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302.オリジナルスキルに苦戦

 カイゾウの体はフィールドの壁にめり込んでいた。

 アルカがカイゾウの体を壁に押し付けている。


「ぐっ……」

「ごめん、けどこれも戦法だぜ!」


 話をしている途中、アルカは隙を見つけ、カイゾウに攻撃を仕掛けていた。

 カイゾウにつけられているのは、あくまでも戦闘の”補助”AIなので、勝手に攻撃をガードしてくれなどはしなかった。


「カイゾウさんと同じDNAを持っているから分かる! カイゾウさんは多分、同時に2つの事をするのが苦手だ! だから話に夢中になったら、隙ができるって思ってたぜ!」

「こ、このっ……!! 私に同情はしないというのか!!」

「確かにDNAは同じかもしれない。けどな、それだけだ。俺の人生にとって、カイゾウさんは、モブキャラレベルの赤の他人だろ!! 俺は赤の他人に気をつかえる程、立派な人間じゃない!! だから、俺には関係ない!!」

「こ、このおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 全く同情もせず、凹みもしないアルカに対し、カイゾウはキレ気味に叫んだ。


「残念だけど、さっきまでのようにはいかない!」


 アルカはスキル【シンギュラリティ】を発動する。

 すると、フィールドが電脳世界を連想させるものへと書き換わる。

 これにより、発動者以外のこのフィールドにいるプレイヤーは、全てのステータスが1となる。


「ぐあっ!」


 その影響は、極とエンジョウにも及んでいた。

 HPが1となったエンジョウに、極の刀が突き刺さっていた。


「へっ……やるな、嬢ちゃん!」


 HPが0となると、エンジョウは粒子となり消滅、その後は観客席へと転送された。


「あらら、負けちゃったの。ま、いっか」


 キレていたカイゾウは冷静になる。

 嫌な予感がしたアルカは、【スキルリターン】でMPを回復し、【鉄壁】で防御と特殊防御の数値をカンストさせる。


 そして、その予感は正しかった。


「あああああああああああああああああ!!」


 カイゾウは叫び、アルカに蹴りを入れた。

 アルカは吹き飛ぶ。


「ぐっ……どういう事だ!?」


 なぜそのような事ができるのだろうか?

 カイゾウの全てのステータスは1になっているハズだ。


「君は私を怒らせた。私のオリジナルスキル、とくと見るがいいよ」

「オリジナルスキルだと!? 何だそれは!?」

「ホッホッホ! オリジナルスキルはね、このゲームに本来搭載されていない、私が作ったスキルだね! ちょっとズルだけどね」


 嫌な予感がしたアルカは、【シンギュラリティ】を解除する。

 このままでは、極がワンパンで倒されてしまう為である。


「賢明な判断だね。私のオリジナルスキル【超究極神ハイパーアルティメットゴッド】の前じゃそれも意味無いからね」

「なんだ、そのスキルは……?」


 カイゾウはそのスキルの効果をアルカに説明し始める。

 ネーミングこそ小学生レベルだが、その効果はとんでもないものであった。

 ・全攻撃ダメージ無効

 ・状態異常無効

 ・全てのスキルの効果、追加効果を受けない

 ・全ステータスの数値をカンストさせる


「は?」


 思わず口に出してしまった。

 ネーミングだけではない、効果まで小学生が考えたかのようなチート級の効果であった。


「どうだい? 私のオリジナルスキルは? 天才的だろう?」

「そ、それちょっと強すぎじゃないですか!?」


 極も動揺している。

 無理も無いだろう、あまりにも強すぎる。

 こんなの反則に近い。


「ま、いいじゃないか、ではまずは、君から行こうか!」


 カイゾウは物凄いスピードで極の目の前に行くと、頭を掴む。


「スキル発動【ストレージコントロール】、アイテムを全て処分させて貰うよ」


 他人のストレージを操作できるユニークスキル、【ストレージコントロール】により、極の回復アイテムや蘇生アイテムを全て捨てられてしまう。


「なっ!?」

「バイバイ! 別に君は消える訳じゃないし、サクッと行かせて貰うよ!」


 カイゾウは更にスキルを発動させる。


「オリジナルスキル発動! 【神武器創造ゴッドアームドクリエイト】!!」


 カイゾウの右手にどこからか現れた、エクスカリバーが握られる。

 どうやら自由に武器を生成できるスキルのようだ。

 手に持ったそれで、極の体を斬る。

 オーバーキル級のダメージを食らった極は、HPが0となり、観客席へと転送された。


「やっぱり、私は最高のクリエイターだね!」


 カイゾウは腕を組み、「うんうん」と頷いた。


「さぁ、どうしようかな~」


 カイゾウはアルカの方へと、ゆっくりと歩みを進める。


(問題無い。【鉄壁】の効果で俺の防御と特殊防御はカンストしているんだ)


 そう、一発で倒されることは無い筈だ。


「何か策がありそうだね」

「まぁな!」


 アルカはカイゾウに殴りかかる。

 だが……。


「遅いね」

「何っ!?」


 全ステータスがカンストしているカイゾウにとって、アルカの攻撃をかわすのはいとも簡単な事であった。


「しかも君さ、どうやって私を倒すつもりなの?」


 そう、攻撃を当てようが、全ての攻撃のダメージが無効になるのだ。


「もう無理なんだよ。諦めな……駄目息子よ!」

「くっ……」


 アルカは地面に倒れながら必死に考える。


(何か……何か倒す方法は……!!)


 アルカは必死に考える……だが……。


「どうすれば……いいんだ……?」

「それだね! それを見たかった! 流石私の息子! エンジョウはそういう表情を見せてくれなかったからね!」


 カイゾウが嬉しそうに笑う。

 非常に満足そうな笑顔だ。


 アルカは負けを覚悟しそうになる。


(皆……)


 観客席を見る。


(ケンヤさん……?)


 ケンヤがぴょんぴょん飛び跳ねて何かを言っているが、聞き取れない。


(何かを伝えたがっている……?)


 アルカは以前、ケンヤが言っていた事を思い出す。


『もし本当にピンチになった時は自分を見つめ直すことだ』


 自分を見つめ直す。


(どういう意味だよ……)


 必死に考えるが分からない。

 自分……。


(きっとあの時も、カイゾウさんに監視されてると思ってシンプルに伝えられなかったんだ。何かある筈だ……きっと何か……。くそっ! 分からない! 自分って何だよ!! 奇跡でも起きるってのかよ!!)


 メニュー画面を開き、自らのステータスを確認する。

 これがアルカが必死に考えた答えだ。

 自分を見るとなったらステータスしかない。


「何してるのかな?」


 メニュー画面を開き、ステータスを見ているアルカに対し、カイゾウは首を傾げる。


「反撃してこないの? ねぇ?」


 どうにもできないのを分かっているのだろう。

 意地悪そうな笑みをアルカに向ける。


「くそっ!!」


 アルカは思わずメニュー画面を殴ってしまう。

 そのアクションがきっかけで、アルカの脳内に、合成音声が流れる。


『モードチェンジを行いますか? 現在は【日常モード】です。戦闘用の【戦闘モード】に切り替えるには、YESボタンをタップしてください』

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