30.ユニーク職業【陰陽師】
23話後のお話です。
少し前の話、極がキメラにボコボコにされた後の話である。
あの後、極は自称陰陽師を名乗るキャラに誘われ、共に修行する事となった。
「それにしても……一体どんなユニークスキルを授かるでござるか?」
「ユニーク“スキル”……違うな。今から私が伝授するのは陰陽の術だ」
「?」
どういう事であろうか?
「ど、どういう事でござるか?」
「簡単な事だ。貴様に覚悟があるならば、【陰陽師】になってもらう」
「拙者もそういう格好するのでござるか? 拙者は侍装備がお気に入りでござるから……」
「そうでは無い。職業と言えば分かるか?」
職業。その言葉で極はピンと来た。
職業……今後実装される予定の職業システムの事である。
「分かるでござる!」
「それなら良い。まずは、特殊エリアへと転移するぞ」
陰陽師が手を合わせると、魔法陣が出現。次の瞬間に二人は山のようなエリアに居た。ゲームの中でありながら、大自然がおもてなしをしてくれている。
「ここが特殊エリアでござるか」
極は辺りを見渡す。
「そうだ。さて、修行と言っても教える事は多くない。改めて言うが、貴様には選択する必要がある。ユニーク職業【陰陽師】になるかどうかだ」
「そんなの当然、なるに決まっているでござる」
「話を最後まで聴け、良いか? ここだけの話、このゲームには数多くの職業が用意されている。初期職業というものが用意される事になると思うが、そんなもの序の口に過ぎない。それでだ。そんな中、戦闘システムに大きく干渉する職業も少ないが存在する」
極は右手を顎に当て、ニヤリとする。
「ははーん。その職業のうちの1つが【陰陽師】でござるな?」
「そうだ。おまけに転職はそれなりに面倒だ。どうする?」
「そんなの決まっているでござる!」
極は、両手を腰に当て、宣言する。
「【陰陽師】になるでござる!!」
「分かった。では、一足早く職業を授けよう!!」
陰陽師が右手を極に向けると、極を光が包み込む。
やがて、光が止むと。
「何も変わってないでござるな」
「ふっ! MPとスキルを見てみろ」
「? 承知でござる」
極は、MPとスキルを確認するが、何と驚き。MPとスキルが消失している。
「んなぁ!? どういう事でござるか!!」
「覚悟はあるかと聞いたはずだが」
「いや、これだと拙者弱体化しただけでござるよ!? しかも説明受けてないでござる!!」
「落ち着け、腰にある【デッキケース】を見るんだ」
極の腰には、黒いカードケースが装備されていた。
デッキケースと呼ばれたそれを取り出すと、中には札が入っていた。
「これで悪霊退散するのでござるか? もしや【陰陽師】って悪霊メタの職業でござる?」
「そうでは無い。現実の陰陽師とはまるで違うからな」
極は札をまじまじと見る。その1枚には【ファイア】と書かれていた。
「これは拙者の持つスキル?」
「そうだ。口で説明するより説明を見て貰った方が早いな。職業の項目を見てみろ」
極は、メニューから職業の項目を選択する。
【陰陽師】:
札を使用し、そこに封じられているスキルを用いて戦う職業。
本来消費する筈のMPを消費せずにスキルを発動させる事が出来る。
札を使用すると、同じ札は24時間使用する事が出来なくなる。
攻撃、特殊攻撃、素早さが高く育ちやすい。
「おお! これでMPを気にせずスキルをバンバン発動出来るのでござるな! あっでも……同じスキルは連続で使用出来なくなるでござるな」
「落ち込むな。その為の攻撃、特殊攻撃、素早さ補正だ」
「な、なるほどでござるな」
「それに……職業は進化する。この職業もこれが完成では無い。陰陽の道を極められるかどうかは貴様次第だ」
「分かったでござる!」
「別に私の真似をする必要は無い……見つけてくれ、貴様だけの陰陽の道を……」
「分かったでござる! 師匠!」
「師匠か……ふふっ! 私の役割は終わったが、最後に良いものを得られた」
陰陽師は空を見上げた。
「綺麗な空だな」
「そうでござるな」
「1つだけ言っても良いか?」
極は首を傾げる。
「人は人だ、例え誰かに負けてもくよくよするな。能力が劣っていようと、貴様は1人しか居ないのだ、故に完全劣化は有り得ない!」
「お、おう」
いきなりの説教(?)に困惑してしまう極であった。
「さて、今から元のエリアへ戻すが、職業システムが解禁されるまでは、ここに来る前の状態に戻るからな。それまでにスキルでも取得しておくのだな」
「分かったでござる! 拙者もっと強くなるでござる!」
こうして、極はユニーク職業を取得したのであった。




