291.最強への道
「君ならきっと、来てくれると思っていたよ!」
カケルはGWOへとログインした。
すると、マイホームエリアになぜかケンヤがいた。
非常に機嫌が良さそうな表情をしているのが分かる。
「精神操作はやめてくれよな?」
ヘッドギアを被り、電源を入れた時点で、脳はケンヤの支配下に置かれる。
「君が逃げ出さなければそんな事はしないよ。それに、今の君はとてもいい表情をしている。何かあったのかな?」
「ケンヤさんには隠せないから言うけど、女子中学生と遊んで、スッキリしたんだ」
ケンヤには、このゲーム内で、隠し事が通用しない。
考えている事が筒抜けとなってしまうからだ。
「なるほどね。ま、僕は協力してくれるならどっちでもいい」
ケンヤは「うんうん」と頷いた。
そして、指パッチンをして得意げに言う。
「14日、極さんが上手い事交渉してくれていれば、ゴミ共と戦うことになる」
ケンヤの言うゴミ共とは、【ワールド】の開発者である、カイゾウとエンジョウを指している。
自分達を勝手に生み出しておいて、勝手に消そうとしているので、怒りのあまりゴミ呼ばわりしているようだ。
「メールでも送ったと思うけど、君に戦闘中にして欲しい事は時間稼ぎなんだ。できるだけ時間を稼いでほしい」
「俺にできるのか?」
「君のアバターの力を解放できれば、楽勝だよ」
今はまだ、アルカというアバターは本当の力を出し切れていない、とケンヤは以前も言っていた。
前回はアルカに対してヒントを与えなかった。
ゲームの遊び方は人それぞれだからだ。
しかし、今回は違う。
世界の命運がかかっているのだ。
「アルカさん、君には嫌でも強くなってもらうよ」
「いいのか!?」
「ああ、今度の戦いは世界の命運がかかっているからね。遊びじゃないんだよ」
「おお! 確かにそうだな! ……あっ! いい事思い付いたぜ!」
ケンヤにチートを使って強くして貰えばいいのでは?
絶対に死なない、そして一撃で相手を葬れるステータスを無条件で付与して貰う。
本来は駄目だが、今回は事態が事態だ、仕方が無い。
「負ける気がしねぇ! ケンヤさん、どうだ?」
しかし、ケンヤは首を横に振る。
「一撃で倒しちゃ時間稼ぎにならないでしょ? それに、どうも無理っぽいんだ」
「何でだ?」
「簡単に言うと、今僕にこのゲームをどうにかできる権利が与えられていない。というか、他の運営の皆もそうだね。おそらくゴミ共の仕業だ」
おそらく監視されているのだろう。
こうしてここで会話している内容さえも、筒抜けなのかもしれない。
「えっ!? だったらここでこうやって作戦会議してるの不味くないか?」
「確かにそうだけど、他に方法無いでしょ? それに、別にバレても構わないさ。分かっててもどうにもできない、理不尽な強さが君には備わっている! 例えば」
ケンヤは、スキルの書をストレージから取り出し、手に持つ。
だが、それはプレイヤー用では無い。
説明にテイムモンスター用と書かれている。
「それって、テイムモンスター用のスキルの書だろ?」
スキルの書、プレイヤー用のものと、テイムモンスター用のものがある。
テイムモンスター用のスキルの書は、モンスターをプレイヤーが操作できない為、強力なものが多い。
「本来、テイムモンスターに対してでなければ、使用不可能だ。が、君は違う」
「違う……?」
「そう、君に対してはテイムモンスター用のスキルの書も適用できる!」
「嘘だろ!?」
「本当だよ、ほら、これとかどうかな? 出の早い即死技だけど」
ケンヤの言っている事は本当であった。
「とりあえず、強そうなのは片っ端から覚えていこうか」
ケンヤのストレージには、全てのアイテムが999個存在している。
このゲームは1つのアイテムにつき、999個まで持てる為、カンストしている。
「こんな事もあろうかと、アイテムだけは限界まで持っておいて良かったよ」
今では運営としての力をほとんど失っているケンヤだが、事前に生み出しておいたアイテムは消されていないようであった。
「うん、実にいいね」
「凄いな……」
自らのスキル一覧を見て、驚く。
それもそうだ、強力スキルが揃い踏みなのだ。
中には見た事ないスキルもあった。
「次はユニークスキルでも解放しようか!」
「軽いな。確か俺に秘められたユニークスキルは後3つだった気がするけど、当たってるか?」
以前、アルカが考察した事があった。
「正解だよ。その3つを手っ取り早く解放しちゃおうかと思ってね」
「そんな簡単に解放できるのか?」
ケンヤは「僕を誰だと思っている?」と、ドヤ顔で言った後、レストランに行こうと提案してきた。
レストランに行って何をするというのか。
「食べに行くに決まってるでしょ?」
「ああ、そっか、食べる事によって解放されるのか」
「そういうことだよ」
ケンヤに連れられ、はじまりの街のレストランへとやって来た。
「全部貰おうか」
ケンヤは全てのメニューを注文すると、アルカに言う。
「さぁ、食べるんだ」
「全部!?」
「君の体なら楽勝だろ?」
確かに、人間用の食事なので、全部のメニューを食べるのは不可能では無いはずだ。
そしてアルカが感想を一言。
「オークの肉って、なんか泥団子みたいな味だなぁ」
何だかんだで、20分くらいで全てのメニューを完食した。




