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304.ユニーク職業

「その言い方……当たっているようだね。けど、1つ忘れて貰っては困るよ? 私はいつでも、指一本でこの世界を消せるんだからね」

「しまった!?」


 カイゾウは、メニュー画面からいつでも【ワールド】を削除できる。

 確かに今のアルカに、カイゾウは勝つことができない。

 だが、それは試合に勝つことはできないというだけだ。


(このままじゃ、試合に勝っても勝負に負ける……!)


 再び、アルカの表情に緊張が走る。


「でも、まだ消さないよ?」


 ニヤニヤと、カイゾウはアルカを見る。


「君がここで土下座をして、謝ってくれたら、削除するのを再検討してもいいよ?」


 そんなカイゾウに対し、アルカは……。


「ご、ごめんなさい!!」


 急いで土下座をした。


「調子に乗り過ぎました……」

「うわ、流石に想定外だよ」


 プライドが無いのがアルカの良い所の1つでもある。

 誠意が無くとも、とりあえず謝っておけば、満足するだろう。

 アルカは土下座しながら次の策を考える。


(くっ、せめて早い所【世界確立法】に通ってくれれば……!)


 とりあえず時間稼ぎするしかない。

 足で頭を踏まれようと、土下座を辞めなかった。


(カイゾウさんは【ワールド】の管理者だ。このゲームでいくらチート級の能力を得ても、意味が無い……)


 ここまで来たら、カイゾウをいい気にさせ、出来るだけ時間稼ぎをするしかない。

 だが、いつ引き金を引かれるかどうか……それだけが不安である。


(くそっ! 結局俺は何も出来ないのかよ……)


 アルカは自身の無力さに、心の中でキレた。


「もうそろそろ飽きたからさぁ……頭を上げて起き上がろう? ね?」

「は、はい!」


 アルカは起き上がり、姿勢正しく、カイゾウの目の前に立つ。


「お次は何を致しましょうか!?」

「次は……そうだねぇ。どうしよう……あっ! そうだ! 私が削除できなかったアイテムを見せてくれないかな? あれ何?」

「削除できなかったアイテム……?」


 カイゾウは【ストレージコントロール】でアルカのストレージを空にした。

 だが、その中に1つだけ、削除不可能のアイテムがあった。

 アルカはメニュー画面から、ストレージを開く。


「あ……」


 ずっと忘れていた。

 貰ったのはいつの事だろうか?


「【就職支援の書】……」


 このアイテムは、アルカの誕生日にクランの皆に貰ったものだ。

 条件を満たす事により、ユニーク職業になる事ができるアイテムである。

 どんなユニーク職業になるかは不明だ。

 使用条件は現時点で不明であり、ただの削除不可能のアイテムとして、アルカのストレージにポツンと表示されていた。


 今もアルカは【無職】だ。

 アルカはユニーク職業に憧れていたので、どの職業にも就いていなかった。


(そうか……まだこの手があったか)


 どうなるかは分からない。

 けど、チャンスがあるなら賭けるべきだ。


「このアイテムは……仲間から貰った、大切なアイテムだ!」


 アルカはそう叫ぶと、そのアイテムを使用する。

 本来であれば、条件を満たす必要があったのだが、【ラスボス】の効果により、条件を無視して使用が可能だ。


「へぇ、それは凄いね。それを使うとどうなるの?」


「ランダムでユニーク職業になる事ができる!!」


「なるほどね! 一体どんなゴミ職業になるのかな?」


「ゴミかどうかは分からないぜ!」


 ここに来て、ネタ職業は勘弁して欲しい。

 アルカはそう願うのであった。


 そして、アルカはユニーク職業を獲得する。


「ユニーク職業……【負け犬】!?」


 見るからに弱そうな職業だ。

 アルカは思わず汗を流す。


「ぶわっはっはっは! 面白い! いいよいいよ!」


 対して、カイゾウはご機嫌だ。


「くそっ!」


 こんな職業で一体何ができるというのだろうか?

 絶望の表情を浮かべているアルカは、その職業を見る。


「え?」


 この職業の特性は特になかった。

 専用のスキルを獲得するのみであった。

 弱体化もしていない。

 アルカは獲得したスキルを見る。

 そのスキル名は【負け犬体質】。

 一見弱そうなスキルだが……。


(これは……)


スキル名【負け犬体質】

効果:自分のHPを半分にして発動。自分が受けた事のあるスキルを、戦闘中に1度だけ使用できる。


 受けた事のあるスキル。

 アルカが受けた中で、この状況を打開できるようなスキルはあるのだろうか?


(確かに普段なら有用な効果だ。けど、今この状況をどうにかできる訳……いや、待てよ?)


 アルカは考えた。


(別にこの試合……勝たなくてもいい。ただの時間稼ぎだ。時間さえ稼げれば、俺達の勝ちだ!)


 そう、最初から目的は分かっていた。

 それを再確認し、アルカは勝利を確信した。


(あのスキル……あのスキルを使えば……!!)


 大ダメージを与える訳でもない。

 だが、他にはないオンリーワンの効果だ。


「あー、面白かった! 他に面白い芸はできるかね?」


「ああ! できるさ! とっておきの芸がなぁ!」


 アルカは強気に言い放った。

 もうこれでお終いだ。

 これでお別れだ。


「俺は今、とっても幸せだ。何の取柄もないこの俺が、こうやって世界を救う事ができるんだからな!」

「何を言っているんだね?」


 馬鹿が何を言っているんだ。

 そんな呆れた表情を、カイゾウはアルカに向ける。


「これで最後……俺が使う最後のスキル……!」


 アルカは【負け犬体質】から、受けた事のあるスキルを選択し、それをカイゾウへと放った。

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