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287.もう遅いは勘弁してね

「結局、どうなるんだろうな」


 極と話した後、アルカのリアルであるカケルはログアウトし、ベッドに仰向けになっていた。

 次の日は日曜日ということもあり、精神的余裕がありそうなものだが、どうも世界がどうにかなりそうな可能性があることを考えると、休まる筈も無かった。

 だが、完全にそれを信じているかと言われると、そういうことも無かった。


「ノストラダムスの大予言って前あったよな。あの時の国民の心理状態なのかもな、今の俺は」


 カケルは一般人だ。

 ただの男性だ。

 それもかなり出来が悪い、そんな人間に何ができるというのだろうか。


「そういえば昔、俺は何になりたかったんだっけ? 何をしたかったんだっけ? 大人にはなりたくない、そう考えていたのは覚えている。けど、それ以外は何もなかった」


 仮に滅亡するのであれば、折角だからやりたいことをやってみようとでも思ったカケルであったが、今の彼にはGWOしか残っていなかった。

 昔から出来が悪すぎて、自ら計画を立て、決定することが非常に苦手であったカケルは、ほとんどを他人に決めて貰う形でここまで来た。

 「まずは失敗してもいいからやってみよう」、カケルがよく言われていた言葉だ。

 だが、出来が悪いことを自覚していたカケルは基本的にやらなくていいことはやらなかったし、駄目だと自分で思うことは実際にやっても駄目だったので、尚更なおさらやりたい事が見つからなくなっていった。


「まぁ、今思えば長所だったな。自分の駄目さを分かっているのはな」


 本当に滅亡するかどうかは不確定、そうであったが、ついつい人生を振り返ってしまうカケルなのであった。


「昔の俺なら……例えば小学生くらいの俺だったら、きっと」


 きっと、楽しんでいたに違いない。

 滅亡するかしないか、そのギリギリ感を最高に楽しんでいたに違いない。


「ま、どっちでもいいか。俺にはきっと、どうにもできない事なんだからな。それに、もう関係ないんだ……関係ないんだ」


 悲しそうな表情で仰向けから、横向きになる。


 一度悪いことを考えると、ずっと悪い方に考えてしまう。


 精神的にも弱い、それが彼であった。


 こんな時、誰か支えになってくれる人が彼には必要なのかもしれない。


「おーい! ゲームもしないで、なにしてるんだ!!」

「え?」


 スマホから声がする。

 非常に不気味だ。


「アルカさん、僕だよ」

「ケンヤさん!?」


 スマホを見ると、ケンヤが映っていた。


「非常に不味い事態になった。君の力を借りたい」

「俺の……? なんで?」

「なんで? そんなの決まってるでしょ、世界を守る為さ! そんな事も分からないのかな?」

「いや、俺詳しい事は聞いてないから」


 あの時はそう、現実逃避の為、それらの話は聞かずに通常のエリアに戻って来ていた。


「そういえば、勝手にいなくなってたね」

「ミルちゃんとお話してた」

「なるほど。まぁ、それもいいけど君には事情を聞いて貰う」

「聞きたくない」

「なぜだい?」

「悪い話なんだろ?」

「そうだね。でもその問題を解決するにはまず現実で起こっている事を認識しないとね」

「俺は逃げたい。逃げるのが俺の得意技だ」

「うん。それもいいね。君だけの問題ならば逃げるのも問題ない。むしろ立派な戦法だ。けど、僕はまだ諦めたくないから。ぶっちゃけると、君を利用するのが一番確実なんだよ、分かる? お願いだ、僕には君が必要なんだ! さぁ! 行こう!」


 カケルの答えは……。


「怖いから嫌だ」


「え? 怖いから、嫌だ?」


「ごめん、俺そんなにメンタル強くないからさ」


「この僕が頼んでいるのにか!? 僕を誰だと思っている!?」


 ケンヤはキレながら叫んだ。

 けどすぐに落ち着く。


「1度でもいいから、ヘッドギアを被ってログインしてくれないかな? そうすれば君の精神をコントロールできるからさ! お願い!」


「いやいや、それこそ怖い」


「なんでさーっ! ふざけるなよ!!」


 ケンヤは再びキレる。

 だが、カケルがこうなってしまってはもう遅い。


 しかし、それで諦めるケンヤではなかった。

 一度冷静になり、言う。


「君にはがっかりだ! まぁいいさ! 今回の事の詳しい情報を君のスマホに入れておいた! きっと君は誘惑に勝てず見るだろう! そうすれば、君の性格であれば必ずや協力するだろう! 楽しみに待ってるよ!」


 そう言うと、スマホ画面からケンヤは消えた。


 そして、画面には謎のメールが一件。


「これに書いてあるのか。今回の事が全部」


 嘘か本当かどうか分からない。

 都合が悪ければ嘘ということにすればいい。


「少し、見てみるかな」


 ケンヤの言う通り、誘惑に勝てなかったカケルはメールを開く。


 中には信じられないような事が書かれていた。


 だが、どこか説得力があった。


 結果、カケルは決断する。


「仕事辞めるか」


 現実逃避、それこそがカケルの選んだ道であった。


「やりたい事は特にない、だったら探せばいいじゃないか! よしっ! 軽く旅に出るか!」


 ケンヤの思惑とは違う方向に動き出したカケルなのであった。


 ケンヤがこれを見ていたら「そうじゃないよね!?」と突っ込みを入れていたであろう。

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