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295.自信がついた

 アルカと極はその後何度も戦ったが、全てアルカの勝利で終わっていた。

 プレイングスキルは極の方が圧倒的に高いのだが、アルカの持つ反則級のユニークスキルには、とても敵わないのであった。

 現在は椅子に座り、休憩している。


「アルカ殿、今度の戦いの目的はあくまでも時間稼ぎ。瞬殺しては駄目でござるよ?」

「ああ、それは分かってる。大丈夫だ、【鉄壁】と【スキルリターン】で粘りに粘ってやるぜ!」


 鉄壁で防御と特殊防御をカンストさせ、スキルリターンでMPを回復。

 これを繰り返せば、大きく時間を稼ぐことができる。

 時間稼ぎが完了したら、スキル【シンギュラリティ】を使用し、トドメをさす。

 これこそが、アルカの用意したシナリオであった。

 世界確立法により、【ワールド】の世界達が1つ1つの世界として定められればそれでいいので勝つ必要はない。


「けどやっぱり勝ちたいからな! 時間稼ぎが終わったら、瞬殺してやるぜ!」


 頼もしい限りである。


「これで世界は守られたも同然だな! なんか、心配して損したな!」


 どうして、ここまでも余裕でいられるのだろうか。

 それはアルカも1人の人間だからである。

 一般人が強すぎる力を手にしてしまえば、こうなってしまうものなのかもしれない。


「アルカ殿、くれぐれも油断はしないで欲しいでござる」


 今度の戦いには、多くの命が掛かっている。

 責任重大、だからこそ極も心配になってきたのである。


「大丈夫だ! 何とかなる!」

「少し不安になってきたでござる。一体どうして、急に自信満々になったでござるか?」

「解放したユニークスキルが強すぎて、勝負にも試合にも、勝ちを確信したからな! それに……」


 アルカは極を見る。


「何かあれば、極が何とかしてくれる気がしてな!」

「え!?」


 要するに、今の自分なら負ける気がしない。

 けど、万が一負けそうになったら極が何とかしてくれるだろう。


 という事だ。


「アルカ殿……」


 極は不安な表情を浮かべた。

 無理もない。

 極のリアルはただの14歳の女の子だ。


 それに対し、アルカのリアルは28歳の男だ。

 普通なら頼れる所を見せ、安心させてあげるべきなのだろうが、この男はそんなことしない。


「……分かったでござる!」


 極は眉に力を込め、頷いた。


「何とかするでござる!」

「頼もしいぜ!」

「アルカ殿も一緒にでござるよ?」

「勿論だ!」


 アルカはサムズアップを向け、お互いに頑張ろうという意思を見せた。

 そして、コーヒーを口に入れると、思い出したかのように意見を出す。


「そうだ! 極、今度の戦いが終わったら、またクランでどっかの大会に参加しようぜ!」


 アルカはクラン【聖なる漆黒】のリーダーだ。

 そのメンバー達と大会に参加したい、という意見であった。

 緊張感のある戦いもいいが、ゲームとして楽しい戦いも大舞台でしてみたいということのようだ。


「それは勿論でござる! あっ、でも今のアルカ殿だったら優勝間違い無しでござるな。出禁になるかもでござる」

「そこは出禁にならないようにケンヤさんに話しておくぜ! 瞬殺して、大会を荒らす!」


 極はアルカに愛想笑いを向ける。


「まぁ、ほどほどに……あっ」


 極が急に深刻な表情になる。


「どうしたんだ? 何か不安なことでもあるのか?」


 今度の戦いも無事に終わるとは限らない。

 不安なことありまくりである。

 だが、今極が深刻な表情になったのは、また別な不安であった。


 極は頷く。


「ごめんでござる。約束は……できないでござる」

「どうしてだ!?」

「……アルカ殿、よく考えてみるでござる。世界確立法に通ったら、拙者達の世界と、この【ワールド】の世界は互いに異世界関係になるでござる」

「そうだな」


 極が言いたいこと。

 それは……。


「そうなったとしたら……しばらくは会えないかもしれないでござる。もしかするとこれから先一生……」


 いつかは異世界へ行ける技術が生み出されるかもしれない。

 だが、それはアルカ達が生きている間に生み出されるとは限らない。

 もしそうだとすれば、もう2度と会えなくなるということである。


「あっ……そう、か」


 アルカも気が付いたようで、テンションを落とす。


「確かに、それはそうだな……」


 自分達にはどうしようもない。

 アルカはそう思っていた。


「極は、家族と仲はいいか? 大切な友達はいるのか?」

「急にどうしたでござるか?」

「……なんとなく」


 極は頷く。


「家族とは仲良しでござる! 友達はクロー殿と、他にもいっぱいいるでござる!」

「そうか……そうだよな!」


 もし良ければ、こっちの世界でこれからも暮らしていかないか?

 アルカはそう言おうと思ったがやめた。

 大切な家族や友人を大切にしているいいを自分勝手に引き離すことは流石にできなかったのだ。

 そしてまた、家族や友人は極のことを大切に想っているのだろう。


「本当にどうしたでござる?」

「いや……なんとなくだ! 極、家族や友人をこれからも大切にするんだぞ」

「それは勿論でござる! ……だからこそ、アルカ殿や皆と別れるのが申し訳ないでござる……」


 極は落ち込んでしまった。

 そんな極にある提案をする。


「今週の土日どっちかで、皆とパーティーでもやらないか?」

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