271.ゲーム会社を見学する
そして次の日。
「よしっ! これで準備完了!」
制服姿のポニーテールの女の子が、カバンに入っている物を確認している。
「じゃ、行ってきます!」
この小学生みたいな元気っ娘は、双葉七我流。
極のリアルの姿である。
今は駅へと向かっている。
駅でクローのリアルである、槍崎黒亜と待ち合わせをしているからである。
「クロアちゃんはまだ来てないみたいだね」
予定より少々早かった為、まだ来ていないようだ。
「ナガレー!」
サイドテールの女の子がナガレの方へと、手を振りながら走って来る。
それに対し、ナガレも手を振る。
「クロアちゃん、おはよう!」
「おはよう! 早いわね!」
「うん! ちょっと楽しみ過ぎて早く来ちゃった!」
クロアもナガレと同じく、小学生みたいな外見をしているので、小学生同士の遠足に見えなくもない。
「クロアちゃん、その格好……!」
「ああ、私服でもいいって言われたから私服で来たわよ! ナガレは制服なのね!」
服装に関しては特に指定が無かったが、ナガレは無難に制服だ。
対して、クロアは私服だ。
「制服か悩んだけど、やっぱり、私のおしゃれっぷりを見せ付けないと失礼かと思ったのよ」
クロアの今の服装はこうだ。
まず、普段はゴムのみでサイドテールを作っているのだが、今回はそこにギャルゲーのキャラクターがするような黒のデカイリボンを巻き付けている。
首にはトゲトゲが付いたチョーカーを身に着けており、白のドクロプリントシャツの上に、黒のロングコートを羽織っている。
スカートは濃い青のミニスカートで決めており、黒のニーソックスを身に着けている。
そして、手には少年漫画のキャラクターが付けている指輪が付けられている。
ガチャガチャで入手したようだ。
「凄いね! かっこいいよ!」
ナガレはクロアを褒めた後、「参った!」とでも言いたげな表情を浮かべる。
そんな彼女を見たクロアは勝ち誇った表情をした。
(やっぱり、クロアちゃんはおしゃれさんだなぁ。私じゃ全然敵わないや……)
ナガレは普段、動きやすい服装を好んで着ている為、おしゃれに疎い。
その為、クロアのおしゃれっぷりに謎の敗北感を感じていた。
「そろそろ電車が来るわよ」
「あっ! そうだった!」
ナガレ達は電車に乗り込むと、席に座る。
「座れて良かったね」
「そうね!」
ナガレは携帯ゲーム機をプレイし、時間を潰す。
「んあ~」
クロアは眠かったようで、ナガレの肩を枕代わりにして寝ていた。
30分程すると、目的の駅のその前の駅へと到着した。
「次の駅だよ、クロアちゃん」
ナガレは気持ちよさそうに寝ているクロアを見る。
「クロアちゃん、起きて! 次の駅だよ」
「ぬっ……ふふぁー!」
ナガレがそう言うと、クロアは急に体をビクッとさせ、目を見開いた。
その後、身体の力が抜けたようで、ぐったりとする。
「だ、大丈夫?」
「あ、うん。……大丈夫よ!」
「それなら良かった。怖い夢でも見てた?」
「だったらなによ!」
どうやら図星だったようだ。
「いや、深い意味は無いんだけど、気になっちゃって。というか、もう少しで次の駅だしそろそろ降りる準備しよっ?」
少し経つと、次の駅へと到着した。
目的の駅で降り、ゲーム会社【ブリリアントサイバー】へと向かう。
こちらの会社は都内にある為、その後も電車を数本乗り継ぎ、ついに目的地へと辿り着く。
「ここがブリリアントサイバーのオフィスね!」
かなり大きなビルだ。
このビル全てがブリリアントサイバーの本社オフィスだ。
2人はビルへと入ると、受け付けの社員に訊ねる。
そして挨拶をした後、招待状を見せる。
「双葉さんと槍崎さんですね。本日は宜しくお願い致します」
「こちらこそ宜しくお願いします!」
互いにお辞儀をすると、1人の女性がやって来る。
「こんにちは。今回は私が案内を努めさせていただきます」
どうやら、この人が会社見学の案内を担当してくれるらしい。
向こうが自己紹介をしてきたので、ナガレ達も自己紹介をした。
「双葉さんに、槍崎さんですね。短い間ですが、改めて宜しくお願い致します」
そして、会社見学が始まった。
「まず、ゲームソフトを開発している所をお見せしようと思います」
連れて行かれたのはパソコンが沢山並ぶ部屋。
社員達がなにかを入力している。
中には3Dモデルを表示させているパソコンを操作している者もいる。
「結構地味ね」
クロアが正直な感想を口にした。
独り言のつもりでボソッと言ったのだが、聴こえていたようで、案内役の女性が答える。
「そうですね。ですが、このようなことを常に行っている訳ではありませんよ」
「えっ!? あ、すみません……」
「いえ、正直な意見は大事です。ただ私が言いたいのはツラくて地味なこともありますが、それが全てではないと言うことです。特に会議の時なんかは、皆凄く楽しそうに意見を出し合っています」
それ程、社員達がゲーム好きということであろう。
勿論、そういう社員が全てではない。
むしろ、仕事をやっていく中でゲームが嫌いになった者もいるが、それは言わなかった。
そして、他にも色々と案内され、あっと言う間にお昼休憩の時間となった。




