288.お願いがあります
そして次の日、日曜日。
極のリアルであるナガレと、クローのリアルである、クロアは再びカイゾウを訪ね、ブリリアントサイバーへとやって来た。
「それを信じちゃったの!?」
ナガレは移動しながら、クロアに昨日の出来事を話した。
それでこのような反応をされたのだ。
「未来人が神を創造ねぇ……信じられないわ」
「だ、だよねー」
「けど、あんたの言うことだから信じるわ。その代わり、自分でお金を稼げるようになったら、アイスを奢って貰うわよ?」
ナガレのことであれば信じられる。
それ程にもナガレのことを信頼しているのだ。
「く、クロアちゃん!」
ナガレは、つい瞳をウルウルとさせてしまう。
「な、なに泣きそうになってるのよ!」
「いやだって、クロアちゃん優しいなって思って」
「優しくないわよ! さ、着いたわよ!」
受付へ行き、社長であるカイゾウを呼び出して貰おうと思ったら、偶然にもカイゾウが通り掛かった。
今回は副社長であるエンジョウはおらず、1人だけだ。
「おや、どうしたのかな?」
「カイゾウさん! 例の話です!」
「ほぅ、では、場所を移そうか」
以前も行った、山小屋の地下へと案内された。
この地下は研究所となっており、カイゾウとエンジョウ以外入ることはできない。
「なに? 最後にGWOで戦いたいだって?」
「はい、駄目でしょうか?」
2月14日、最後の思い出として、GWO内で戦闘を行いたいと言う申し出を行った。
目的は【世界確立法】に【ワールド】が認定されるまでの時間稼ぎだ。
「いいですとも! そうだね! うん! いいアイデアだ! しかし、こちらも手加減はできないよ?」
「ありがとうございます!」
作戦は成功だ。
だが、そこでカイゾウは条件を出す。
「ルールはこちらで決めてもいいかな?」
ケンヤは時間がかかるルールにしようと思っていたようだが、たった今阻止された。
「条件は、2対2でのバトル。それと戦闘中はゲーム内の時間を加速させて貰うよ」
「え?」
「何か問題でも?」
策を見抜かれている?
流石に女神様のことは知らない、又は知っていても信じないだろうが、時間稼ぎをし、何かを企んでいるということは何となく分かったようだ。
「い、いえ、何も問題はありません」
断られたら厄介だ。
ナガレは仕方なく頷くのであった。
「2対2ね……私とナガレの出番かしら?」
「それはそちらに任せるぞい! ちなみにこちらは私とエンジョウのタッグで挑ませて貰う」
「え?」
2人は驚いた。
まさか、普段ゲームに精通していなさそうな2人が挑んでくるとは思わなかったのだ。
だが、よく考えてみれば、部外者にVRゲームの存在は教えられないので、当然とも言える。
しかし、これはラッキーだ。
実力差が開いていれば、遅延行為を行いやすい。
そしてクロアはニヤリとする。
(勝ったわ!)
クロアは思わず、小さくガッツポーズをするのであった。
「良かったわね、ナガレ」
「う、うん」
加速して行うと言うのが不安であったが、出来るだけ遅延行為を頑張ろうと決意するナガレであった。
そして、話が終わった後、ナガレはもう1つのお願いをカイゾウに向ける。
「あの、他にもう1つお願いが……」




