表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

292/325

278.聞かない方がいい

「ひっ」


 ミーナがその声に怯えると、その声の主が空から降って来た。


「お゛い゛! 久しぶりだな、錬金術師! お゛い゛!」

「か、神ゴッドさん!?」


 金髪のヤンキーっぽい雰囲気のこのプレイヤー、名前は神ゴッド。

 マナーが悪いことで有名だ。

 以前アルカが戦闘をした際にも、暴言をはきまくっていた。


「ああ、すみませんね。馬鹿弟子が騒がしくて。私はなにもされてませんよ」

「お゛い゛! 私は馬鹿弟子じゃねぇぞ!」


 女神様以外は状況がよく分かっていないようで、首を傾げている。


「馬鹿ですよ。大体貴方、使命を忘れたのですか?」

「お゛い゛! 私の使命はなぁ!! ミーナを観察し、その結果を届けることだぞ? お゛い゛!」

「それで、実際にそれはやってくれましたか?」

「お゛い゛! んな面倒なことすっか、ボケ!」


 それどころか、ミーナの不安を煽って楽しんでいた。


「私を観察……?」

「ごめんなさい。私がミーナと直接会う訳にはいかないと判断した結果、観察役として馬鹿弟子を派遣したのです」

「あー、だからあの人、私に絡んで来たんですね」

「はい。怖い思いをさせて申し訳ありませんでした」

「いえ、理由が分かれば別に怖くないです! というか、師匠って私以外に弟子いたんですね」

「錬金術師の弟子はミーナ、貴方だけです」

「ということは?」

「私が女神を引退した後、あの世界の神となる予定の人物です。要するに女神としての私の弟子ですね」

「え……」


 神ゴッドに明らかに神の器はない。

 そう感じたミーナは不安になった。


「不安そうですね。私もそう思います。おまけに神見習いの権限を使って、漆歴の世界に転移までしちゃってますからね」

「お゛い゛! 私はな、束縛が大嫌いなんだ。お゛い゛!」


 アルカは不安になった。


(俺達の世界に神ゴッドが普通に生活してるのか……)


「というか、師匠は女神辞めちゃうんですか……?」


「はい。“あの世界”の女神は引退します」


「というと?」


「これは、先程私がミーナに伝えようとしていた“2つ目”に関連することなので、詳しくはまだ言いませんが、元の鞘に収まるといった所です」


「よく分かりませんが……大丈夫なんですか?」


「なにがですか?」


「あの人に神をやらせても」


「確かに、不安はありますが、正直それ所じゃないのです」


 全てを聞いていたケンヤは面白く無さそうな表情をする。


「女神様、僕を仲間外れにしないでくれないかな?」


「ケンヤさん、丁度いいです。貴方にも聞いておいて欲しいのです」


「僕に? 関係ある話なのかい?」


「はい、重大な話です。ケンヤさんに……いえ、漆歴の皆さんに関係のある話です」


「どういうことだい? 異世界の連中でも攻めて来るのか? 安心してよ。ブレイドアロー社では戦闘用のロボットも開発していてだね」


 ケンヤが言い終える前に、女神様が口を挟む。


「そんなものではどうにもなりません」


「そんなものだと!? ふざけるなよ!! 異世界の女神だか錬金術師だか知らないけど、ここに来た瞬間、僕に支配されたゲームの登場人物に過ぎないんだからね!」


 支配しきれてはいないのだが。


「ケンヤさん。本当にいいのですか?」


「なにが?」


「今から私が話す“2つ目”のことを話しても、発狂しませんか?」


「僕を甘く見ないで欲しいな」


「そうですか」


 女神様はアルカを見る。


「貴方は……」

「あ、俺ですか?」

「はい。正直、こっちの世界のごく普通の人に“2つ目”を伝えるのは刺激が強いかと思われまして」

「そんなに不味いことなんですか?」

「……はい」


 女神様は気まずそうな表情で目をらした。


「だったら、1つ訊いていいですか?」

「なんでしょうか?」

「それは、俺が……いや、俺達が聞いて、どうにかなることですか?」


 女神様が口を開かない。


「正直に言います。無理です。貴方達じゃどうにもなりません」

「そうですか、正直にありがとうございます」


 それを聞いたケンヤがキレる。


「ちょっとちょっと! 僕を甘く見てるんじゃないの? ふざけるなよ!!」


 叫ぶケンヤに対し、神ゴッドがキレる。


「お゛い゛! うっせえんだよ! ボケが!! お゛い゛!!」


「ふざけるなよ!! 神ゴッドとか、名前からして痛々しすぎるんだよ!!」


 どちらもうるさい。


 ミーナは「まぁまぁ」と、言い争いを止めようとする。


 女神様とアルカは少し場所を移した。


「ごめんなさいね。馬鹿弟子がうるさくて」

「いや、大丈夫です。それより、ケンヤさんでもどうにもならないっていうのはちょっと意外です。ケンヤさんの会社、ブレイドアロー社の技術力はかなりのものですよ?」

「それでも無理です。おそらく、漆歴の全員が力を合わせてもどうにもならないでしょう。正直、今の所、運ゲーって奴です」

「漆歴……つまり、俺達の世界の皆が集まっても無理か……そうか」

「本当に心苦しいです。私も最善を尽くしてはいます。もう少し……もう少し時間があれば解決するんです」

「時間?」

「はい。ともかく、貴方達にできることは、現時点では何もありません。それでも……それでも聞きたいですか? “2つ目”を」


 アルカは考える。


 そして。


「やめておきます。話だけ聞いていると、聞かない方が幸せなままでいられそうな気がするんです」


 女神様はニコリと笑う。


「分かりました」


「否定しないんですか?」


「はい。それが正しいか正しくないか。そんなもの、私にも分かりません」


 女神様はアルカにお辞儀をする。


「おそらく、もう会わないかもしれません。礼を言わせてください。ミーナのお友達になってくれて、ありがとうございました」


(ありがとうございました……か)


 アルカは女神様に言う。


「いえ、ミーナさんは錬金術師として、かなりの活躍をしてくれました。そして、なにより俺のクランには必要な存在です。これからも、共に楽しいゲームプレイは続けます」


「安心しました。ミーナはこちらの世界でも変わらずなんですね」


「はい。元気でいいです。では」


 アルカは砂漠の喫茶へ戻るドアへと手をかける。


「ミーナ、ケンヤさん。俺には“2つ目”を聞く勇気がない。だから、一足先に戻らせて貰うよ」


 そのまま、砂漠の喫茶へと帰還した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ