258.弱体化してない
『皆さん、あけましておめでとうございます!』
時間となったので、運営からのアナウンスが流れる。
『今回は【スペシャルおみくじ争奪戦】にご参加いただき、ありがとうございます!』
軽い挨拶を行うと、次にルール説明が行われた。
そして、予定通りにサバイバルエリアへと転送される流れとなった。
イベント参加者が次々とサバイバルエリアへと転送されていく。
「このエリア……使い回しですかぁ」
転送先の森のフィールドを見て、ミサキが呟いた。
「森は身を隠しやすく、サバイバルには適しているフィールドだからな。とは言っても、私達の中で身を隠す必要のある者はいなさそうだが」
フレイムがメンバーを見渡して言った。
確かに、ここにいるメンバーであれば、積極的に攻めるのもいいかもしれない。
「派手にやるか」
アルカは考えていた。
隙が大きく、使い所があまりないスキル、【ダークマター】。
闇の試練の際と似た状況の今であれば、使っても良さそうだ。
「なにをする気だ?」
「多くのプレイヤーを一気に倒す」
「そういうスキルがあるのだな?」
「ああ、だがこの攻撃は、パーティメンバーにもヒットする仕様みたいだ。今から言う範囲には行かないで欲しい」
「分かった」
フレイムは頷くと、アルカの言う範囲外へとチームメンバーを連れて行く。
アルカは飛翔する。
「気付かれない内にやるか」
空にポツンといると、目立つ。
アルカは右腕を上にあげ、【ダークマター】のエネルギーをチャージする。
だが、その途中で妨害が入る。
「くっ、これじゃチャージできないっ!」
攻撃を避けながらだと、チャージができない。
名前はかっこいいが、致命的な弱点を持つスキルだ。
そんなアルカに対し、地上にいるフレイムが叫ぶ。
「私が阻止する!」
「フレイムちゃん!?」
フレイムが遠距離攻撃を放つプレイヤーを次々と斬っていく。
全て一撃必殺だ。
それもそのはず、パーティ対抗トーナメントの際に運営から授かったスキル、【ゴッドオーラ】の効果でフレイムの攻撃力は100倍となっている。
効果は1分間持続する。
人気Vtuberなだけあり、かなりのサポートだったと言える。
「そんな所にいたら、俺の攻撃の巻き添えを食らうぞ!」
「大丈夫! 君も知っているだろう? 私には運営から授かったもう1つのスキルがあることを!」
「もう1つ……? あっ! そうか!」
アルカはチャージを再び開始。
妨害されるが、フレイムが攻撃を撃ち落とし、攻撃主を斬っていく。
そして。
「チャージ完了! 【ダークマター】!!」
アルカは右腕を振り下ろす。
紫色のエネルギー弾が分裂し、地上へと降り注いだ。
当たった個所でそれらは拡大し、ヒットした個所を消滅させていく。
プレイヤーに当たると物凄い数で多段ヒットし、HPを削り取っていった。
かなりの範囲を攻撃した為、かなり多くのプレイヤーが脱落した。
「初めて見たが、凄い攻撃だな」
アルカが地面に降りると、フレイムが言った。
フレイムは【ダークマター】の攻撃範囲に入っていたはずだが、無傷であった。
「便利なスキルだよ、【すり抜け】は」
1分間、あらゆる攻撃、スキルを文字通りすり抜けるスキル、【すり抜け】。
これが運営から授かった2つ目のスキルだ。
おまけに2つとも消費MPは10という、公式チートスキルとでも言えるスキルであった。
「ここまで森をボロボロにするだなんて、野蛮だね」
エクレアが来た。
他にも、避難していた仲間達が集まる。
「おいおい、随分派手にやってくれたな」
だが、集まったのは仲間だけではなかった。
あれだけ派手に暴れたので、多くのプレイヤーがやって来てアルカ達を囲う。
アルカ達は背中合わせになり、敵プレイヤー達と向き合う。
「皆の者、いくでござるよ!」
「ああ、暴れるぞ」
皆が戦闘態勢に入る。
「【すり抜け】、【ゴッドオーラ】」
フレイムは走り出す。
多くのプレイヤーが先に動いたフレイムを集中攻撃するが、全てすり抜けてしまう。
「有名Vtuberだかなんだか知らねーがチート使いやがって!」
「これはチートではない。立派なスキルだ」
フレイムはプレイヤーを次々と斬り付け、一撃で消していく。
「敵の時はやばかったけど、仲間になると心強いぜ」
フレイムの活躍を見てアルカが言った。
「私達も続きますよぉ! 【ハイドロレーザー】!!」
ミサキの右手から水のレーザーが発射される。
「相変わらずそのスキル好きだな」
「気に入っています! ぶっちゃけ鎌よりもこのスキル主体で戦っています! 鎌使いにくいです!」
「杖でも装備したら?」
「鎌の方がかっこいいです!」
そう言うと、次は鎌を振り回し、次々と攻撃を仕掛ける。
「アルカさんは素手ですかぁ!?」
「普段はな。が、俺は新たな力を手に入れた。それがこの剣だ」
そう言うと、アルカの口の中から剣が生えてきた。
その剣を抜き取り、構える。
「なんですか……それは……」
アルカが持っても違和感がないくらい大きな剣である。
全身真っ白な剣だ。
この剣は以前、農具などを合成して作った剣だが、その後体内に入り込み、出て来なくなった。
だが、レベルを上げたら使えるようになった。
「はあああああああああああ!!」
アルカは広範囲を薙ぎ払う。
アルカの攻撃力の高さも合わさり、防御力の低い敵は一撃で倒される。
「強いですねぇ! 口から出た剣!」




