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最終話.また会おう

 2人は寝転んだまま、空を見上げていた。


「壮大な光景だな」


 【流星群】が、大量の流れ星のようにあまけていた。


「願い事しなきゃ! 何にしよう?」

「俺は、金欲しい金欲しい金欲しい」

「何それ、つまんない……」


 アルカはとにかく楽な生活をしたいので、金銭を求めた。


「じゃあ、ナガレちゃんは?」

「クロアちゃんがしっかり勉強しますように! クロアちゃんがしっかり勉強しますように! クロアちゃんがしっかり勉強しますように!」

「クロアちゃんって……もしかして、クローちゃんのリアルネーム? というか、自分の事じゃないんだな」

「あっ、しまった……」

「まぁ、俺達も今じゃリアルネームで呼び合ってるし、いいんじゃないのか?」

「そういえばそうだった」


 お互い普通にリアルネームで呼びまくっている。


「何だか、リア友みたいだな」

「そうだね。こうやって空を見上げていると、キャンプか何かしに来たみたいだよ」

「キャンプした事あるのか?」

「うん。クロアちゃんと昔」

「俺はないな」


 しばらくすると、【流星群】は跡形もなく消え去った。

 その後、お互い立ち上がる。


「悪いな、ナガレちゃん」

「何が?」

「今度こそ、本気でトドメをさす」


 アルカは右手を前に構えた。


「【爆炎】!!」


 近付けないなら、こちらも遠距離攻撃をすれば良い。

 先程は【流星群】を外したアルカであったが、今度は確実に狙いを定め、無制限と言っていい程のMPを使用し、撃ちまくる。


「やっぱり強いね……!」


 アルカの特殊攻撃力は99999だ。

 かすっただけでも、極のHPを削り取るには十分な威力を持っている。

 極はそれを精一杯かわす。


「こうなったら……奥の手!」


 極は攻撃を避けながら、アルカに向かって走る。


「接近して来ただと!?」

「センシティブユーザーリストに入れた方のプレイヤーからだったら近付く事ができる!!」


 あくまで、入れられた方が近付けないというだけのようである。


 そして……。


「その体にしたのには……もう1つ理由があるのさ!」


 アルカに抱き着き、そのまま崖から飛び降りた。


「はああああああああああああああああ!?」


 アルカと極はそのまま山頂から落下。

 自らの完全勝利を捨てた戦法である。


「最終手段! これぞ、必殺技だよ!!」


 結果的に、両者が落下ダメージにより即死してしまう。

 まさに必殺技であった。


 そして、勝敗は……。


「何で!?」


 バトルモード開始時の場所である、雪山山頂へと戻された2人は勝敗結果を確認する。

 アルカはその結果に納得できないでいたようだ。


「何で俺が負けてるんだ!? 引き分けじゃないのか!?」

「カケル君の方が最初に地面に落ちたからだよ、きっと」


 地面に当たる直前、極はアルカの体を下にし、踏み付けるような動作を取っていた。

 それもあり、微妙な差だが、アルカの方が先にHPが尽きたようだ。


「……ま、そういう事もあるか。次に会った時に決着をつけさせて貰うぜ!」

「うん! 絶対またやろうね!」


 そう、きっとまた会えるのだ。

 まだアイテムの効果が切れず、少女の姿のアルカと極は握手を交わす。


「もうすぐお別れか。正直、寂しくなるな」


 2人は、先程のように地面に寝転びながら、話をする。

 極もセンシティブユーザーリストから、アルカの名前を消したようだ。


「そうだね」

「俺これからどうしよう? 俺無職だし、友達もいないし」

「あれ? 前ケンヤさんの遊び相手になって過ごすって言ってなかった?」

「あぁ、それ無しになった」

「そうなの!? あ、でも友達ならいるよね! クランの皆とか! 他にも一杯友達出来たよね!」

「そういえばそうだな……。ナガレちゃんがこのゲームに誘ってくれたおかげだな!」


 もし、このゲームを始めなければ、リアルで友達がいないアルカはずっと1人だっただろう。


「どういたしまして! あ、そうだ! これ!」

「何だこれ? チョコはもう貰った筈だけど」

「オリジナルスキル……いや、オリジナルチョコだよ!」

「オリジナルチョコだと!?」

「カイゾウさんと喧嘩する前に、リアルで私が作ったチョコレートをデータ化して貰ったんだよ!」

「そうなのか!?」


 散々暴れまくったカイゾウであったが、良い所もあったようだ。

 そもそも、そのチョコレートをアルカに渡すとは想定していなかった可能性も高いが。


「すげぇ! ありがとう! まさか、最後にこんなサプライズが残されているとはな!」

「これから離れても永遠に友達でいられるように、頑張って作ったんだよ!」


 アルカは包みを開ける。


「これはいい! 手作り感がすげぇ!」


 カイゾウも最後に良い仕事をしたものだ。

 アルカは手作り感溢れるチョコレートを見て、そう思ったのである。


「うん、美味しい!」

「市販の板チョコ溶かして再加工しただけだからね! 後トッピング!」

「それでも良い。ありがとう」

「今度はカカオから育てるね!」

「難易度高そうだな」


 そんな何気ないやり取りをしている最中も、時間は進んでいく。


「後少しだね……」

「そうだな……」


 2人はメニュー画面から時間を確認する。


「は?」

「え?」


 何と……。


「「0時過ぎてる!?」」


 既に日付けが変わり、2月15日になっていたのである。

 つまり、【ワールド】の世界は、カイゾウの手を逃れ、既に異世界扱いになっているという事である。

 ガールズワールドオンラインはゲームの世界として存続しているので、アルカの場合はログアウトすれば良いのだが、極の場合は違った。


「ログアウトボタンが……押せない!?」

「嘘だろ!? ……そうか! ログアウト先が無いからか……!!」


 リアルの極の体はどうなっているのだろうか?


「ちょっと怖い事言わないでよ!」


 普段キレない極であったが、恐怖のあまりか、キレ気味に叫んだ。


「いやいや! 大丈夫だ!」

「何が!?」


 アルカは極の腰にある刀を抜く。


「ナガレちゃん、今まで本当にありがとう」

「え? だってログアウトは……」

「俺がどうやってカイゾウさんに勝ったか、知ってるだろ?」


 アルカはスキル【負け犬体質】を選択し、その中から【強制ログアウトスラッシュ】を選ぶ。

 刀がピンク色に輝く。


「強制ログアウトさせるつもり!?」

「ああ!」

「大丈夫なの?」

「ああ! 聞こえたんだ、女神様の声がな!」


 先程、アルカの脳内に女神様の声が一瞬響いた。

 そして、それが女神様からの、本当に最後の導きになるという事も。


「本当……?」

「ああ……だから、本当にお別れだ」

「分かった。信じるよ。じゃあ、最後に言いたい事、いいかな?」

「何だ?」

「友達に迷惑かけちゃ駄目だよ! 後、少しの事でへこたれない事! でも、どうしてもって時は、迷惑かけてもいいから思いきり頼る事! へこたれた時は、楽しかった時の事を思い出す事! 約束だよ!」

「ああ! 分かったぜ! 約束する!」


 アルカは極に向けて走り出す。


 そして、そのまま極を斬った。

次回とその次回でエピローグです。

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