303.公式チートvs非公式チート
(日常モード……? 戦闘モード……?)
アルカは倒れながら困惑している。
ステータス画面状態でメニュー画面を殴ったら、戦闘モードになるかどうかの表示が出されたのだ、いきなり過ぎて困惑するのも無理は無いだろう。
そして、このメッセージの意味をそのまま受け取ると、今までのアルカは【日常モード】であったらしい。
YESをタップする事により、【戦闘モード】へと移行できるようだ。
だが、相手はオリジナルスキルという名の、ガチチートスキルを使って来ている。
アルカのアバターに元々備わっていた能力でどうにかなるものだろうか?
(一か八か……ケンヤさんのイカレ具合を信じるしかねぇ!)
ケンヤはアルカを“ラスボス”として君臨させようとしていた。
そんなケンヤが、アルカのアバターにどんな仕掛けを仕掛けておいたのかは分からない。
だが、もう他に打つ手はない。
アルカはYESをタップした。
「おや?」
カイゾウがアルカを不思議そうに見おろしている。
それもそうだ、突然七色に発光し始めたのだから。
「どうしちゃったのかな?」
そして、次にアルカの体が自身の意志とは無関係に空中に浮遊し始めた。
翼が6枚に増え、体中からゴツイトゲトゲが生え、顔が更に凶悪になる。
正にラスボスのような雰囲気をかもし出していた。
そして、モードチェンジ終了後、七色の輝きは消えた。
『【戦闘モード】へ移行しました。戦闘モードへ移行した事により、一時的にスキル【ラスボス】を獲得します』
スキル【ラスボス】、戦闘モード限定のスキルらしい。
その効果は……。
「嘘だろ……」
アルカはその効果を見て、困惑の表情を浮かべた。
「ホッホッホ! 随分と強そうな見た目になったみたいだけど、その表情を見る限り……私のオリジナルスキルには勝てないようだね」
嘘だろ……。
アルカがそう呟いたのは今の状況にではない、ケンヤに対してであった。
「ケンヤさん……こんなの実装しちゃ駄目でしょ……」
あまりにも酷すぎる。
ケンヤはこれを実装しようとしていたらしい。
「けど……ありがとう!! ケンヤさん!!」
アルカは叫んだ。
「どうしたのかな? 気が狂ったのかな?」
「ある意味当たりだ!」
「くっ! その楽しそうな顔……なーんだか、ムカつくね」
カイゾウはエクスカリバーで、アルカを斬り付けようとした。
対するアルカは余裕の表情だ。
スキル【鉄壁】も解除してある。
そんなもの、もう必要が無いのだ。
「消えた!?」
カイゾウの視界からアルカが消えた。
いや、消えたのではない。
「俺はここだぜ!」
カイゾウの背後に立っていた。
「馬鹿な!?」
カイゾウは驚く。
自分のステータスは全てカンストしている筈なのに、なぜ避けられるのだと。
このゲームのカンストは9999だ。
今のカイゾウのステータスはというと。
HP:9999
MP:9999
攻撃:9999
防御;9999
特殊攻撃:9999
特殊防御;9999
素早さ:9999
器用:9999
このような感じになっている。
カイゾウは自身のステータス画面を確認している。
もしかして、数値をいじられたのか? と不安を感じたようだ。
だが、数値は変わっていない。
「どういう事だ! 馬鹿息子!!」
叫ぶカイゾウにアルカは余裕そうな表情で、自身のステータスを確認し、それを見せる。
「これが答えだ!」
HP:99999
MP:99999
攻撃:99999
防御;99999
特殊攻撃:99999
特殊防御;99999
素早さ:99999
器用:99999
「私と同じように、全てのステータスをカンストさせただと!?」
「それだけじゃない! よく見てみな! 桁を1つ増やした!」
そう、桁を増やし、ステータスをカンストさせた。
(【ラスボス】……とんでもないスキルだ。これを最初から実装してたとか、イカレてるよ、本当)
☆
スキル名:ラスボス
効果:このスキルを所持しているプレイヤーは以下の効果を得る。
・全てのステータスの桁を1桁追加する
・全てのステータスを限界まで引き上げる
・受ける全てのダメージを10分の1にする
・与える全てのダメージを10倍にする
・攻撃する際に、相手に与えるダメージを任意に設定可能(自身の最高火力を超える数値は入力不可)
・アイテムの使用条件を無視して、アイテムを使えるようになる
・攻撃系スキルを使用しているか否かは問わず、攻撃している間、相手の無効化を持つスキルの効果を無効化する(無効化スキルを更に無効化するスキルも無効化する)
・状態異常無効
・運営への通報無効
・体を動かさずに思考だけで、移動可能
☆
「このおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
カイゾウはアルカをエクスカリバーで何度も斬り付ける。
今度は避けない。
だが、アルカのHPゲージはほとんど減らない。
「お前は黙って負け犬のまま消えればいいんだ!!」
そう叫びながら、もう1本のエクスカリバーを召喚し、アルカを斬りまくる。
だが、ほとんどダメージが無い。
ここでカイゾウも疑問を持つ。
「ただ桁を増やしただけじゃないな……?」
その通りだ。
桁が増えたのは【ラスボス】の数ある効果の1つに過ぎない。
実際にはダメージが10分の1しか与えられていないのだ。
「どうかな?」
アルカはラスボスのような、邪悪な笑みを浮かべながら、そう答えるのであった。




