259.無双タイム
アルカ達は複数のプレイヤーと交戦を続ける。
「合体するぞ」
「合体!?」
「あれだあれ、私を装備しろ」
「そういうことか!」
アルカはスキル【コンファイン】を発動させる。
アルカの腹部から鋼の爪が生え、それでフレイムをキャッチ、そして腹部へと収納される。
「無双タイムだ!」
【コンファイン】は、装備したプレイヤーのスキルを発動することもできる。
アルカは【すり抜け】と【ゴッドオーラ】を発動させる。
そして、低空飛行をし、フィールド内を駆け巡る。
「食らえっ!」
持っている剣で、すり違いざまにプレイヤーを斬り付ける。
ただでさえ強いアルカの攻撃力が【ゴッドオーラ】の効果で100倍となっているのだ、オーバーキルと言えよう。
「くそおおおおおおおおおおおおお!!」
他のプレイヤーはアルカを攻撃するが、【すり抜け】の効果ですり抜ける。
1人だけ違うゲームをしているかのようだ。
そして、しばらく無双を続けると、アナウンスが鳴り響く。
『そろそろ1時間となります』
実はこのサバイバル、制限時間があった。
もし、1時間経過し、2チームが残らなかった場合、倒した敵が多いパーティ上位2チーム以外脱落することとなる。
参加人数も多く、かなりの長期戦になってしまうので、仕方のない処置なのかもしれない。
「そういえば、1時間で勝負は決まるんだったな」
こうして、最後までアルカ&フレイムの協力プレイのような何かは続いた。
『はい! そこまでです!』
そして、制限時間となった。
かなりのプレイヤーを倒せたので、おそらく生き残れるだろう。
『上位2チームは今から特殊エリアへ転送します。それ以外のプレイヤーの皆様は、残念ですが脱落となります』
「特殊エリアに転送されたら合格って訳か」
アルカは装備していたフレイムを解放する。
「そうだな、まぁ大丈夫だろう、あれだけ倒せば」
フレイムは余裕そうに言った。
「俺も使ってみて思ったけど、あのスキル達はやばいな。封印して正解だ」
「まぁ、今回のイベントで使うのは最後にするよ。世界の命運が掛かっている勝負とかなら別だけど」
「ってことは事実上、今回のイベントで最後ってことだな」
「そういうことになる。本当に強すぎるからな」
フレイム自身もこれはちょっとズルいのではないか? と思っているようだ。
だが、かわいい元妹の為ならば仕方がないとも思っている。
「いやぁ、随分と派手にやりましたね!」
ミサキが駆け寄って来た。
続けて、極、エクレアが来る。
「野蛮だね。でも、こういうのは嫌いじゃないよ」
エクレアはタバコ型のチョコレートを口にくわえながら言った。
「エクレア!?」
アルカの視界からエクレアが消えた。
そして、他のメンバーも次々と消えていく。
最後にアルカも消える。
脱落したかのように見えたが、違ったようだ。
「ここは……?」
かなり巨大なスタジアムにアルカ達はいた。
どうやら、上位2チームに入れたようだ。
「消えたのは別なエリアに転送されていたからか……。なんにせよ、無事に勝ち残れて良かったぜ」
今この場にいるのは、10人のプレイヤーのみだ。
アルカ、極、ミサキ、フレイム、エクレア。
そして、対戦相手の5名だ。
「あのプレイヤー達が対戦相手という訳でござるな!」
そう、互いのチームを1人ずつ選出しあい、1対1の試合を行うのだ。
『では、すぐに第1試合を行いますので、最初に戦うプレイヤーを決めてください』
運営のアナウンスが鳴り響く。
「誰が行く?」
アルカがたずねると、フレイムが言う。
「私が行こう。皆、いいか?」
「おお! いきなりフレイムさんの活躍を見られるんですねぇ! 勿論いいですよ!」
ミサキは嬉しそうに言った。
他の皆も賛成のようだ。
「じゃあ、フレイムちゃん、頼んだぜ! ま、心配いらないと思うけどな」
「ああ、相手には悪いが全力を出させて貰う」
フレイムはスタジアムに残り、それ以外のプレイヤーは観客席に座る。
「私の名前はフレイム、宜しく頼む」
対戦相手にフレイムは名乗った。
「うぅぅぅぅぅぅぅ……感激っす! 私、【オレンジ】と言います!」
「オレンジさんか」
「そうっす! 私、フレイムさんの大ファンなんすよ! もう大ファン過ぎて、フレイムさんが出てる配信は全て見てます! アーカイブも何周したか分からないっす!! あっ! そういえば、何回かウルトラチャットを送ったんすけど、覚えてるっすか?」
フレイムは「ふっ」と笑う。
「勿論だ。いつも配信を見てくれてありがとう」
「フレイムさんにお礼言われたっす! しかも生で! いや、VRっすけど、Vtuberってアバターが本体的な所あるっすから、生って言っても過言じゃないっすよね!?」
「そこまで喜んでくれるのは嬉しいが、そろそろ試合を開始したい」
「あっ、ごめんなさいっす! 緊張するっす!」
そんな2人のやり取りを、アルカ達が観客席から眺める。
「Vtuberってあんな熱心なファンがいるんだな」
アルカはポップコーンをむしゃむしゃと食べる。
「特にフレイムさんはかっこいいですからねぇ! 男性、女性関係無しに好かれてますからファンも多いんですよ! エレ☆シスの中で一番ファンが多いと思いますよぉ! それにしても、あの対戦相手、自分の大好きな配信者に負けるとかツイてますねぇ!」
ミサキはケラケラ笑いながら、メロンソーダ入りの容器をストローでチュウチュウと吸うのであった。




