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285.地球

 ケンヤは時間を貰う、とだけ言うとその場から姿を消した。


「あの……ありがとうございます」


 極は女神様に対し、お辞儀をした。


「あらあら、そこまでかしこまらなくてもいいのですよ?」


 女神様は微笑みながら、極に言った。


「極ちゃん、分かるよ分かる! 師匠ってほら、なんか神々しいからついつい敬語になっちゃうんだよね?」


 ミーナが「うんうん」と頷きながら極に言う。

 自らの師匠に敬意を払っている極を見て、嬉しく感じたようだ。


「そんな感じでござる。なんというか……神様っぽいと直感的に感じたでござるから」

「師匠は私がいた世界の女神様だからね! って言っても私がいた世界も【ワールド】ってゲームの一部なんだよね……」


 【ワールド】の一部、要するに極の世界より下の層に位置する。

 だとしたら、女神様に関しても、極より下の存在だろう。

 ミーナはそれを再確認し、暗い表情で目をらした。 


「同じく私もゲームの中の存在……」

「な、なんかごめんでござる」


 極は慰めの言葉も思い浮かばず、同じく目を逸らすのであった。


「お゛い゛! なに暗くなってんだ? お゛い゛!」


 神ゴッドが机を叩くと、極とミーナはビクッとする。


「神ゴッド、うるさいですよ?」


 女神様は神ゴッドをハリセンで黙らせると、極とミーナに言う。


「ミーナ、貴方は確かにここに生きています。ゲームの中だろうが関係ありません。そして極さん、貴方が責任を感じることはありません」


 確かに極は悪くない。

 悪いのはカイゾウだろうか?

 だが、カイゾウもただゲームを作っただけだ。


「じゃあ、悪いのは誰でござる……? カイゾウさんはただ、ゲームを作っただけでござる」

「難しい質問ですね」


 極だってゲームのセーブデータを消して、最初から遊ぶこともある。

 あの時は感情的になった極であったが、それを考えると、カイゾウが悪人だとも言いにくい。


「悪人はいない、じゃ駄目ですか?」

「駄目じゃないでござるが……」


 女神様は微笑みながら極の頭に手を乗せる。


「悪人相手じゃないと、思い切ったことができない。そんな所ですね?」


 図星だったようで、極は驚いた。


「殺す、まではいかなくとも、制裁を加えてやりたい。けど、悪人でなければ自分が悪人になってしまう。詳しくはこうですね?」

「ど、どうして分かったでござる!?」

「女神のカンです。でも、どちらにしろ優しい貴方はそんなことできませんし、する必要もありません」

「する必要がない……でござるか?」


 何もしなくては、【ワールド】に存在する世界達が消えてしまう。

 それなのに、何もしなくてもいいというのだ。

 一体、どういうことであろうか?


「この段階まで来れば、言っても大丈夫そうですね」


 女神様は極の頭から手を離し、地面から浮かび上がる。


「実はもう既に、【ワールド】を救う手立ては打ってあります」

「本当でござるか!?」


 その場にいた皆がその発言に驚いた。


「この【ワールド】は、文字通り世界として完成され過ぎました。その為、法による救済が行われる確率は非常に高いでしょう」


 女神様の言うことが皆、飲み込めていないようだ。


「法? 法律でござるか……?」


 極も思わず困り顔を見せる。

 一体何の法律で守られるというのだろうか。

 極のいる、西暦2009年の世界に、この世界を守るような法律は存在しない。


「そうです。法律です」

「えっと、拙者の世界にはそんな法律は……」


 ない。

 そんな法律存在しない。


「私の世界には、そのような法律が存在するのですよ」


 女神様の世界、剣と魔法の世界のことであろうか?


「師匠……そんな法律知りませんし、結局はゲームの世界なんですよ?」


「ミーナ、貴方が知らなくても無理はありません。これは神、女神のみ知っている法なのですから」


 その発言に神ゴッドが叫ぶ。


「お゛い゛! 私は知らないぞ!」

「神ゴッドは見習いですし、将来的になるのは“あの世界”の神様です」


 女神様はおかしくなってしまったのだろうか?

 ミーナですら、心配して首をかしげる。


「極さん。いえ、双葉ふたば七我流ながれさん」

「えっ!!??」


 いきなり本名を呼ばれ、思わず叫んでしまう。


 他のメンバーには女神様の今の発言は聞こえてないようで、突然驚いた極のことも心配する。


「どうして、私の情報を……? もしかして、ケンヤさんに情報を貰ったんですか!?」


 驚きのあまり、敬語に戻ってしまった。


「あー、確かにそう取られてしまうかもしれませんね。では、これならどうですか? 貴方しか知らないような情報です」


 女神様は極以外に聞こえないように、身長から体重、好きな食べ物やその他本人しか知らないような情報を伝える。


「ど、どういうことですか!!??」


 ミーナ達から見れば、1人で極が驚いているように見えている。


「き、極ちゃん。だ、大丈夫?」

「い、今聴いたのは忘れて!」

「え? なにを?」


 女神はニコリとする。


「安心してください。極さんにしか聴こえないようにしてありましたよ。こうでもしないと、信用してくれませんからね?」


 極は聴かれてないのを確認すると、冷静になる。


「信用するって、なにをで、ござるか……?」

「私の正体です」

「正体って……別世界の女神様じゃないでござるか……?」

「別世界の女神。それは当たっています。ですが、ここにいる皆さんの考えている別世界とは異なる世界の女神も担当しています」


 女神様は手を大きく広げ、言う。





「第三番惑星地球担当女神、それこそが私の本来の役割であり、正体です。現在はこの【ワールド】を法に乗っ取り、1つの上の世界として、認定する方向で動いています」

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