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284.ふざけるなよ

「なにか、私にできることは……」


 アルカと別れた極はブツブツ独り言を言いながら、プレイヤーがほとんど通らないであろうエリアをウロウロしていた。


 なんだか今日のアルカは変だ。

 無理に楽しそうにしている感じだ。


「私まで現実逃避していちゃ駄目だ! この世界を救えるのは私達だけなんだから!」


 極とクローはこの【ワールド】の住人ではない。

 上の層の住人だ。

 この世界を終わりにさせないようにするには、自分達でなんとかするしかない。

 極は拳をグッと握りしめる。


「でもどうしよう? やっぱり、カイゾウさんを説得するしかないのかな……? でもどうやって……」


 難しい表情をしながら、歩いていると、とある人物の声が耳に入る。


「な、なぁにぃ~!!!!!!」


 極が聴いた事のない声だ。


「だ、誰でござるか!?」

「そんなことどうでもいいだろ!! いいからこっちに来るんだ!!」

「うわっ!?」


 まばゆい光が極を包み込む、そして気が付くと全く別なエリアにいた。


「ここは……?」


 会議室のような部屋に召喚されたようだ。

 女神様、神ゴッド、ミーナ、そしてケンヤ。

 極にとっては見知らぬメンバーが半数だ。


「連れて来たよ。それにしても……本当なのか!?」

「ふぇっ!?」


 ケンヤが極の肩を掴み、ガクガクと体を激しく揺さぶる。


「本当にこの世界含め、全ての世界がゲームの世界ってのは本当かって聞いてるんだ!!」

「ど、どうしてそれを~!?」


 揺さぶられながらも極は答える。


「君の心情をログとして読み取ったんだよ! 分かれよ!」

「そ、そんなの有でござるか~!?」

「有だ! 僕はケンヤ。ブレイドアロー社の社長だからね」


 社長だからといって何をしてもいい訳ではないが、今は非常事態なので、他のメンバーもそれについては、ツッコミは入れなかった。

 だが。


「乱暴はいけませんよ!」


 女神様は、揺さぶりを止める為、ハリセンでケンヤの頭を叩いた。


「なにしてるんだ!! 僕を誰だと思ってる!!」


 ケンヤは女神様にキレ始め、極は解放された。


「頭がグラグラするでござる……これが噂のケンヤ殿でござるか」


 とりあえず、極は椅子に座り、口論している女神様とケンヤを見ていた。

 しばらく経つとそれは収まり、先程よりは冷静になったケンヤが極に訊く。


「本当なのか? この世界も異世界も極さんの世界のゲームで、もうじき消されるっていうのは」


 ケンヤは真剣な表情で極を見つめる。


「本当でござる」


「あああああああああああああああああああああああ!! ふざけるなよ!! あああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 ケンヤは叫びながら自らの頭をバンドマンのように激しく振り、それを会議室の机に連続でぶつける。


「詳しく聞かせるんだ……! そのゴミ共についてを詳しくだ……!」

「ご、ゴミ共?」

「このゲームを作った奴らについてだ! 対策を練る必要がある」


 あくまでこのゲーム内で思考した内容しか、ケンヤは読み取れない。

 それもあり、詳しく話を聞きたいようだ。


 極は会社見学で話したことを全て、皆に聴こえるように話した。


「ふざけるなよ!!」


 ケンヤは怒りのあまり、拳を握りしめる。


「あのゴミ共が!! どれだけ僕をコケにすれば気が済むんだ!!」


 ケンヤは拳を壁に叩き付ける。


「例え作られたAIだとしてもだ! こうして普通に自我を持っている以上、普通の人間と変わらないだろ! それを消すだなんて……自分勝手なゴミ共だな」


 今まではAIを馬鹿にしていたケンヤであったが、自分が同列の存在と気が付くと、考えを改めたようだ。

 この場にミルがいたら、思わずツッコミを入れるだろう。


「というか! なんでそいつらをぶっ殺さなかったんだ! そんなゴミ共、君の手で息の根を止めとけえええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」


 流石に犯罪は犯せない。

 ケンヤは叫ぶと、再び冷静になる。


「まぁいい。今の話を聞いて、僕なりに作戦を思いついた!」

「ほ、本当でござるか!?」

「ああ! 間違いない! 超天才的な作戦だ!」


 ブレイドアロー社の社長であるケンヤの考える作戦とは一体。


 ケンヤは人差し指を極に突きつける。


「体を売れ!」


 場が凍り付く。


「意味不明だと思ったね? ま、天才の考えは理解できないか……よし、凡人の君達にも分かりやすく教えよう!」


 キーとなるのは副社長である、【エンジョウ】。

 話を聞く限り、ロリコンである可能性が高い。

 だから極と引き換えに、【ワールド】のデータを削除しないで貰うのさ。


 というのがケンヤの考えであった。


「最低ですね」


 ミーナがケンヤをゴミを見るような目で見る。


「最低だと……? ふざけるなよ!! 僕を誰だと思ってる!?」


「なんだか同じようなことばっかり言いますね。そもそも極ちゃんはどうなってもいいって言うんですか? そっちこそふざけないでください!!」


「なんだそんなことか。いいかい? 1人の人間の犠牲で大勢の人間の命が助かるかもしれないんだ。なにを迷う必要がある? よく考えてみるといい、別世界を含め、この【ワールド】に総勢何人の人間がいるのかをね。 君は少し頭を冷やした方がいい、興奮しすぎだ」


 ケンヤは得意げにそう言い放った。


「呆れますね」

「なんだと?」


 そんな得意げなケンヤに呆れたのは女神様であった。


「天才なのにその程度のことしか思い浮かばないとは、情けないですね」

「な、なにぃ!!」

「それと、【ワールド】を消さないで貰うって考えに至ったのが残念です。それって、結局は支配されたいままでいいってことですよね」

「ふざけるなよ!!」


 ケンヤは会議室の壁を蹴り付ける。


「僕を……僕を舐めるなああああああああああああああああああああああ!! ばか! あほ! まぬけ! いいさ! いいさいいさ! 最高のハッピーエンド……いや、トゥルーエンドを迎える為の道を見せてあげるさ!!」


 女神はニヤリと笑う。


(単純すぎですね)

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