261.オレンジにレモンにストロベリー
「ぐがぁっ!?」
試合がスタートした後、エクレアが得意のレーザー武器で一方的にかき氷を攻撃していた。
ハンマー二刀流を使用するかき氷は、比較的身軽なエクレアと相性が悪すぎたようだ。
「さぁ、終わりだよ。【レーザービット】」
かき氷の周囲に小さな人工衛星のような機械が10個出現し、集中的にかき氷へ向け、連続してレーザー攻撃を浴びせた。
その後、エクレアがレーザー剣をペン回しのように手の平でクルクル回すと、かき氷を突き刺し、斬る。
先程までの一方的な攻撃と合わさり、かき氷のHPを0へと導いたのであった。
「勝ったよ」
エクレアはアルカ達の元へ戻ると、勝利を報告する。
「いつも野蛮だって言ってるけど、エクレアも中々だな」
「そうかな?」
実に一方的な試合であった。
その後、極も3人目の対戦相手であるレモンと試合を行うが、難なく勝利してしまう。
後1回勝てば、アルカ側のチームの勝利だ。
「これ、次勝ったら終わっちまうな」
「終わっていいんですよ! これに勝てば、【スペシャルおみくじ】が手に入るんですからねぇ!」
そう、元々今回のイベントに参加した理由は、ミサキの引いた大凶のおみくじの結果を書き換えるという目的の為だ。
なので、ミサキの言うことは正しい。
「そうか……。そうだよな! 悪いな、なんか名残惜しくて」
「アルカさんは変わってますねぇ! そんなに参加したいのなら、来年も参加すればいいですよぉ!」
「それもそうだけど……来年の今も、皆が同じ気持ちでゲームをしていられるかどうか、不安になってな」
「どういうことですか?」
(皆が……成長してしまわないか、不安なんだ)
アルカは不安であった。
皆が成長してしまえばGWOが、もう1つの現実からただのゲームへと変わってしまう。
【ただの暇潰しの1つとしてゲームをするようになる】それを恐れているのだ。
いつまでも皆に子供のままでいて欲しい、それがアルカの願いでもあった。
「まぁ、そう上手くはいかないか」
「え? もしかして、アルカさん引退しちゃうんですかぁ!? そんなに怖いんですか? 私に負けるのが!」
「ははっ、怖くはないぜ! 何度でも受けて立つぜ! とその前に……」
アルカは既に4試合目の準備が完了し、フィールドに立っているプレイヤーを見る。
すると、「早くしてね」とでも言いたげな視線を返して来た。
「とりあえず今は、後1回勝たなきゃな」
「そうですねぇ! ここはリーダーの私が行きますか!」
「いや、ここは俺に行かせてくれないか?」
「!? 意外ですねぇ!」
ミサキは驚いた。
こういう場合、アルカは譲るだろうと考えていた。
だが、俺に行かせてくれと言うのだ。
「なんでまた?」
「ここでミサキが勝ったら俺の出番がなくなるだろ? 折角のイベントだから暴れてみたくてな」
「でも、アルカさんが勝ったら私の出番がなくなりますよぉ!?」
「そうだな。だったら、この戦いが終わったら、俺と戦うってのはどうだ?」
「!! それはいい考えですねぇ!!」
ミサキは目を輝かせ、うんうんと頷いた。
「待たせましたね」
アルカは対戦相手の目の前に行き、言った。
「遅すぎっしょ! つーかやばっ! なにそのアバター」
ピンク色の髪をしたギャルっぽい喋り方のプレイヤーはアルカを珍しそうに見る。
そして、スクショした。
連続でだ。
「俺のあったかもしれない可能性の1つの姿だぜ!」
相手の態度が軽い感じだったので、アルカも敬語を辞め、タメ口で対応した。
「あったかもしれない姿って、厨二すぎっしょ! あーしの名前は【ストロベリー】、一応チームの中で一番強い」
「俺はアルカ。それにしても、ストロベリーちゃんのチームは、食べ物の名前で統一されてるんだな」
最初の相手がオレンジ。
次がかき氷。
その次がレモン。
そして、今アルカの目の前にいるのがストロベリーだ。
かき氷だけ果物じゃない。
「あーしら、基本4人グループでさぁ! 後ろに控えてるのもグレープって名前なんだわ」
「ということは、かき氷さんは?」
「今日会ったばかりっしょ!」
「だから1人だけ果物じゃないんだな!」
アルカは納得がいったようであった。
「てか、早くやらね?」
ストロベリーはアルカに向けて言った。
「ああ、やろうぜ。と、その前に1つ訊いていいか?」
「なんなん?」
「なんでこのイベントに参加したんだ?」
「思い出作りっしょ。そっちも同じ感じっぽいじゃん?」
「まぁな! だが、それだけじゃない。俺の大切な仲間が大凶を引いちまってな、どうしてもスペシャルおみくじを手に入れるしかなくなっちまったんだ」
「逆にラッキーっしょ! SNSでチョーバズリマックスできるじゃん!」
「ははっ、かもな! けど、本人は本気で悩んでるからな! この戦い、勝たせて貰うぜ!」
「熱いねぇ」
アルカは白い剣を構える。
アルカの体に合った大きさだ。
「へぇ! 剣を使う龍とか珍しいじゃん!」
「そうか?」
「龍と言ったら口から火っしょ!」
「そういうスキルもあるけどな」
「へぇ! 興奮するじゃん! じゃ、あーしも!!」
ストロベリーは腰の刀を抜いた。
「おお! 刀か!」
「そっ!」
「俺の友達も刀使ってるからな! いいよな、刀!」
「いいっしょ! けど、あーしの刀は普通じゃないっしょ!!」
「どういうことだ!?」




