表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

276/325

263.暗い話は、ほどほどに

 そして、時は流れ翌日。


「遅いですよ! マイナス3分遅刻ですぅ!」


 第1層はじまりの街の噴水広場で、ミサキが待っていた。

 そう、約束を果たす為に翌日ここに集合しようということになったのだ。


「マイナス3分って遅刻じゃないだろ」

「集合時間の10分前にはいないと駄目だと思いますぅ!」

「ゲームなのに真面目だな」


 元企業Vtuberということもあり、そういう所はしっかりしているらしい。


「で、どこでやるんだ?」

「闘技場でやりましょう! と、その前に」

「その前に?」

「遊びませんか? このゲームって戦闘以外にも色々楽しめるんですよねぇ」

「それは知ってるけど、なぜだ?」

「私アルカさんのこと、ほとんど知らないんですよねぇ」

「なぜ急に? !! もしや!! ……愛の告白ならお断りだぜ?」

「え?」


 真顔になるミサキ。

 ミサキは照れるアルカに対し、軽く引いた。

 なぜ、告白に結びつくのだろうか?


 その答えは簡単。

 アルカの恋愛の知識はアニメ、ゲームなどといった創作での知識しかない。

 その為、それを元に展開を予想した結果、告白されると考えたようだ。

 自惚うぬぼれすぎである。


「いやいや、普通にライバルのことは知りたいじゃないですか。それに、一応フレンド登録はしている訳ですし、友達でもある訳じゃないですか」

「そういうものか? ま、いいか」


 ということで、戦闘前に遊ぶことにしたようだ。


「なぜオセロ!?」

「ここのゲーセンのオセロは凄いですよぉ! 演出と効果音がまさにアニメみたいです!」


 GWO内にもゲームセンターがある。

 そこで行っているのは、【ハイパーオセロ】。

 ルールはオセロだが、演出や効果音が大変派手である。


「あっ! えっ!? 勝ちましたよぉ!」

「頭使うのは苦手なんだよ!」

「アルカさんの戦法は脳筋ですからねぇ。もう1回やります?」

「やる!」


 だが、再び負けてしまう。


「くっそ! 頭使うのは苦手なんだよ!」

「2回言うくらい苦手なんですねぇ? ふっふっふ、アルカさんの弱点、見つけちゃいましたよぉ!」

「それに、オセロやってると思い出しちまう」

「なにをですか?」

「オセロを通して、俺の弱点を見抜かれたことをだよ」

「以前も似たようなことあったんですねぇ」

「言っておくけど、今ミサキちゃんが見抜いた弱点とは別だからな?」

「そうなんですか!? アルカさんに更なる弱点が……!!」

「他にも弱点は沢山あるぞ」

「そうなんですかぁ!?」

「ああ。それはそうともう一回だ!」


 その後も何回かオセロを行ったが、1度も勝てなかった。


「いずれリベンジするからな!」

「何回でも返り討ちにしてあげますよ!」


 ミサキはドヤ顔で言った。

 今まで負けっぱなしだったアルカに、別な形であれ勝利することが叶ったからである。


「音痴ですねぇ!」

「昔動画サイトに投稿した時も言われた」


 その後、2人はカラオケに行き。


「なぜゲーム内で映画!?」

「ゲーム内のお金だけで大画面で見られるんですよ! お得じゃないですか!」

「上映作品が10年前のだけどな」


 映画館に行き。


 GWOの戦闘以外の遊びを堪能したのであった。


「いや~、楽しかったですねぇ!」


 アルカとミサキは砂漠の喫茶へと来ている。

 相変わらず客がいない。


「そうだな。なんかもうオセロで負けまくったし、勝負は明日でもいいか?」

「今日やりますぅ!」


 約束なので、破る訳にはいかない。


「そうだな。それにしても……前から気になってたことがあるんだが、1つ訊いていいか?」

「なんですか?」

「どうしてそこまで俺に勝つことにこだわる?」


 アルカの素直な疑問であった。

 ネット内で人気もある彼女がなぜ自分に拘るのか?


「俺なんて、このゲームで少し有名なくらいだ。ネット上の知名度なら、ミサキちゃんには勝てない」

「知名度はあんまり関係ないんですよねぇ。一言で言うなら、負けっぱなしは悔しいってことです。以前はこの気持ちに気が付かなかったんですけどねぇ。アルカさんのおかげで気付いちゃいましたからねぇ」

「俺のおかげだと!? 馬鹿な!? たかが1人のちっぽけな人間ごときが、他人に影響を与えたとでも言うのか!?」

「なんですかそのラスボスが言いそうな台詞セリフは」

「いやだって、ゲーム内ではこんな見た目でも、中身は普通の駄目人間だぜ? なにをどう影響されたんだ?」


 ミサキは優しく笑い、何かを思い出す。


「私が昔、エレ☆シスでどんなキャラだったか知ってます?」

「昔って言うと、俺と最初に会った時か。俺配信者に関しては全然知らなかったし、今もほとんど知らないからな。当然知らないぞ」

「そうですか。だったら、ちょっと聞いてくれますか?」

「えっ!? 暗い過去か!?」

「そこまで暗くはないです」

「少し暗いのか!?」

「その人によりますねぇ。ま、短めに話すんで、ここまで言わせたのなら、聞いてください」



 エレメンタル☆シスターズ……それはVtuberのグループの1つである。

 以前は、Vtuberとは呼ばれず、ヴァーチャル配信者と呼ばれていた。


『はわわ……』


 ・めっちゃ焦ってて草

 ・今日はどんな面白い負け方をするんだw

 ・相変わらず可愛いな、俺のミサキちゃん


 上記のようなコメントが流れていた。


 そう、以前のミサキはドジっ娘キャラであった。

 彼女はそれを望まれており、本人も嫌ではなかった。

 なぜならそうやって育ってきたからだ。

 ミサキはリアルでも見た目が良い。

 それもあり、失敗すれば様々な人物から救いの手が差し伸べられた。

 それの延長なだけである。


 ただ、GWOで開かれた【美少女コンテスト】……と言う名前の殺伐とした大会で、変化の時は訪れた。


(いつもいつも……何事にも負けてばかり……それでもいいと思っていた……ただ……ファーストステージで味わった勝利の味……圧倒的、強者の味……もっと味わいたい!)


 アルカに負けそうになった際、そのイベントでの勝利の味を思い出し、自分の本当の気持ちに気が付いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ