28.生徒会長
ポチを倒した事により、二人のレベルが上昇する。
ポチを出現させる為に倒したファイアリザードにより、元々レベルは上昇していたが、大量の獲得経験値により、レベルの上昇率は比べ物にならなかった。
「おお! 一気にレベルが上がったぞ」
アルカのレベルは、結果的にレベル【21】にまで上昇した。
「私は【26】レベルになりました!」
「俺より高いな」
「元々のレベルが高かったのと、アバター毎の必要経験値の差だと思いますよ。それにレベルは私の方が上ですが、ステータス面ではアルカさんの方が数値が高い物が多いです」
アルカは非常に強力なアバターを有している。
その為、必要な経験値が多いのだ。
「そうなのか! 何か悪いな」
「いや、悪くないですけど。それに戦い方も違うので明確な差別化も出来ていますしね」
「確かにそうだな。さて、とりあえずセカンドタウンに戻るか?」
「ですね。それに、ネームドボスを討伐した事を冒険者ギルドに報告しに行きましょう」
GWOでは、ネームドボスの討伐に成功した場合、ギルドに報告する事により、Gやアイテム等を貰う事が出来る。
キメラは、アルカに上記の事を説明した。
「そういう事なら行くか。レアなアイテムを貰えたら良いな」
キメラは、アルカの背に乗り、そのままテイクオフ。
セカンドタウンへと帰還した。
「ネームドボス討伐おめでとうございます!」
アルカは、ネームドボスである【ポチ】を討伐した事をギルドの受付に報告した。
その結果、スキルの書x2。100000Gx2を入手した。
「【スキルの書:爆炎】か……。確かこれを使えばスキルが取得出来るんだったよな」
「はい。私も同じものを入手しました」
キメラは【マジカルチェンジ】を使用すると、魔法少女形態となり、専用の装備とスキルで戦わなくてはならなくなる。だからと言って変身しない状態では、あまり強いとは言えない。
「スキルの書……最初は必要無いかと思いましたが、そうでも無いかもしれません」
「何かあったのか?」
「実は、職業【魔法使い】を【魔法少女】という職業に進化させる事が出来そうみたい何です。それにより、何かが変わるかもしれません」
「なるほど」
「アルカさんは、何の職業でしたっけ?」
「俺か? 俺は無職だ」
「む、無職ですか」
「1回決めると中々変更出来ないみたいだからな。今のままでも不便が無いし、ユニーク職業を見つけるまでは、無職でいるつもりにしたよ」
「なるほど、そういう考え方もありますね」
ちなみに【魔法少女】もユニーク職業の1つである。
二人は、ギルドの椅子に座り、無料で飲めるハチミツドリンクを堪能する。
ハチミツドリンクとは、ハチミツを100%使用した、ハチミツ以外入っていないドリンクである。
「「カンパーイ!!」」
二人はネームドボス討伐を祝い、木のグラスで乾杯した。
「今回も中々派手な戦いだったな」
「そうですね。それにしても100000Gを入手出来たのは大きいですね」
「そうだな。俺は、【マイホーム】の拡張に使おうかな」
「えっ?」
2か月後には、大事な大会があるというのに【マイホーム】の拡張に金銭を投資しようとするアルカに対し、キメラは驚いていた。そして、それと同時に申し訳無さも感じていた。
「?」
「いや、何かすいません」
「何がだ?」
「やりたい事があるのに、大会優勝してください何て無茶ぶりしちゃいまして」
「それに関しては全く問題無いぜ!」
「ありがとうございます。で、その大会に向けてですが、私、紹介したい人が居るんですが良いですか?」
大会に向けて、紹介したい人。
協力者だろうか?
「学校の友達か?」
「友達というか先輩ですね。簡単に言うと生徒会長です」
キメラがそう言うと、アルカが驚き、汗を流す。
「生徒会長だと!?」
アルカの中では、【スポコン物での生徒会長=敵】という式が勝手に出来上がっていたので、そこに驚いてしまったのだ。
「そんなに驚きますか……まぁ、特徴的な人ではありますが……」
「特徴的?」
「ええ、校内ではロボット好きで破天荒な人物として有名です」
「破天荒……?」
アルカの脳内には、極の姿が無意識に思い浮かんでいた。
「極みたいな感じか……?」
「極ちゃんとはちょっと違いますね。ですが、基本的には良い人なので、きっと力になってくれます! それに会長自身も力になりたいと言っていました」
キメラは、右手をギュッと握り、言った。
「そうか、確かに気になるし会ってみたいな。だけどこのゲームにその生徒会長の御眼鏡に敵うロボットは居るのか?」
「そこは心配要りません。GWOは自由度が高いです。職業【鍛冶師】になれば作成する事も可能みたいです。難しいみたいですが……」
「【鍛冶師】か……」
自分では使用し無くとも、これから先、パーティメンバーに強力な装備や武器を用意しなくてはならない時も来るだろう。その際に知り合いに鍛冶師が居れば、大きな力になる。
「頼もしいな。俺は明日の21時なら来れるけど、その時間で会えるか?」
「はい! では、伝えておきますね。待ち合わせは、第1層のはじまりの街の冒険者ギルドで良いですか?」
「大丈夫だ」
こうして、明日、キメラの学校の生徒会長と会う約束をしたアルカであった。




