぁ! 今日こそ決着をつけさせて貰いますよぉ!」
「ミサキちゃん!?」
突然陰から何者かが現れた。
アルカのライバルの1人であるミサキである。
「私だけじゃないんですよ!!」
そう言うと、ミサキの後ろから走って来たであろうジルコがやって来た。
「ワタクシもいるんですのよ!」
2人ともアルカのライバルで、こうして今でも見つけ次第倒そうとして来るのだ。
流石に、最近はアルカも申し訳ないと思っている。
だが、手加減をすると、怒る。
「どれ、私も混ぜてくれ」
「えぇ!?」
大人気Vtuberグループ、【エレメンタル☆シスターズ】のフレイムまでもが陰から現れた。
「可愛い妹の為だ。私も共に戦おう!」
「だからもう私はグループ脱退しましたから、妹設定はありませんってぇ!」
「私にとっては今でも可愛い妹さ」
ぞろぞろと来るものだから、アルカも驚く。
だが。
「いいだろう! 3人まとめて相手してやるぜ!」
いつものように、戦いを始める。
この日常が最高なのだ。
もしかすると、これから先、極達と再会する事はないのかもしれない。
だが、アルカは極との約束を守りつつ、これからもこの友情を大切にしたいと思っている。
「スキル発動! 【シンギュラリティ】!!」
今日もアルカは、ガールズワールドオンラインを楽しむのであった。




