254.大凶を引いたプレイヤー
「ま、そんなことはどうでもいいだろ」
「よくありません! アルカさんに恋人ができたら全力でからかいたいので!」
ジルコがジト目でミサキを見る。
「引きますわ~。ミサキさんは中学生男子ですの?」
「違いますぅ! ピッチピチの女子高生です!」
微妙に話が噛み合ってない。
「仲がいいんだな」
「「はい!」」
「す、素直だ!」
同じクランということもあり、非常に仲が良さそうだ。
おまけに共通のライバルがいるという点も、仲の良さに歯車をかけているのかもしれない。
そして、その後も3人で会話をし、時間を潰した。
「お、そろそろ順番だぞ!」
いよいよアルカ達の番だ。
順番的には、アルカ、ジルコ、ミサキの順番だ。
「いくぜ!」
GWOのおみくじの引き方は本来のおみくじの引き方と少し違う。
デパートのくじ引きなどに使われているようなドーム型のエアー抽選機を使用する。
ドームに手を突っ込むアレである。
アルカはドームに手を突っ込んだ。
中に舞う大量のおみくじの中から1つを握りしめる。
「よしっ! 取った!」
ドームから手を引っこ抜き、おみくじを広げる。
結果は……。
「小吉だ!」
「反応に困りますわ」
横にいたジルコが思わず口を開いた。
中途半端過ぎてネタにしづらい。
書いてあった内容はこうだ。
【今年、貴方は大変なピンチに陥るでしょう。ですが、それを乗り越えることができれば、そのピンチは人生の宝へと姿を変えることでしょう。ラッキーアイテムはキャンディ】
「おお! いいな!」
「いいんですの!?」
「ああ。人生の宝になるって書いてあるからな。それにまぁ、当たるかどうかも分からないからな」
「それを言ってはおしまいですわ」
次はジルコの番だ。
「大吉を引きますわよ!」
「頑張れ!」
アルカは邪魔にならないように、横に立ち応援した。
結果は……。
「吉ですわ! 大吉でないのは残念ですけど、中々ですわ!」
肝心の内容はこうだ。
【美味しい物を一杯食べられるでしょう。ラッキーアイテムはイチゴパフェだ!】
「なんですのこの内容!?」
「ジルコちゃん、イチゴパフェは嫌いか?」
「そういう問題じゃありませんわ! 適当過ぎじゃありませんこと!?」
「でも、美味しい物食べられるならいいんじゃないか?」
「それもそうですわね!」
パァっと嬉しそうな表情で手を合わせるジルコ。
切り替えが早い。
「最後は私ですねっ!」
最後はミサキだ。
一体どんな結果になるのだろうか?
「うおおおおおおおおおおおお! 来ましたぁ!!」
ミサキが勢いよくドームから手を抜く。
「ふっふっふ!」
そして、そのままおみくじを広げる。
そこには、大凶と書かれていた。
「だ、大凶!? この私が大凶!?」
だが、それだけでは終わらなかった。
書かれていた内容を見て、ミサキはかたまる。
【何事も上手くいかない。下手すりゃ死ぬ。ラッキーアイテムは死神】
「!!」
横からそれを覗いたアルカとジルコもつい、ビビってしまった。
「だ、大凶だったのか!? す、すげぇ! 大凶とか初めて見たぜ!」
「ワタクシもですわ……」
ミサキは、無理矢理笑いながら言う。
「おみくじなんて、当たりませんから♪」
現実逃避をしているかのようにも見える。
おみくじを引き終えた3人は【砂漠の喫茶】で集まる。
客が誰もいない。
「俺のクランメンバーが建てた店だ。ここならゆっくり話せる」
「こんな砂漠に喫茶店がありましたのね」
ジルコはちょっとボロいと感じたが、口には出さなかった。
おまけに砂嵐で外の景色はあまりいいものではない。
「アルカさん! 来てくれたんですね! あっ、お友達もですね! はじめまして!」
「まぁ! かわいいNPCですこと! はじめまして、ジルコですわ。こっちの落ち込んでるのがミサキさんですわ!」
ミサキは下を向いている。
そんなミサキをジルコは励ます。
「大丈夫ですわ! ミサキさん自分で言ってたじゃありませんか! おみくじなんか当たらないって!」
「……あれは強がりです」
「まぁ! アルカさんも言ってましたけど、素直ですわね!」
裏表がない所も今のミサキのいい点なのかもしれない。
「1つ訊いていいか?」
アルカがミサキに訊く。
「どうしてそこまで落ち込んでるんだ? いつものミサキならむしろ、『私を陥れるだなんて、命知らずなおみくじですねぇ!』とか言いそうな気もするんだが」
「聞いたことありませんか? GWOのおみくじの都市伝説を……」
「都市伝説?」
「ええ、当時、私のリスナーさんから聞いたのですが……」
去年、ミサキが配信をしていた際に、リスナーから聞いた都市伝説がある。
(ちなみにその時はまだ、ミサキはGWOをやっていない)
とあるプレイヤーがGWOで大凶を引いたようだ。
すると、悪いことばかり起こるようになったという。
おまけにそれだけではない。
夢の中で、2年間ほど地獄のような空間を彷徨ったとも。
「ちなみに、現実世界では一瞬の出来事だったらしいです」
「でも夢だったんだろ? そんなリアルな夢を見ることなんて…………う~ん? 多分あんまりないと思う、それにその情報が嘘の可能性もある。そもそも都市伝説だ。情報が正しいことは多分あんまりないと思う」
「嘘ですか……確かにその可能性は高いですけど……それでも怖いんですよぉ!」
ミサキが涙目になりそうだ。
そんなミサキを見て、ジルコがドヤ顔で言う。
「でしたら……結果を変えませんこと?」
「結果を変える?」
アルカは首を傾げる。
「その通り、おみくじの結果を変えるのですわ!」




