表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

308/325

294.最強になってみた!

 次の日、月曜日だというのにアルカはゲームへログインしていた。

 世界が終わってしまうかもしれないので、思い切って辞めてみたようだ。

 ノストラダムスの大予言が世に広まった際は、仕事を辞めた人もいたようだが、そんな感じかもしれない。

 辞表を突き付けた、のではなく、流行りの退職代行を使用しての退職だ。

 世界の命運が掛かった戦いをするというのに、今更辞める事を伝えるのに恐怖していたらしい。


「最高の朝だな」


 アルカはマイホームエリアでコーヒーを堪能している。

 普段であれば仕事をしているのだが、今日はこうしてゆっくりしていられる。


「アルカ殿ー!」

「おっ! 来たな!」


 銀髪ポニーテールの少女、極がマイホームエリアに出現した。

 結局、極は学校を休む選択をしたようだ。

 仮病を使ったらしい。


「悪いな、勉強とかで忙しいっていうのに」

「大丈夫でござる! 拙者が休んでいる間の勉強は、クロー殿がノートをしっかり取ると言ってくれたでござる!」

「なら良かった!」


 2人は椅子に座りしばらくゆっくりすると、戦闘用のコートへと歩いていく。

 アルカのマイホームエリアに設置されているので、徒歩数分である。


「じゃあ、練習相手として頼むぜ! 本気で来い!」


 アルカと極は構える。

 これでお互い良い練習になれば良いのだが。


「先手必勝でござる!」


 極がジャンプして斬りかかる。

 そこでアルカがスキルを発動させる。


「【鉄壁】!」


 【鉄壁】、アルカが解放したユニークスキルの内の1つだ。

 MPを半分支払い、防御・特殊防御のステータスを5分間カンストさせるスキルだ。


「ぜ、全然効いてないでござる!?」

「まだこんなもんじゃないぜ! 【スキルリターン】!」


 そして解放した2つ目のユニークスキルを発動させる。


「さっきの【鉄壁】は防御と特殊防御を5分間カンストさせる効果がある! けど、MPを半分支払う必要があった。けどな、この【スキルリターン】があれば使い放題だ!」


 アルカのMPが全回復した。


「【スキルリターン】の効果! 自身のMPを全て回復させる! 更にクールタイムが存在するスキルの場合、そのクールタイムを無しにするぜ!」

「バランスおかしくないでござるか!?」


 ちなみにMP0で使用できる。

 正に糞スキルだ。

 極はアルカに次々と攻撃を仕掛けるが、【鉄壁】の効果で1~2ダメージしか与えられない。


「相変わらず、ゲーム内とはいえ、凄い身体能力だな」


 アルカは感心した。

 極のプレイングスキルはかなりのものだと。


「だが! 残念だが、この俺を倒すには程遠い! さぁ! 終わらせようか!」


 アルカは邪悪な笑みを浮かべる。


「スキル発動……【シンギュラリティ】!!」


 これがアルカが解放した最後のユニークスキル。

 アルカのアバターはケンヤが1から作ったのだが、いくら何でもやり過ぎな性能を秘めていた。


 アルカを中心に電脳世界的なフィールドが広がっていき、フィールドを書き換えてしまう。


「これは一体!?」

「教えてやろう、【シンギュラリティ】の恐ろしい効果をな!」


 スキル【シンギュラリティ】の効果。

 フィールドを書き換え、書き換わったフィールドにいるプレイヤーは、スキルを発動できず、全ステータスが1になる。

 使用すれば、全MPが消費され、1000時間はこのスキルが使用不可になってしまう弱点も存在する。

 だが、【スキルリターン】の効果により、そんな弱点があった所でどうにもならない。


「そんなのありでござる!?」

「大ありだぜ! 【爆炎】!」


 【スキルリターン】でMPを回復させると、【爆炎】を使用し、口から火球を発射させる。

 極は避けようとしたが、素早さが1となった極のアバターでは避けるのが困難であった。

 火球は極にぶつかり、爆発した。

 HPも1となっているので、極は戦闘不能となった。

 フィールドも元に戻る。


「よっしゃあ! 勝ったぜ!」


 アルカは嬉しそうに飛び跳ねて喜ぶ。

 非常に笑顔だ。


「見たか! これが俺の実力だ! はぁ……これじゃあ、負けようと思っても負けられねぇなぁ! どーしよー!? どーしよー!? なぁ! どうするよこれ!! なぁ!?」


 極が起き上がり、言う。


「ま、参ったでござる」

「ははっ! 強すぎてごめん!」


 確かに今回のような非常事態であれば心強いのだが、普通にプレイしていてこれを取得していたら、バランス崩壊も良い所だ。


「もうっ! ……色々とおかしいでござるよ!」

「おかしい? 弱すぎるって意味でか?」

「そんなドヤ顔で言われても、どう突っ込んでいいか分からないでござるよ! というか、さっき自分で強すぎとか言ってたでござるよね!?」

「忘れちまったぜ、そんな昔のことはなぁ!!」


 もう負ける気がしない。

 アルカはそう思っていた。


「ふふっ!」


 自信満々のアルカを見て、極が笑みをこぼした。


「どうした?」

「良かったでござる。アルカ殿が元気になってくれて」

「何言ってるんだ? 俺はいつでも元気だぜ?」

「そうでござるな」


 アルカのボケか素で言っているのか分からないような言葉に、極は優しく笑い返したのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ